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卵パカパカ、くす玉もパカパカ
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どんなに些細なことだとしても、褒められるとやっぱり嬉しいよな。
なんかこう、目の前がキラキラって色づいて、胸の辺りが少し擽ったくなるっていうか。次は、もっと上手く出来るように頑張ろうって気持ちになるっていうかさ。
あと……その、また褒めてもらえるかもしれないって思うと、余計にやる気が湧いてこないか? くるよな?
ただまあ、何事にも限度ってものがあるんだけどさ。
パキャッと俺の手元から発せられた、白い殻が左右に分かれる、こ気味いい音。それに続いて、パカッと宙に浮かんでいた金色のくす玉が割れる。赤、青、黄色に緑と色とりどりのリボンがなびく。
手のひらサイズのくす玉の上で光る緑の粒。もといバアルさんの従者である、ハエのコルテがガラス細工のような羽をぴるぴる鳴らし、磨き上げられた金属みたいに光沢を帯びた身体をますます輝かせる。
針より細い手足でくす玉を抱えたまま、俺達の側で機嫌がよさそうに、宙をくるくると飛んだ。
ただ、卵を上手く割れるようになったからってだけで度々くす玉を割るなんて。しかも祝! とかおめでとう! とかやったね! などなど毎回メッセージが違うという、凝りっぷり。
些細なことを、盛大に祝われて顔は熱いし、背中の辺りが擽ったくて仕方がない。
「素晴らしい。黄身も潰れず、殻も入っておりません。よく出来ましたね」
なのに、俺よりも一回り大きな手に、頭をよしよしと撫で回されてしまうのだ。
穏やかな聞き心地のいい低音で、バアルさんから……す、好きな人からお褒めの言葉をいただいてしまうのだ。
そんな大サービスをされてしまえば、頬が勝手にだらしなく下がってしまう。さっきまで胸の中にいたハズの恥ずかしささえ、あっという間に嬉しさへと塗り替えられてしまうもんだから大変だ。
また、収まりかかっていた心臓が、お祭り騒ぎをし始めてしまう。
「では、此方も。かき混ぜてから粉を振るい、サクッと一つにまとめてしまいましょう」
また、浮かれた熱で頭がのぼせて、なんでも来い! って調子に乗ってしまいそうに……
「まだ、此方の工程を15回ほど繰り返さねばなりませんからね」
ならないな。さすがに。
綺麗に整えられた、白い髭が似合う口元をふわりと綻ばせ、なんの気なしに現実を突きつけてくるバアルさん。
穏やかに微笑む彼には、ほんの少し前の、ひたすらに甘ったるい雰囲気は一切ない。いつものお世話モード……いや今回の場合は、俺のクッキー作りをサポートしてくれる、お手伝いさんモード……かな。
とにかく、そっち側へと完全に切り替わってしまっている。俺を応援してくれはすれど、甘やかしてくれることはなさそうだ。
「はい、頑張ります……」
軽く息を吐き、気を引き締め直した俺の背を「ええ、頑張りましょうね」と彼の手が、優しい手つきでゆるゆる撫でてくれる。
単純な俺は、その手の温もりだけで、気分がバッチリ上を向いてしまっていた。
彼から手渡されたヘラをしっかりと握り締め、終わりの見えない生地との格闘を再開しようとした。しようとして。
「……無事終えられましたら、ご褒美を差し上げますね」
そっと囁かれた、俺にとっては魅力的でしかない言葉と、添えられた彼の悪戯っぽい微笑みに鷲掴みにされてしまった。
途端に胸の奥からぶわりと、大事にしまい込んでいた彼とのやり取りが思い起こされてしまう。思わず銀色のボウルを抱えたまま、ひっくり返りそうになってしまった。
なんかこう、目の前がキラキラって色づいて、胸の辺りが少し擽ったくなるっていうか。次は、もっと上手く出来るように頑張ろうって気持ちになるっていうかさ。
あと……その、また褒めてもらえるかもしれないって思うと、余計にやる気が湧いてこないか? くるよな?
ただまあ、何事にも限度ってものがあるんだけどさ。
パキャッと俺の手元から発せられた、白い殻が左右に分かれる、こ気味いい音。それに続いて、パカッと宙に浮かんでいた金色のくす玉が割れる。赤、青、黄色に緑と色とりどりのリボンがなびく。
手のひらサイズのくす玉の上で光る緑の粒。もといバアルさんの従者である、ハエのコルテがガラス細工のような羽をぴるぴる鳴らし、磨き上げられた金属みたいに光沢を帯びた身体をますます輝かせる。
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ただ、卵を上手く割れるようになったからってだけで度々くす玉を割るなんて。しかも祝! とかおめでとう! とかやったね! などなど毎回メッセージが違うという、凝りっぷり。
些細なことを、盛大に祝われて顔は熱いし、背中の辺りが擽ったくて仕方がない。
「素晴らしい。黄身も潰れず、殻も入っておりません。よく出来ましたね」
なのに、俺よりも一回り大きな手に、頭をよしよしと撫で回されてしまうのだ。
穏やかな聞き心地のいい低音で、バアルさんから……す、好きな人からお褒めの言葉をいただいてしまうのだ。
そんな大サービスをされてしまえば、頬が勝手にだらしなく下がってしまう。さっきまで胸の中にいたハズの恥ずかしささえ、あっという間に嬉しさへと塗り替えられてしまうもんだから大変だ。
また、収まりかかっていた心臓が、お祭り騒ぎをし始めてしまう。
「では、此方も。かき混ぜてから粉を振るい、サクッと一つにまとめてしまいましょう」
また、浮かれた熱で頭がのぼせて、なんでも来い! って調子に乗ってしまいそうに……
「まだ、此方の工程を15回ほど繰り返さねばなりませんからね」
ならないな。さすがに。
綺麗に整えられた、白い髭が似合う口元をふわりと綻ばせ、なんの気なしに現実を突きつけてくるバアルさん。
穏やかに微笑む彼には、ほんの少し前の、ひたすらに甘ったるい雰囲気は一切ない。いつものお世話モード……いや今回の場合は、俺のクッキー作りをサポートしてくれる、お手伝いさんモード……かな。
とにかく、そっち側へと完全に切り替わってしまっている。俺を応援してくれはすれど、甘やかしてくれることはなさそうだ。
「はい、頑張ります……」
軽く息を吐き、気を引き締め直した俺の背を「ええ、頑張りましょうね」と彼の手が、優しい手つきでゆるゆる撫でてくれる。
単純な俺は、その手の温もりだけで、気分がバッチリ上を向いてしまっていた。
彼から手渡されたヘラをしっかりと握り締め、終わりの見えない生地との格闘を再開しようとした。しようとして。
「……無事終えられましたら、ご褒美を差し上げますね」
そっと囁かれた、俺にとっては魅力的でしかない言葉と、添えられた彼の悪戯っぽい微笑みに鷲掴みにされてしまった。
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