【完結】間違って地獄に落とされましたが、俺は幸せです。

白井のわ

文字の大きさ
28 / 1,566

ごめんなさい! バアルさんを抱き枕代わりにしちゃって

しおりを挟む
「ヨミ様……差し出がましいこととは存じますが、アオイ様がお伺いしたいのは、恐らく理由の方かと……」

「む、理由とな?」

「そ、そうですっ! なんで、こんなに可愛らしいものを二体もいただけるのかなって……」

 さりげなく助け船を出してくれたバアルさんに感謝しつつ、全力で乗っかった。

 そして、テディベアのようにちょこんと俺の両脇に座っている二体を。つぶらな瞳が可愛らしい、デフォルメされた狼とライオンのぬいぐるみを指し示す。

「可愛らしい、か……私としては彼等の雄々しさを表現したつもりだったのだが……」

「ヨミ様……」

「ああ、済まない。理由だったな」

 形のいい眉をひそめ、口元に手を当てながら、ブツブツと横道に逸れかかりそうになっていたヨミ様。

 反省会でも始めそうな彼に、すかさずバアルさんが声を掛け、軌道修正してくれた。お陰で、ひとまず聞き出すことは出来た。突然、贈り物をしていただけた訳を。だが。

 すぐにまた、別の疑問が生じてしまった。白い歯を見せ、ゆるりと足を組み直したヨミ様の言葉によって。

「それは勿論、貴殿に快適な睡眠を提供したい一心で作り上げたのだよ」

「快適な睡眠……ですか? ……え、ちょっと待って下さい。今、作ったって言いましたか?」

「ああ、手芸が趣味でね。貴殿の体調が芳しくないと聞き、急ぎ一晩で仕上げたのだが……中々な出来であろう?」

 自画自賛になってしまい申し訳ないが……と、はにかむように微笑むヨミ様。彼の優しい心遣いに、じんわりと胸の辺りが温かくなっていく。

「ありがとうございます……てっきりお店で売られているものだと」

「ははっ貴殿から、そのように申して頂けるとは光栄だな」

 夜なべをして縫った甲斐があったというものだ、とヨミ様が口の端を持ち上げる。

 よく見れば、彼の目の下には、うっすらとだがクマが出来ていた。今度は、なんだか目の奥の方が熱くなってきてしまう。

「顔色は……良さそうに見えるが、今後も健康的な生活を送るために、良質な睡眠は必須だからな」

 まじまじと俺を見つめていた赤い瞳が細められ、大きな窓から差し込む夕陽によって淡い光を宿す。

「彼等は抱き枕として、その一助となるだろうっ! この私が保証しよう」

「抱き枕……ですか」

「ああ、優しい温もりで安心感を、アロマの香りによってリラックス効果が得られるからな。貴殿を必ず心地のいい眠りへと誘ってくれるであろう」

 ヨミ様が、どんっと音が鳴りそうなくらいに強く、胸板を握り拳で叩いた。その力強い宣言によって、ようやく、バラバラになっていた糸が繋がっていく。

 理由は解った。有り難い思いも、だけど。今朝の温かいひと時が、ふっと脳裏に過ってしまう。

 柔かく微笑むバアルさん。彼に腕枕をしてもらいながら、優しい手の温もりと、落ち着くハーブの香りに包まれる。

 朝ごはんが昼ごはんになってしまうまで、ぐっすりと二度寝を満喫してしまったけれど、俺にとってはスゴく嬉しいひと時だった。

 でも、抱き枕があるんだったら、もう今夜からは、彼に添い寝をしてもらえなくなるんじゃないか? 

 自分勝手な考えが、ぐるぐる回る。ヨミ様のご厚意を、無下にするようなワガママが。

「なにやら、難しい顔をしているが…………もしや、アオイ殿」

 地獄の王様なだけあって、俺のおこがましい下心なんて簡単に見透かされてしまったんだろう。

 その声は、先程までの柔らかい声色とは正反対の、地を這うように恐ろしい。

 険しく、反射的にこの場から逃げ出したくなるほど鋭い目つきで、俺を見つめてくる。

「ごめんなさいっ! 大事な部下であるバアルさんを、抱き枕代わりにしちゃってっ!!」
「お肌が弱いのかっ? すまないっ! 私の好みで、ついもふもふにし過ぎてしまってっ!!」

 思わず顔を伏せた俺の大声に、おろおろした声が重なった。

「え?」
「む?」

 ものの見事に行き違った会話の後に、ぱっとかち合った瞳には困惑の色が見て取れた。

「俺……別にアレルギーとか有りません、けど?」

「それは、何よりだな……ところで確かにバアルは私が頼りにしている部下だが、抱き枕代わり……とな?」

 首を傾げ、細められた赤色に訝しげな視線を送られて、ようやく余計過ぎる発言をしてしまっていたことに気づいた。

「うっ…………ぁ、その……」

 ……戻ることが出来るのならば、ほんの1分前に戻りたいっ!!

 決して叶わぬ望みを心の中で叫ぶ。刺さるような眼差しから少しでも逃れようと、どんどんと熱くなっていく顔を両手で覆い隠してしまっていた。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  ゆるゆ
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが、びっくりして憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! ノィユとヴィルの動画を作ってみました!(笑)  インスタ @yuruyu0   Youtube @BL小説動画 です!  プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったらお話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです! ヴィル×ノィユのお話です。 本編完結しました! 『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました! 時々おまけのお話を更新するかもです。 名前が  *   ゆるゆ  になりました。 これからもどうぞよろしくお願い致します! 表紙や動画はAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

過労死転生した公務員、魔力がないだけで辺境に追放されたので、忠犬騎士と知識チートでざまぁしながら領地経営はじめます

水凪しおん
BL
過労死した元公務員の俺が転生したのは、魔法と剣が存在する異世界の、どうしようもない貧乏貴族の三男だった。 家族からは能無しと蔑まれ、与えられたのは「ゴミ捨て場」と揶揄される荒れ果てた辺境の領地。これは、事実上の追放だ。 絶望的な状況の中、俺に付き従ったのは、無口で無骨だが、その瞳に確かな忠誠を宿す一人の護衛騎士だけだった。 「大丈夫だ。俺がいる」 彼の言葉を胸に、俺は決意する。公務員として培った知識と経験、そして持ち前のしぶとさで、この最悪な領地を最高の楽園に変えてみせると。 これは、不遇な貴族と忠実な騎士が織りなす、絶望の淵から始まる領地改革ファンタジー。そして、固い絆で結ばれた二人が、やがて王国を揺るがす運命に立ち向かう物語。 無能と罵った家族に、見て見ぬふりをした者たちに、最高の「ざまぁ」をお見舞いしてやろうじゃないか!

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される

秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました! 最終17位でした!応援ありがとうございます! あらすじ 魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。 ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。 死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――? 傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。

氷の騎士団長様の悪妻とかイヤなので離婚しようと思います

黄金 
BL
目が覚めたら、ここは読んでたBL漫画の世界。冷静冷淡な氷の騎士団長様の妻になっていた。しかもその役は名前も出ない悪妻! だったら離婚したい! ユンネの野望は離婚、漫画の主人公を見たい、という二つの事。 お供に老侍従ソマルデを伴って、主人公がいる王宮に向かうのだった。 本編61話まで 番外編 なんか長くなってます。お付き合い下されば幸いです。 ※細目キャラが好きなので書いてます。    多くの方に読んでいただき嬉しいです。  コメント、お気に入り、しおり、イイねを沢山有難うございます。    

処理中です...