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今日の俺は一味違う、だから、どんなお願いをされたって
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残りのケーキは、明日のお茶菓子用にすることにした。
別に、そこまで厳重に保存しなくてもいいのに。バアルさんは「貴方様からの、大事な贈り物ですから……」と透明な袋に綺麗にラッピングしただけでなく、特殊な術もかけてくれたらしい。
コルテが、スケッチブックに詳しく書いて教えてくれたんだけど。魔術初心者の俺には、どんな品物でもその状態を保ったまま、長期保存出来る……なんかスゴイ術ってことしか、分からなかったんだ。
ちなみに、俺達がケーキを食べている間に、サタン様とヨミ様がバアルさんのお祝いに訪れてくれていたらしい。
ドアの隙間に、いつの間にかバースデーカードが挟まっていたんだ。
バアルさんがカードを開いた瞬間、ペアのグラスが仲良く収まった箱とおしゃれな紅茶の缶が3つ並んだ箱が現れたのには、びっくりしたな。
お二方からのカードに何が書いてあったのか俺は知らない。だけど、微笑んで大事そうにカードをしまっていたバアルさんを見て、俺も嬉しくなったんだ。
「あの、バアルさん……他に、何か俺に出来ることってありますか? その……俺にして欲しいこと、とか……」
今まで知らなかったが、俺は随分と欲深い人間らしい。
軽々と俺を膝の上に乗せてくれている彼は、どこか上機嫌に触覚を揺らし、羽をはためかせているのに。まだ彼を喜ばせたい、嬉しそうに輝く笑顔が見たい、という独りよがりのワガママが、むくむくと湧き上がってくるんだから。
「貴方様にして欲しいこと、でございますか……ふふ、そのように素敵なお誘いまでして頂いて宜しいのでしょうか? 今日はすでに、貴方様の心のこもった素晴らしい贈り物を賜っておりますのに……」
心の底から嬉しそうに微笑みかけてくれる彼に、胸の奥がきゅっと締めつけられる。
この笑顔の為なら、なんだって出来るし、やってみせるって……そう、強く思えるんだ。
「……いいですよ。というか……あげたいんです、俺が。バアルさんにあげられるものなら何でも……」
「アオイ様……そのようにお可愛らしいことを仰って頂けるということは……お覚悟をなされていらっしゃる……ということで宜しいのでしょうか?」
ぱちぱちと瞬いていた緑の瞳に、あの妖しい光が、背筋がぞくぞくする光が宿る。
でも、今日の俺は一味違う。いつもだったら、このタイミングでやって来るヘタレな俺が、積極的な俺と肩を組んで、何でも来いっとすでに覚悟を決めているからだ。
「は、はい……どんとこいっです」
「では、まず、お先に宣言させて頂きます……貴方様のお誕生日には、お返しとして、私の全てをかけてお望みを叶えましょう。受け取って頂けますね?」
ぎゅっと握った俺の手を、握り返してくれた彼からの、思いもよらない嬉しすぎる先制パンチに腰が抜けそうになる。
引き締まった腕に支えられ、抱き寄せられて、ますます密着してしまったからだ。緩みきった口から、ふにゃふにゃした情けのない声を出してしまっていた。
「ふぇ……はぃ……喜んで、いただきます……」
「ありがとうございます。それから……貴方様にして欲しいこと、でございますが……」
間近に迫った薄い唇に浮かぶ、艷やかな笑みに思わず息を呑む。
俺としてはもう、彼のものになった気でいたんだ。けどさ……心だけじゃなくて、俺のこと……全部もらってくれるのかな? って期待と不安で勝手に身体が震えていたんだ。
「……呼び捨てで、呼んでいただけますか? 私めのことを」
「……へ?」
だからさ、つい間抜けな声が出ちゃってたんだよな。確かに前、心の準備が出来てないからって断ってしまっていたけど……このタイミングでお願いされるとは、思ってもみなかったからさ。
「先程の貴方様とコルテのやり取りが、大変羨ましく存じまして……今日だけで構いませんので……駄目、でしょうか?」
「い、いえ、全然大丈夫ですよっ」
残念な気持ちはあるものの、心の何処かでホッとしてしまっている、意気地無しな俺にうんざりする。
でも今は、一人勝手に落ち込んでいる場合じゃない。瞳に寂しそうな光を宿している、彼のお願いを叶えなければ。
そうして気持ちを切り替え、力強く頷いた俺を待っていたのは、思いもよらない高さのハードルだった。
「では、よろしくお願い致します」
「……はい」
期待に輝く瞳に見つめられながら、彼の名前を呼ぼうとする。いつもみたいにさん付けじゃなくて、そのままで。
「……ば…………ば……」
たった3文字だ。たった3文字なのに……なんでこんなに喉が震えてしまうんだろう。
なんで、こんなに鼓動が激しくバクバクと脈打ってしまうんだろう。顔が、全身が、熱くなってしまうんだろう。
ゆっくりでいいですからね、と彼が微笑む。あやすように背中を撫でてくれる手の温もりに、ホッと心が緩んだ瞬間、勢いに任せて俺は口を開いた。
「ば、バアル……す、好き…………だよ」
「……もう一回、宜しいでしょうか?」
「え? あ……ぅ…………好き、だよ……バアル……」
「…………もう一回」
「う…………バアル、大好き……」
せわしなく羽をはためかせ、宝石のような瞳を煌めかせる彼に何度も強請られる。嬉しいやら恥ずかしいやらで、頭がくらくらしてしまう。ちょっとだけ泣いてしまいそうだ。
おまけに細く長い指に顎を持ち上げられ、固定されてしまっているせいで、熱い眼差しから逃げられないしさ。
さすがに、もう限界だと。すでに俺のせいでシワが寄ってしまっている、上等な黒いスーツのジャケットの裾を、いつものように摘んで引っ張ろうとしていた時だった。
「ありがとうございます、アオイ……私も愛しております」
蕩けるような微笑みと一緒に甘い響きを含んだ声で、俺の心を一発で歓喜に震わせる言葉を囁いてくれたのは。
やっぱり彼は、俺を喜ばせる天才だと思う。あとズルい。勿論、良い意味で。
彼への贈り物だったハズなのに。供給過多のお返しをもらってしまった俺は、なんとか最後の気力を振り絞って「俺も……」と返せた。
返せたんだが。花が咲いたような笑みを浮かべた彼にキスまでしてもらったお陰で、くたりと彼の逞しい胸板のお世話になってしまったんだ。
別に、そこまで厳重に保存しなくてもいいのに。バアルさんは「貴方様からの、大事な贈り物ですから……」と透明な袋に綺麗にラッピングしただけでなく、特殊な術もかけてくれたらしい。
コルテが、スケッチブックに詳しく書いて教えてくれたんだけど。魔術初心者の俺には、どんな品物でもその状態を保ったまま、長期保存出来る……なんかスゴイ術ってことしか、分からなかったんだ。
ちなみに、俺達がケーキを食べている間に、サタン様とヨミ様がバアルさんのお祝いに訪れてくれていたらしい。
ドアの隙間に、いつの間にかバースデーカードが挟まっていたんだ。
バアルさんがカードを開いた瞬間、ペアのグラスが仲良く収まった箱とおしゃれな紅茶の缶が3つ並んだ箱が現れたのには、びっくりしたな。
お二方からのカードに何が書いてあったのか俺は知らない。だけど、微笑んで大事そうにカードをしまっていたバアルさんを見て、俺も嬉しくなったんだ。
「あの、バアルさん……他に、何か俺に出来ることってありますか? その……俺にして欲しいこと、とか……」
今まで知らなかったが、俺は随分と欲深い人間らしい。
軽々と俺を膝の上に乗せてくれている彼は、どこか上機嫌に触覚を揺らし、羽をはためかせているのに。まだ彼を喜ばせたい、嬉しそうに輝く笑顔が見たい、という独りよがりのワガママが、むくむくと湧き上がってくるんだから。
「貴方様にして欲しいこと、でございますか……ふふ、そのように素敵なお誘いまでして頂いて宜しいのでしょうか? 今日はすでに、貴方様の心のこもった素晴らしい贈り物を賜っておりますのに……」
心の底から嬉しそうに微笑みかけてくれる彼に、胸の奥がきゅっと締めつけられる。
この笑顔の為なら、なんだって出来るし、やってみせるって……そう、強く思えるんだ。
「……いいですよ。というか……あげたいんです、俺が。バアルさんにあげられるものなら何でも……」
「アオイ様……そのようにお可愛らしいことを仰って頂けるということは……お覚悟をなされていらっしゃる……ということで宜しいのでしょうか?」
ぱちぱちと瞬いていた緑の瞳に、あの妖しい光が、背筋がぞくぞくする光が宿る。
でも、今日の俺は一味違う。いつもだったら、このタイミングでやって来るヘタレな俺が、積極的な俺と肩を組んで、何でも来いっとすでに覚悟を決めているからだ。
「は、はい……どんとこいっです」
「では、まず、お先に宣言させて頂きます……貴方様のお誕生日には、お返しとして、私の全てをかけてお望みを叶えましょう。受け取って頂けますね?」
ぎゅっと握った俺の手を、握り返してくれた彼からの、思いもよらない嬉しすぎる先制パンチに腰が抜けそうになる。
引き締まった腕に支えられ、抱き寄せられて、ますます密着してしまったからだ。緩みきった口から、ふにゃふにゃした情けのない声を出してしまっていた。
「ふぇ……はぃ……喜んで、いただきます……」
「ありがとうございます。それから……貴方様にして欲しいこと、でございますが……」
間近に迫った薄い唇に浮かぶ、艷やかな笑みに思わず息を呑む。
俺としてはもう、彼のものになった気でいたんだ。けどさ……心だけじゃなくて、俺のこと……全部もらってくれるのかな? って期待と不安で勝手に身体が震えていたんだ。
「……呼び捨てで、呼んでいただけますか? 私めのことを」
「……へ?」
だからさ、つい間抜けな声が出ちゃってたんだよな。確かに前、心の準備が出来てないからって断ってしまっていたけど……このタイミングでお願いされるとは、思ってもみなかったからさ。
「先程の貴方様とコルテのやり取りが、大変羨ましく存じまして……今日だけで構いませんので……駄目、でしょうか?」
「い、いえ、全然大丈夫ですよっ」
残念な気持ちはあるものの、心の何処かでホッとしてしまっている、意気地無しな俺にうんざりする。
でも今は、一人勝手に落ち込んでいる場合じゃない。瞳に寂しそうな光を宿している、彼のお願いを叶えなければ。
そうして気持ちを切り替え、力強く頷いた俺を待っていたのは、思いもよらない高さのハードルだった。
「では、よろしくお願い致します」
「……はい」
期待に輝く瞳に見つめられながら、彼の名前を呼ぼうとする。いつもみたいにさん付けじゃなくて、そのままで。
「……ば…………ば……」
たった3文字だ。たった3文字なのに……なんでこんなに喉が震えてしまうんだろう。
なんで、こんなに鼓動が激しくバクバクと脈打ってしまうんだろう。顔が、全身が、熱くなってしまうんだろう。
ゆっくりでいいですからね、と彼が微笑む。あやすように背中を撫でてくれる手の温もりに、ホッと心が緩んだ瞬間、勢いに任せて俺は口を開いた。
「ば、バアル……す、好き…………だよ」
「……もう一回、宜しいでしょうか?」
「え? あ……ぅ…………好き、だよ……バアル……」
「…………もう一回」
「う…………バアル、大好き……」
せわしなく羽をはためかせ、宝石のような瞳を煌めかせる彼に何度も強請られる。嬉しいやら恥ずかしいやらで、頭がくらくらしてしまう。ちょっとだけ泣いてしまいそうだ。
おまけに細く長い指に顎を持ち上げられ、固定されてしまっているせいで、熱い眼差しから逃げられないしさ。
さすがに、もう限界だと。すでに俺のせいでシワが寄ってしまっている、上等な黒いスーツのジャケットの裾を、いつものように摘んで引っ張ろうとしていた時だった。
「ありがとうございます、アオイ……私も愛しております」
蕩けるような微笑みと一緒に甘い響きを含んだ声で、俺の心を一発で歓喜に震わせる言葉を囁いてくれたのは。
やっぱり彼は、俺を喜ばせる天才だと思う。あとズルい。勿論、良い意味で。
彼への贈り物だったハズなのに。供給過多のお返しをもらってしまった俺は、なんとか最後の気力を振り絞って「俺も……」と返せた。
返せたんだが。花が咲いたような笑みを浮かべた彼にキスまでしてもらったお陰で、くたりと彼の逞しい胸板のお世話になってしまったんだ。
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