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もう一度だけ……貴方様に触れさせて頂いても、宜しいでしょうか?
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…………けれどもまぁ、何事にも、限度というものがあるんだけどさ。
「……その、俺、スゴく嬉しかったですよ? ……ただ、ちょっと刺激が強かったといいますか……」
初めての時に、優しく触れてもらった時ですら、俺はあっさり腰を抜かしてしまったのだ。
なのに、あんなキスをされてしまったら「雨のようなキス」なんて表現が可愛く感じるくらいに、集中豪雨みたいに激しく何度も触れられてしまったら、どうなってしまうのかは明白で。
「……申し訳ございませんでした」
完全に腰が立たなくなってしまった俺を、バアルさんが抱き上げてくれている。横抱きの形で、膝の上に乗せてくれている。
しょんぼりと額の触覚を下げ、背にある半透明の羽を縮こませながら、俺の腰を労るように撫でてくれる。
「あー……ほら、座ったままでもカップケーキは作れますし。今から準備しても、おやつの時間までには間に合いますし、ね?」
少し前までの、ワイルドで大人の色気にあふれていた彼は、俺にとって都合のいい夢だったんじゃないか?
そう考えてしまうほど、バアルさんはいつも通りの穏やかで優しい彼に、甲斐甲斐しく俺の世話を焼いてくれる彼に戻っていた。
俺より一回り大きな手で労るように、全身を余すことなく、ゆるゆる撫でてくれている。
正直、ほっとはした。少し残念な気持ちもあるけど。
だって、もしも四六時中、あんな風に彼から求められてしまったら……ドキドキし過ぎて身体は言わずもがな、頭の方もバカになっちゃいそうだもんな。
そうじゃなくとも最近の俺は酷いのだ。なにかあるとすぐに、バアルさんのことしか考えられなくなるくらい、色ボケしまくっているのだから。
「優しいお言葉、誠にありがとうございます……」
肩を落とすバアルさんは、ひと目で落ち込んでいると分かるレベルで沈んでいた。凛々しい眉を申し訳なさそうに下げ、唇を歪ませている。
「いえ、ホントに気にしないでくださいっ滅茶苦茶嬉しかったんで」
なんとかして励まさなければ! という思いだけが全面に出てしまったのだろう。
「その、もうちょっと加減してくれるんだったら……また、して欲しいなって…………思って、ますし……」
なんせ、包み隠さず、まるっと全て伝えてしまっていたのだ。
繋いだ彼の手を握りながら、いつもの俺なら恥ずかし過ぎて絶対に言わない、いや、言うことが出来ない本音を。
緑の瞳が大きく見開き、それと同時に触覚が動物の耳みたいにピンッと立ち上がり、縮んでいた羽が、ぶわりと広がっていく。
突然の変化に目を瞬かせ、うっかり半開きになってしまっていた俺の口に、柔らかいものがそっと触れた。
「んっ…………バアルさ……」
名残惜しそうにゆっくりと、離れていってしまった薄い唇から紡がれる言葉に。
「…………申し訳ございません……今は、先程のような無体は決して働きません、ですが……」
真っ直ぐに俺を見つめる、妖しい熱を帯びた緑の瞳に。頬に添えられた、大きな手の温もりに。
「もう一度だけ……貴方様に触れさせて頂いても、宜しいでしょうか?」
すっかり骨抜きにされてしまった俺が、断れるハズがなかった。縋るように俺の手を握り返す、彼の懇願を。
「ひゃ、ひゃい…………どうぞ……」
あっさり首を縦に振った俺に、先程の言葉通りバアルさんは、一回重ねただけで解放してくれた。
だけど、ホントにどうしようもなく、頭がお花畑になってしまっている俺は、なんだか物足りなく感じてしまったんだ。
結局、子供みたいに彼のジャケットの裾を引っ張り、逆に「……もう一回、お願いします」と強請ってしまっていたんだ。
「……その、俺、スゴく嬉しかったですよ? ……ただ、ちょっと刺激が強かったといいますか……」
初めての時に、優しく触れてもらった時ですら、俺はあっさり腰を抜かしてしまったのだ。
なのに、あんなキスをされてしまったら「雨のようなキス」なんて表現が可愛く感じるくらいに、集中豪雨みたいに激しく何度も触れられてしまったら、どうなってしまうのかは明白で。
「……申し訳ございませんでした」
完全に腰が立たなくなってしまった俺を、バアルさんが抱き上げてくれている。横抱きの形で、膝の上に乗せてくれている。
しょんぼりと額の触覚を下げ、背にある半透明の羽を縮こませながら、俺の腰を労るように撫でてくれる。
「あー……ほら、座ったままでもカップケーキは作れますし。今から準備しても、おやつの時間までには間に合いますし、ね?」
少し前までの、ワイルドで大人の色気にあふれていた彼は、俺にとって都合のいい夢だったんじゃないか?
そう考えてしまうほど、バアルさんはいつも通りの穏やかで優しい彼に、甲斐甲斐しく俺の世話を焼いてくれる彼に戻っていた。
俺より一回り大きな手で労るように、全身を余すことなく、ゆるゆる撫でてくれている。
正直、ほっとはした。少し残念な気持ちもあるけど。
だって、もしも四六時中、あんな風に彼から求められてしまったら……ドキドキし過ぎて身体は言わずもがな、頭の方もバカになっちゃいそうだもんな。
そうじゃなくとも最近の俺は酷いのだ。なにかあるとすぐに、バアルさんのことしか考えられなくなるくらい、色ボケしまくっているのだから。
「優しいお言葉、誠にありがとうございます……」
肩を落とすバアルさんは、ひと目で落ち込んでいると分かるレベルで沈んでいた。凛々しい眉を申し訳なさそうに下げ、唇を歪ませている。
「いえ、ホントに気にしないでくださいっ滅茶苦茶嬉しかったんで」
なんとかして励まさなければ! という思いだけが全面に出てしまったのだろう。
「その、もうちょっと加減してくれるんだったら……また、して欲しいなって…………思って、ますし……」
なんせ、包み隠さず、まるっと全て伝えてしまっていたのだ。
繋いだ彼の手を握りながら、いつもの俺なら恥ずかし過ぎて絶対に言わない、いや、言うことが出来ない本音を。
緑の瞳が大きく見開き、それと同時に触覚が動物の耳みたいにピンッと立ち上がり、縮んでいた羽が、ぶわりと広がっていく。
突然の変化に目を瞬かせ、うっかり半開きになってしまっていた俺の口に、柔らかいものがそっと触れた。
「んっ…………バアルさ……」
名残惜しそうにゆっくりと、離れていってしまった薄い唇から紡がれる言葉に。
「…………申し訳ございません……今は、先程のような無体は決して働きません、ですが……」
真っ直ぐに俺を見つめる、妖しい熱を帯びた緑の瞳に。頬に添えられた、大きな手の温もりに。
「もう一度だけ……貴方様に触れさせて頂いても、宜しいでしょうか?」
すっかり骨抜きにされてしまった俺が、断れるハズがなかった。縋るように俺の手を握り返す、彼の懇願を。
「ひゃ、ひゃい…………どうぞ……」
あっさり首を縦に振った俺に、先程の言葉通りバアルさんは、一回重ねただけで解放してくれた。
だけど、ホントにどうしようもなく、頭がお花畑になってしまっている俺は、なんだか物足りなく感じてしまったんだ。
結局、子供みたいに彼のジャケットの裾を引っ張り、逆に「……もう一回、お願いします」と強請ってしまっていたんだ。
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