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まだまだホワイトデーは終わらない
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美味しいお夕飯でお腹を満たし、一緒に湯船でゆったり身体を温め、ソファーでのんびりと過ごしていた夜のひと時。逞しいお膝の上に抱っこしてもらい、大きな手に甘やかされて、十分過ぎる幸せに浸っていた時だった。
思いがけない嬉しい事態に、頭が追いついていないんだろう。つい、彼の言葉をそのままなぞっていた。
「して欲しいこと……ですか?」
確かに今日は、朝からときめきっぱなしのサプライズが続いてはいた。ホワイトデーだからと、俺への気持ちを伝えたいからと。
受け止めきれないくらいの嬉しい愛の言葉に、真心たっぷりの手作りお菓子。もう大満足だ、と油断していたらこれだ。まさか、とびきりのが最後に待っていたなんて。
「ええ」
短く答え、頷いた彼が、柔らかい目元にサラリとかかっている白く艷やかな髪を耳へと流す。その仕草だけでも心臓が跳ねてしまうのに……夜の彼は相変わらず無防備だ。
白いシャツの襟元は、いつも以上に緩んでいる。浮き上がった色っぽい鎖骨のラインはバッチリ見えちゃってるし。盛り上がった胸板による谷間までお披露目しちゃってるという、大サービスっぷりだ。
……ズルい。ズル過ぎる。カッコよくて、えっちなんて。
あふれっぱなしな大人の男の色気にやられ、すでにちょっぴりもじもじしてしまっている俺の状態なんて、彼は知る由もない。
だから、スマートにやってのけるんだろう。俺の手を取り、繋ぎ、上目遣いで手の甲に口づけるなんてカッコいいことを。
「以前から、貴方様が私によく仰って下さったでしょう? ですから、今宵は私がお返しをさせて頂きたいのです」
「ふぇ……」
緩みまくった口と一緒に全身からも、ふにゃりと力が抜けてしまったものの。欲望に正直な俺の頭は、ちゃっかり思考を回していた。
魅力的過ぎる提案に、あれもこれもとバアルさんと一緒にしたいことが浮かんでくる。どうしよう……全っ然、一つに絞れる気がしないんだが。
「ち、因みにですけど……何個まで、でしょう?」
大抵こういうのは、一つきりというのがセオリーだ。
だというのに俺は、がめつく強請ってしまっていた。そんでもって、姿勢も前のめりになってしまっていた。鮮やかな緑の瞳がきょとんと丸くなり、白い睫毛がぱちぱち瞬く。
マズい……調子に乗ってがっつき過ぎてしまった……引かれてしまったかもしれない……
じわりと滲んだ不安と後悔。だが、それらは広がりきる前にあっさり消えていくことになる。
「ふふ、いくつでも構いませんよ」
優しさの権化といっても過言ではない柔らかい微笑みと温かすぎるお言葉によって。
「……貴方様の喜びが、私の喜びでございますので」
気持ちがホッと緩んだからだろう。欲望がダダ漏れになっていく。
「じゃ、じゃあ……ぎゅってして欲しいです」
次から次へボロボロと口をついて出てしまう。いつもは心の奥にしまい込んでいて、中々さらけ出せない素直な気持ちが。
「後、いっぱいキスもして欲しいし……それから……」
頭も撫でさせて欲しいな。膝枕もしてみたい。薄っぺらい俺の膝じゃあ、あんまり居心地よくないかもしれないけどさ。
後、バアルさんのジャケット……借りてもらえたりしないかな? カッコいいから、一回羽織ってみたかったんだよなぁ。ダメ元で頼んでみようかな、折角だし。
「……成る程、今になってお気持ちが分かりました」
「お気持ち……ですか?」
細く長い指をシャープな顎に当て、ぽつりとこぼした呟き。誰のことを、何のことを言っているのか分からなくて、ついそのまま言葉をなぞって返していた。
宙を見ているような、今とは別の光景を見ているような瞳が再び俺を映し、ゆるりと細められる。
「ええ。以前、私のお願いに対して時折意外そうな表情をなされたり、物足りなさそうに可愛らしい眉をしかめていた、貴方様のお気持ちが」
ああ、成る程。ようやく、彼の言いたいことが分かった。そんなことでいいんですか? ってことか。いつもしているし、してもらっていることだから。
「ふふ、俺も分かりました。バアルさんの気持ち」
「……? 私の、でございますか?」
「はい。俺も……こういう時くらい、もっと特別なことをお願いしてくれてもいいのにって思ってました。だけど……『そんなこと』じゃないくらい、つい頼んじゃうくらい好きなこと、だったんですね」
今まで俺にしてくれた意外なお願い。頭を撫でて欲しいとか、呼び捨てで呼んで欲しいとか。
その時は、遠慮しないでいいのになって思っちゃってたけど。バアルさんにとっては十分特別で、嬉しいことだったんだな。そう、思ってくれていたんだな。
「ふむ……ということは、アオイ様もそれほどまでに好きだと、そう捉えて宜しいのですね?」
「へ?」
「……私に、抱き締められることが、口づけられることが大変好きだと……そう捉えて宜しいのでしょう?」
「あ……」
気づかないうちに、あれよあれよと掘ってしまっていた。見事な墓穴を。
ここまで言っておいて、違うだなんて言える訳がない。かといって、彼を納得させるぐらいに完璧な言い訳を思いつくハズもない。無い無い尽くしだ。
「……アオイ様?」
ダメ押しだった。俯くことで逸していた視線を、顎を優しく持ち上げられて、合わされる。じっと俺を見つめてくる、喜びと期待に満ちた眼差し。宝石よりも美しい……煌めく緑の輝きに、俺は素直に降参した。
「ひゃ、ひゃい……そうでふ……」
頷く俺を見て、バアルさんが笑みを深くする。上機嫌に揺れていた触覚はますます弾むように揺れ、はためく透き通った羽もぶわりと広がっていく。大変ご満悦そうだ。
嬉しそうなのは何よりだ。何よりなんだが、恥ずかしい。今さらになってじわじわ込み上げてきたものが、俺の顔を熱く染めていく。火が出てしまいそうだ。
「ならば、お任せ下さい。全身全霊を持ってそのお願い、お応え致しましょう」
胸に手を当て会釈し、彼が宣言する。紡いだ低音には、心なしか力がこもっているように感じた。どうやら、いつものお世話大好きスイッチではなく、別のスイッチが入ってしまったみたいだ。
……今更だけど、とんでもないことを頼んでしまったのかもしれない。この先、俺の心臓はもつのだろうか……
八割以上の期待とちょっぴりの不安を抱きつつ、彼の首に腕を回した。
思いがけない嬉しい事態に、頭が追いついていないんだろう。つい、彼の言葉をそのままなぞっていた。
「して欲しいこと……ですか?」
確かに今日は、朝からときめきっぱなしのサプライズが続いてはいた。ホワイトデーだからと、俺への気持ちを伝えたいからと。
受け止めきれないくらいの嬉しい愛の言葉に、真心たっぷりの手作りお菓子。もう大満足だ、と油断していたらこれだ。まさか、とびきりのが最後に待っていたなんて。
「ええ」
短く答え、頷いた彼が、柔らかい目元にサラリとかかっている白く艷やかな髪を耳へと流す。その仕草だけでも心臓が跳ねてしまうのに……夜の彼は相変わらず無防備だ。
白いシャツの襟元は、いつも以上に緩んでいる。浮き上がった色っぽい鎖骨のラインはバッチリ見えちゃってるし。盛り上がった胸板による谷間までお披露目しちゃってるという、大サービスっぷりだ。
……ズルい。ズル過ぎる。カッコよくて、えっちなんて。
あふれっぱなしな大人の男の色気にやられ、すでにちょっぴりもじもじしてしまっている俺の状態なんて、彼は知る由もない。
だから、スマートにやってのけるんだろう。俺の手を取り、繋ぎ、上目遣いで手の甲に口づけるなんてカッコいいことを。
「以前から、貴方様が私によく仰って下さったでしょう? ですから、今宵は私がお返しをさせて頂きたいのです」
「ふぇ……」
緩みまくった口と一緒に全身からも、ふにゃりと力が抜けてしまったものの。欲望に正直な俺の頭は、ちゃっかり思考を回していた。
魅力的過ぎる提案に、あれもこれもとバアルさんと一緒にしたいことが浮かんでくる。どうしよう……全っ然、一つに絞れる気がしないんだが。
「ち、因みにですけど……何個まで、でしょう?」
大抵こういうのは、一つきりというのがセオリーだ。
だというのに俺は、がめつく強請ってしまっていた。そんでもって、姿勢も前のめりになってしまっていた。鮮やかな緑の瞳がきょとんと丸くなり、白い睫毛がぱちぱち瞬く。
マズい……調子に乗ってがっつき過ぎてしまった……引かれてしまったかもしれない……
じわりと滲んだ不安と後悔。だが、それらは広がりきる前にあっさり消えていくことになる。
「ふふ、いくつでも構いませんよ」
優しさの権化といっても過言ではない柔らかい微笑みと温かすぎるお言葉によって。
「……貴方様の喜びが、私の喜びでございますので」
気持ちがホッと緩んだからだろう。欲望がダダ漏れになっていく。
「じゃ、じゃあ……ぎゅってして欲しいです」
次から次へボロボロと口をついて出てしまう。いつもは心の奥にしまい込んでいて、中々さらけ出せない素直な気持ちが。
「後、いっぱいキスもして欲しいし……それから……」
頭も撫でさせて欲しいな。膝枕もしてみたい。薄っぺらい俺の膝じゃあ、あんまり居心地よくないかもしれないけどさ。
後、バアルさんのジャケット……借りてもらえたりしないかな? カッコいいから、一回羽織ってみたかったんだよなぁ。ダメ元で頼んでみようかな、折角だし。
「……成る程、今になってお気持ちが分かりました」
「お気持ち……ですか?」
細く長い指をシャープな顎に当て、ぽつりとこぼした呟き。誰のことを、何のことを言っているのか分からなくて、ついそのまま言葉をなぞって返していた。
宙を見ているような、今とは別の光景を見ているような瞳が再び俺を映し、ゆるりと細められる。
「ええ。以前、私のお願いに対して時折意外そうな表情をなされたり、物足りなさそうに可愛らしい眉をしかめていた、貴方様のお気持ちが」
ああ、成る程。ようやく、彼の言いたいことが分かった。そんなことでいいんですか? ってことか。いつもしているし、してもらっていることだから。
「ふふ、俺も分かりました。バアルさんの気持ち」
「……? 私の、でございますか?」
「はい。俺も……こういう時くらい、もっと特別なことをお願いしてくれてもいいのにって思ってました。だけど……『そんなこと』じゃないくらい、つい頼んじゃうくらい好きなこと、だったんですね」
今まで俺にしてくれた意外なお願い。頭を撫でて欲しいとか、呼び捨てで呼んで欲しいとか。
その時は、遠慮しないでいいのになって思っちゃってたけど。バアルさんにとっては十分特別で、嬉しいことだったんだな。そう、思ってくれていたんだな。
「ふむ……ということは、アオイ様もそれほどまでに好きだと、そう捉えて宜しいのですね?」
「へ?」
「……私に、抱き締められることが、口づけられることが大変好きだと……そう捉えて宜しいのでしょう?」
「あ……」
気づかないうちに、あれよあれよと掘ってしまっていた。見事な墓穴を。
ここまで言っておいて、違うだなんて言える訳がない。かといって、彼を納得させるぐらいに完璧な言い訳を思いつくハズもない。無い無い尽くしだ。
「……アオイ様?」
ダメ押しだった。俯くことで逸していた視線を、顎を優しく持ち上げられて、合わされる。じっと俺を見つめてくる、喜びと期待に満ちた眼差し。宝石よりも美しい……煌めく緑の輝きに、俺は素直に降参した。
「ひゃ、ひゃい……そうでふ……」
頷く俺を見て、バアルさんが笑みを深くする。上機嫌に揺れていた触覚はますます弾むように揺れ、はためく透き通った羽もぶわりと広がっていく。大変ご満悦そうだ。
嬉しそうなのは何よりだ。何よりなんだが、恥ずかしい。今さらになってじわじわ込み上げてきたものが、俺の顔を熱く染めていく。火が出てしまいそうだ。
「ならば、お任せ下さい。全身全霊を持ってそのお願い、お応え致しましょう」
胸に手を当て会釈し、彼が宣言する。紡いだ低音には、心なしか力がこもっているように感じた。どうやら、いつものお世話大好きスイッチではなく、別のスイッチが入ってしまったみたいだ。
……今更だけど、とんでもないことを頼んでしまったのかもしれない。この先、俺の心臓はもつのだろうか……
八割以上の期待とちょっぴりの不安を抱きつつ、彼の首に腕を回した。
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