132 / 1,566
★ もっと、俺のこと構ってください
しおりを挟む
珍しいこともあるもんだ。たっぷり優しく彼から致してもらった後に、俺がしばらく眠ってしまうのはいつものことなんだが……
「……バアルさん? バアル? ……やっぱり寝てるよな……」
しっかり俺に腕枕をしてくれたまま、バアルさんは固く目を閉じている。そっと呼びかけようが、高い鼻を指先でちょんちょんとつついてみようが、ぴくりとも動かない。半透明の羽を縮め、規則正しい寝息を立てながら、時々二本の触覚を揺らすだけ。
兵士さん達との手合いの後、バアルさんは「何も問題はございませんよ」と微笑みかけてくれていたけど、やっぱり疲れていたんだろう。
なんせ多勢に無勢だったし。それに、今日は、一緒に出来たから……俺だけじゃなくて自分も、綺麗にしてから着替えないといけなかったんだしさ。
「……キス、して欲しかったな……」
真新しい、石鹸の香りがする白いシーツの上に、うっかりこぼしてしまっていた気持ちが、誰に聞かれるでもなくぽつんと落ちる。
何故かは、自分でも分からない。けれども、してもらった後は、もうちょっとだけバアルさんに触れて欲しくなるというか……甘えたくなってしまうんだ。
いや、まぁ……いつもバアルさんには、甘えちゃってるし。こういう触れ合いも、まだ3回目なんだけどさ。
……ちょっとだけ、一回だけならいいんじゃないか? と自分の欲望に正直な心の中の俺が、俺をそそのかしてくる。
穏やかな寝顔を前にして、揺らいでしまっている俺に……ほら、前にしかけた時もさ、して頂けないのでしょうか? って残念がってくれただろう? と畳み掛けてくる。
「…………ごめんなさい」
結局、俺は欲望に抗うことが出来なかった。謝罪の言葉を口にしながらも、静かに呼吸を繰り返している薄い唇をこっそり奪ってしまっていた。更には、出来るだけ長く触れ合おうと、特別なキスをするくらいに、ずっと重ねたままでいたんだ。
……さすがにそろそろマズいかな。
顔を離そうとしたが叶わなかった。距離を取ろうとしても、いつの間にか添えられていた手で後頭部を押さえつけられて動けない。
「んぅ? ……は、ぁ……んっ、ん……ふ、ぁっ、んん……」
頭の中がハテナマークで埋め尽くされている間に、優しく上唇を食まれた。僅かに空いた隙間から、湿った熱が口内へと入り込んできた。ゆるゆると動く舌先から与えられる甘い刺激によって滲んだ視界で、嬉しそうに微笑むバアルさんと目が合う。
「ん、ぁ……いつから……ですか?」
「……貴方様が、大変お可愛らしい声で……キスして欲しかったな……と呟いた時からですね」
……ほとんど最初っからじゃないか!!
即座に俺は叫んでしまっていた。勿論、心の中で。そんなことを考えていたもんだから、態度にまでしっかり出てしまっていた。
いくつもの六角形のレンズで構成された宝石みたいな瞳を細め、どこか上機嫌に触覚を揺らしている彼を、じっと見つめてしまっていたんだ。
ますます笑みを深めた彼が、彫りの深い顔を寄せ、額を擦り寄せてくる。また、俺達の距離がゼロになって、優しく何度も触れてくれた後に、バアルさんが「……違いましたか?」と悪戯っぽく笑う。
さっきのは、強請っていた訳じゃなかった。でも単純な俺は、すっかり気持ちがふわふわしてしまっていて……
「……違いません。だから、もっと……俺のこと、構ってください……お願いします……」
認めただけじゃない。さらに追加で強請ってしまっていたんだ。
「畏まりました……」
あふれてしまいそうな喜びを湛えた唇が、俺の額にそっと触れてくれる。目尻のシワを深めて「さあ、どうぞこちらへ……」と広げられた腕の中へと、俺は胸を高鳴らせながら擦り寄っていった。
「……バアルさん? バアル? ……やっぱり寝てるよな……」
しっかり俺に腕枕をしてくれたまま、バアルさんは固く目を閉じている。そっと呼びかけようが、高い鼻を指先でちょんちょんとつついてみようが、ぴくりとも動かない。半透明の羽を縮め、規則正しい寝息を立てながら、時々二本の触覚を揺らすだけ。
兵士さん達との手合いの後、バアルさんは「何も問題はございませんよ」と微笑みかけてくれていたけど、やっぱり疲れていたんだろう。
なんせ多勢に無勢だったし。それに、今日は、一緒に出来たから……俺だけじゃなくて自分も、綺麗にしてから着替えないといけなかったんだしさ。
「……キス、して欲しかったな……」
真新しい、石鹸の香りがする白いシーツの上に、うっかりこぼしてしまっていた気持ちが、誰に聞かれるでもなくぽつんと落ちる。
何故かは、自分でも分からない。けれども、してもらった後は、もうちょっとだけバアルさんに触れて欲しくなるというか……甘えたくなってしまうんだ。
いや、まぁ……いつもバアルさんには、甘えちゃってるし。こういう触れ合いも、まだ3回目なんだけどさ。
……ちょっとだけ、一回だけならいいんじゃないか? と自分の欲望に正直な心の中の俺が、俺をそそのかしてくる。
穏やかな寝顔を前にして、揺らいでしまっている俺に……ほら、前にしかけた時もさ、して頂けないのでしょうか? って残念がってくれただろう? と畳み掛けてくる。
「…………ごめんなさい」
結局、俺は欲望に抗うことが出来なかった。謝罪の言葉を口にしながらも、静かに呼吸を繰り返している薄い唇をこっそり奪ってしまっていた。更には、出来るだけ長く触れ合おうと、特別なキスをするくらいに、ずっと重ねたままでいたんだ。
……さすがにそろそろマズいかな。
顔を離そうとしたが叶わなかった。距離を取ろうとしても、いつの間にか添えられていた手で後頭部を押さえつけられて動けない。
「んぅ? ……は、ぁ……んっ、ん……ふ、ぁっ、んん……」
頭の中がハテナマークで埋め尽くされている間に、優しく上唇を食まれた。僅かに空いた隙間から、湿った熱が口内へと入り込んできた。ゆるゆると動く舌先から与えられる甘い刺激によって滲んだ視界で、嬉しそうに微笑むバアルさんと目が合う。
「ん、ぁ……いつから……ですか?」
「……貴方様が、大変お可愛らしい声で……キスして欲しかったな……と呟いた時からですね」
……ほとんど最初っからじゃないか!!
即座に俺は叫んでしまっていた。勿論、心の中で。そんなことを考えていたもんだから、態度にまでしっかり出てしまっていた。
いくつもの六角形のレンズで構成された宝石みたいな瞳を細め、どこか上機嫌に触覚を揺らしている彼を、じっと見つめてしまっていたんだ。
ますます笑みを深めた彼が、彫りの深い顔を寄せ、額を擦り寄せてくる。また、俺達の距離がゼロになって、優しく何度も触れてくれた後に、バアルさんが「……違いましたか?」と悪戯っぽく笑う。
さっきのは、強請っていた訳じゃなかった。でも単純な俺は、すっかり気持ちがふわふわしてしまっていて……
「……違いません。だから、もっと……俺のこと、構ってください……お願いします……」
認めただけじゃない。さらに追加で強請ってしまっていたんだ。
「畏まりました……」
あふれてしまいそうな喜びを湛えた唇が、俺の額にそっと触れてくれる。目尻のシワを深めて「さあ、どうぞこちらへ……」と広げられた腕の中へと、俺は胸を高鳴らせながら擦り寄っていった。
140
あなたにおすすめの小説
オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?
中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」
そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。
しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は――
ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。
(……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ)
ところが、初めての商談でその評価は一変する。
榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。
(仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな)
ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり――
なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。
そして気づく。
「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」
煙草をくゆらせる仕草。
ネクタイを緩める無防備な姿。
そのたびに、陽翔の理性は削られていく。
「俺、もう待てないんで……」
ついに陽翔は榊を追い詰めるが――
「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」
攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。
じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。
【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】
主任補佐として、ちゃんとせなあかん──
そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。
春のすこし手前、まだ肌寒い季節。
新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。
風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。
何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。
拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。
年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。
これはまだ、恋になる“少し前”の物語。
関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。
(5月14日より連載開始)
何も知らない人間兄は、竜弟の執愛に気付かない
てんつぶ
BL
連峰の最も高い山の上、竜人ばかりの住む村。
その村の長である家で長男として育てられたノアだったが、肌の色や顔立ちも、体つきまで周囲とはまるで違い、華奢で儚げだ。自分はひょっとして拾われた子なのではないかと悩んでいたが、それを口に出すことすら躊躇っていた。
弟のコネハはノアを村の長にするべく奮闘しているが、ノアは竜体にもなれないし、人を癒す力しかもっていない。ひ弱な自分はその器ではないというのに、日々プレッシャーだけが重くのしかかる。
むしろ身体も大きく力も強く、雄々しく美しい弟ならば何の問題もなく長になれる。長男である自分さえいなければ……そんな感情が膨らみながらも、村から出たことのないノアは今日も一人山の麓を眺めていた。
だがある日、両親の会話を聞き、ノアは竜人ですらなく人間だった事を知ってしまう。人間の自分が長になれる訳もなく、またなって良いはずもない。周囲の竜人に人間だとバレてしまっては、家族の立場が悪くなる――そう自分に言い訳をして、ノアは村をこっそり飛び出して、人間の国へと旅立った。探さないでください、そう書置きをした、はずなのに。
人間嫌いの弟が、まさか自分を追って人間の国へ来てしまい――
中年冒険者、年下美青年騎士に番認定されたことで全てを告白するはめになったこと
mayo
BL
王宮騎士(24)×Cランク冒険者(36)
低ランク冒険者であるカイは18年前この世界にやって来た異邦人だ。
諸々あって、現在は雑用専門冒険者として貧乏ながら穏やかな生活を送っている。
冒険者ランクがDからCにあがり、隣国の公女様が街にやってきた日、突然現れた美青年騎士に声をかけられて、攫われた。
その後、カイを〝番〟だと主張する美青年騎士のせいで今まで何をしていたのかを文官の前で語ることを強要される。
語らなければ罪に問われると言われ、カイは渋々語ることにしたのだった、生まれてから36年間の出来事を。
愛され少年と嫌われ少年
透
BL
美しい容姿と高い魔力を持ち、誰からも愛される公爵令息のアシェル。アシェルは王子の不興を買ったことで、「顔を焼く」という重い刑罰を受けることになってしまった。
顔を焼かれる苦痛と恐怖に絶叫した次の瞬間、アシェルはまったく別の場所で別人になっていた。それは同じクラスの少年、顔に大きな痣がある、醜い嫌われ者のノクスだった。
元に戻る方法はわからない。戻れたとしても焼かれた顔は醜い。さらにアシェルはノクスになったことで、自分が顔しか愛されていなかった現実を知ってしまう…。
【嫌われ少年の幼馴染(騎士団所属)×愛され少年】
※本作はムーンライトノベルズでも公開しています。
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる
水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。
「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」
過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。
ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。
孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。
エリート上司に完全に落とされるまで
琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。
彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。
そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。
社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる