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見覚えしかない高貴な彫像
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お昼時を過ぎ、少し日が低くなったものの大通りの賑わいは変わらない。老若男女、顔面偏差値激高な悪魔の皆さん方が行き交い、色とりどりな屋台屋根の下からは「いらっしゃい!」「毎度あり!」と商いの声が飛び交っている。
雄々しいものあれば、可愛らしいものもある快活な呼び声。かけられるのは、俺達も例外ではなく。
「そこの仲良しそうなお兄さん方! 一つ見ていってくれないかい?」
いかにも職人顔なお兄さんに、おいでおいでと四本の腕で招かれてしまった。
……びっくりした。背中から生えているのかな。人の腕が。
俺も、それなりに悪魔な皆さんの見た目には、人ならざる身体的特徴には慣れてきたつもりだった。が、こちらのお兄さんみたいなタイプは初めてだ。
動物や虫、空想上の生き物っぽい特徴を持つ方々達に比べて、腕だけ隠してしまえば、普通の人間にしか……いや、よくよく見れば目も四つあるな。俺と同じ位置にあるメインの目の下、目尻の辺りに小さな瞳が。
ぱっと見、茶色の鱗にしか見えていなかった。親衛隊のサロメさんと同じかなって。爬虫類的な鱗をお持ちな方は、手や腕だけじゃなくて頬とか、目元とか、色んなところにちょこちょこ模様みたいに生えているからな。てっきりそんな感じかと。
ぼんやりしてしまっている俺に構わず、強面だけれど整った顔をしたお兄さんが再び笑顔の形で口を開く。マイペースにセールストークを始め出した。
「オレンジ色の尻尾が可愛いお兄さんには、この品なんてどうだい? きっと気に入ってくれると思うよ!」
ガッシリした背から伸びている手が、木製の板の上に並べられた商品を慎重に摘んで、俺に差し出す。
手に取るか迷っていると別の手から手を取られ、手のひらへちょこんと乗せられた。
硝子、だろうか。お土産コーナーにあるような手のひらサイズの置物は、透き通るような光沢を帯びている。
人の像だ。丁寧に削り出された彫刻のように緻密な造形に、目が離せない。美しい作りの顔が不敵に微笑む様は、まるで生きているみたいだ。真っ赤な瞳は力強く、腰まで伸ばした黒髪は繊細で美しい。
王子様のような服を纏い、指揮者のように腕を広げる様は堂々とした風格を感じた。金の装飾が施された片マントが悠々と靡いている。側頭部から生えた鋭い角、背にあるコウモリのような形をした羽が印象的で……ってあれ? この人、なんか見覚えが。
「もしかして、この像、ヨミ様ですか?」
「もしや、ヨミ様ではございませんか?」
俺の疑問とキレイにハモった弾んだ低音。俺の腰を抱きながら、覗き込むように俺の手元を見つめていたバアルさん。鮮やかな緑の瞳が、その美しい煌めきをますます強くする。
「ああ、やっぱりヨミ様がお好きなんだね。そちらのカッコいいお兄さんも、ヨミ様のファンかい?」
「はい。サタン様のファンでもございます」
胸元に手を当て、丁寧な会釈をしたバアルさんに、お兄さんの四つの瞳が輝く。いい客を見つけたって感じで。
「じゃあ、こっちもオススメだよ! ヨミ様とサタン様、我らが星と太陽の像だ!」
すかさずお兄さんがバアルさんに差し出したのは、お二人の像だった。ヨミ様とサタン様が柔らかい笑顔を浮かべ、肩を並べている。絵に描いたような仲良し親子だ。見ているだけで、胸の辺りがほっこりする。
現主と元主、尊敬して止まないお二人の像だ。お二人の右腕であるバアルさんにとっては堪らなかっただろう。大事そうに手に取ったまま、彼の懐からふわふわとひとりでに黒革の財布が顔を出す。買う気満々だ。
「此方も素晴らしいお品ですね……先程のものと此方の品を、二つずつ包んで頂けますか?」
「毎度あり!」
満面の笑みを浮かべ、胸の前で両手をモミモミするお兄さん。彼の後ろでは、残りの二本の腕が手早くかつ丁寧に梱包作業を始めていた。
スゴい。後ろに目でもついてるみた……あ、よく見ると小さな目の方が、しっかり見てるや。それでも十分スゴいけど。別々の方向を同時に見れるなんてさ。
ヨミ様の像は金貨二枚、お二人の像は金貨四枚だそう。二千円と四千円か……妥当……いや、結構な作りの良さだし、もう少し高くても売れそうだけれど。
ぼんやりヨミ様像を眺めていた俺に、おずおずとお兄さんが声をかけてきた。
雄々しいものあれば、可愛らしいものもある快活な呼び声。かけられるのは、俺達も例外ではなく。
「そこの仲良しそうなお兄さん方! 一つ見ていってくれないかい?」
いかにも職人顔なお兄さんに、おいでおいでと四本の腕で招かれてしまった。
……びっくりした。背中から生えているのかな。人の腕が。
俺も、それなりに悪魔な皆さんの見た目には、人ならざる身体的特徴には慣れてきたつもりだった。が、こちらのお兄さんみたいなタイプは初めてだ。
動物や虫、空想上の生き物っぽい特徴を持つ方々達に比べて、腕だけ隠してしまえば、普通の人間にしか……いや、よくよく見れば目も四つあるな。俺と同じ位置にあるメインの目の下、目尻の辺りに小さな瞳が。
ぱっと見、茶色の鱗にしか見えていなかった。親衛隊のサロメさんと同じかなって。爬虫類的な鱗をお持ちな方は、手や腕だけじゃなくて頬とか、目元とか、色んなところにちょこちょこ模様みたいに生えているからな。てっきりそんな感じかと。
ぼんやりしてしまっている俺に構わず、強面だけれど整った顔をしたお兄さんが再び笑顔の形で口を開く。マイペースにセールストークを始め出した。
「オレンジ色の尻尾が可愛いお兄さんには、この品なんてどうだい? きっと気に入ってくれると思うよ!」
ガッシリした背から伸びている手が、木製の板の上に並べられた商品を慎重に摘んで、俺に差し出す。
手に取るか迷っていると別の手から手を取られ、手のひらへちょこんと乗せられた。
硝子、だろうか。お土産コーナーにあるような手のひらサイズの置物は、透き通るような光沢を帯びている。
人の像だ。丁寧に削り出された彫刻のように緻密な造形に、目が離せない。美しい作りの顔が不敵に微笑む様は、まるで生きているみたいだ。真っ赤な瞳は力強く、腰まで伸ばした黒髪は繊細で美しい。
王子様のような服を纏い、指揮者のように腕を広げる様は堂々とした風格を感じた。金の装飾が施された片マントが悠々と靡いている。側頭部から生えた鋭い角、背にあるコウモリのような形をした羽が印象的で……ってあれ? この人、なんか見覚えが。
「もしかして、この像、ヨミ様ですか?」
「もしや、ヨミ様ではございませんか?」
俺の疑問とキレイにハモった弾んだ低音。俺の腰を抱きながら、覗き込むように俺の手元を見つめていたバアルさん。鮮やかな緑の瞳が、その美しい煌めきをますます強くする。
「ああ、やっぱりヨミ様がお好きなんだね。そちらのカッコいいお兄さんも、ヨミ様のファンかい?」
「はい。サタン様のファンでもございます」
胸元に手を当て、丁寧な会釈をしたバアルさんに、お兄さんの四つの瞳が輝く。いい客を見つけたって感じで。
「じゃあ、こっちもオススメだよ! ヨミ様とサタン様、我らが星と太陽の像だ!」
すかさずお兄さんがバアルさんに差し出したのは、お二人の像だった。ヨミ様とサタン様が柔らかい笑顔を浮かべ、肩を並べている。絵に描いたような仲良し親子だ。見ているだけで、胸の辺りがほっこりする。
現主と元主、尊敬して止まないお二人の像だ。お二人の右腕であるバアルさんにとっては堪らなかっただろう。大事そうに手に取ったまま、彼の懐からふわふわとひとりでに黒革の財布が顔を出す。買う気満々だ。
「此方も素晴らしいお品ですね……先程のものと此方の品を、二つずつ包んで頂けますか?」
「毎度あり!」
満面の笑みを浮かべ、胸の前で両手をモミモミするお兄さん。彼の後ろでは、残りの二本の腕が手早くかつ丁寧に梱包作業を始めていた。
スゴい。後ろに目でもついてるみた……あ、よく見ると小さな目の方が、しっかり見てるや。それでも十分スゴいけど。別々の方向を同時に見れるなんてさ。
ヨミ様の像は金貨二枚、お二人の像は金貨四枚だそう。二千円と四千円か……妥当……いや、結構な作りの良さだし、もう少し高くても売れそうだけれど。
ぼんやりヨミ様像を眺めていた俺に、おずおずとお兄さんが声をかけてきた。
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