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とある死神の師匠と弟子は、ようやく赦されたような気がした
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決壊したのは、玄関のドアを閉じてすぐだった。
「うぇっ……っ……」
俺の手を握っている、小さな手に力がこもる。華奢な肩が小刻みに震え出す。丸い薄紫の瞳が揺れて、ぶわりと透明な雫があふれ出す。
絶え間なく、ボロボロとこぼれ落ちていく大粒の涙。丸い頬を伝いこぼれた熱が、濃い灰色のフードマントに滲んでいく。
視界の下で震える小さな頭を撫でながら、ぼんやり思う。今晩は、もう止まらないかもしれないなと。それもいいだろう。仕方がない。
なんせ、立ち会えたのだから。そして、もうすぐ見届けられるのだから。
……ずっと祈っていた。
グリムと二人で、あの方の幸せを。
取り返しのつかないことをしてしまった俺達を、赦してくれたアオイ様。どうかこの先、彼が笑顔にあふれた日々を送れますようにと。穏やかな気持ちで、健やかに過ごせますようにと。
そうして今晩、俺達の祈りが届いた気がしたのだ。
アオイ様とバアル様、お二人が身に着けていた魔力の花。誰かを心の底から愛することでしか、生み出すことが出来ない不思議な花。
それを互いに贈り合ったお二人が、幸せそうに微笑んで報告してくれたのだ。「結婚します」と。
俺達に言ってくれたのだ。「証人になって欲しい」と。その時だった。皆が泣き、喜ぶ中、俺は。
赦されたような気がしていたのだ。ようやく、本当の意味で。
だから多分、彼もだろう。グリムも俺と同じような気持ちで、微笑み合うお二人を見ていたんだろう。
とはいえ、祝の席だ。泣いてばかりでは、優しいお二人に、ヨミ様達にも心配をかけてしまう。心から楽しんでいただけなくなってしまう。
だから思いっきり笑って、いっぱい食べて、飲んで。そうして、安心したんだろう。我が家に帰り着いた途端、突っ張っていた何かが切れてしまったんだろう。
優しく手を離し、涙に暮れるグリムの前に、しゃがみ込む。弾かれたように顔を上げた彼は、戸惑っているようだった。もしかしたら、自分が何で泣いているのか、分かっていないのかもしれない。
「……ほら、グリム」
あの時のように両腕を広げれば、勢いよく飛び込んできた。胸元と腹部を襲った衝撃に反射的に、ぐえっと息が漏れてしまう。痛くはないが。これっぽっちも。
「っ……僕、嬉しいんです……ひぐ……楽しかったんです……」
やっぱりか。
俺の背中に細い両腕を回してしがみつきながら「嬉しいのに、何で?」と声を震わせている。
「分かってるよ……俺も同じだ」
「クロウも……同じ? 僕と……」
撫でていた頭が、おずおずと上がる。濡れた薄紫色の睫毛を瞬かせ、小さな手のひらを俺の頬へと伸ばしてくる。
分かってはいた。ぷつんと切れたのは、俺もだと。拭ったところで、止まることはないんだろうとも。
視界を滲ませ、頬を濡らし続けている熱に、細い指がそっと触れた。
「ほんと、ですね……気づかなかった……クロウも、泣いていたんですね……」
「……ああ。気持ちは、嬉しくて堪らないけどな」
口の端を持ち上げて見せると、丸くなっていた瞳がますます丸くなった。
「だからほら、グリムも好きなだけ泣いちまえ。とことん付き合ってやる。俺の胸くらいなら、いくらでも貸してやるからよ」
こつんと額をくっつける。温かい。子供じみた体温が、じわりと伝わってくる。何となく、心音も。
潤んで煌めく薄紫が、ますます涙の膜に覆われていく。透明な液体越しに、キラキラと揺らめいている。
綺麗だな、と。場違いなことを考えてしまっていた。
「クロウ……くろ、う……うわぁぁぁんっ」
堰を切ったようだった。
その泣きっぷりは、生まれたての赤子のよう。大きく口を開け、あらん限りの声を上げ、感情をあふれさせている。と同時に細い腕が勢いよく首に絡んで、肩に重みが。胸を貸すつもりだったんだが。
ああ、いや……俺のせいか。つい見惚れてしまっていた、俺の。
細い背を抱きながら、柔らかい髪を梳くように撫で続ける。触り心地がいいからだろうか。不思議と気持ちが緩んでいく。大音量な泣き声が耳元で、絶えず響いているにも関わらず。
「うぇっ……っ……」
俺の手を握っている、小さな手に力がこもる。華奢な肩が小刻みに震え出す。丸い薄紫の瞳が揺れて、ぶわりと透明な雫があふれ出す。
絶え間なく、ボロボロとこぼれ落ちていく大粒の涙。丸い頬を伝いこぼれた熱が、濃い灰色のフードマントに滲んでいく。
視界の下で震える小さな頭を撫でながら、ぼんやり思う。今晩は、もう止まらないかもしれないなと。それもいいだろう。仕方がない。
なんせ、立ち会えたのだから。そして、もうすぐ見届けられるのだから。
……ずっと祈っていた。
グリムと二人で、あの方の幸せを。
取り返しのつかないことをしてしまった俺達を、赦してくれたアオイ様。どうかこの先、彼が笑顔にあふれた日々を送れますようにと。穏やかな気持ちで、健やかに過ごせますようにと。
そうして今晩、俺達の祈りが届いた気がしたのだ。
アオイ様とバアル様、お二人が身に着けていた魔力の花。誰かを心の底から愛することでしか、生み出すことが出来ない不思議な花。
それを互いに贈り合ったお二人が、幸せそうに微笑んで報告してくれたのだ。「結婚します」と。
俺達に言ってくれたのだ。「証人になって欲しい」と。その時だった。皆が泣き、喜ぶ中、俺は。
赦されたような気がしていたのだ。ようやく、本当の意味で。
だから多分、彼もだろう。グリムも俺と同じような気持ちで、微笑み合うお二人を見ていたんだろう。
とはいえ、祝の席だ。泣いてばかりでは、優しいお二人に、ヨミ様達にも心配をかけてしまう。心から楽しんでいただけなくなってしまう。
だから思いっきり笑って、いっぱい食べて、飲んで。そうして、安心したんだろう。我が家に帰り着いた途端、突っ張っていた何かが切れてしまったんだろう。
優しく手を離し、涙に暮れるグリムの前に、しゃがみ込む。弾かれたように顔を上げた彼は、戸惑っているようだった。もしかしたら、自分が何で泣いているのか、分かっていないのかもしれない。
「……ほら、グリム」
あの時のように両腕を広げれば、勢いよく飛び込んできた。胸元と腹部を襲った衝撃に反射的に、ぐえっと息が漏れてしまう。痛くはないが。これっぽっちも。
「っ……僕、嬉しいんです……ひぐ……楽しかったんです……」
やっぱりか。
俺の背中に細い両腕を回してしがみつきながら「嬉しいのに、何で?」と声を震わせている。
「分かってるよ……俺も同じだ」
「クロウも……同じ? 僕と……」
撫でていた頭が、おずおずと上がる。濡れた薄紫色の睫毛を瞬かせ、小さな手のひらを俺の頬へと伸ばしてくる。
分かってはいた。ぷつんと切れたのは、俺もだと。拭ったところで、止まることはないんだろうとも。
視界を滲ませ、頬を濡らし続けている熱に、細い指がそっと触れた。
「ほんと、ですね……気づかなかった……クロウも、泣いていたんですね……」
「……ああ。気持ちは、嬉しくて堪らないけどな」
口の端を持ち上げて見せると、丸くなっていた瞳がますます丸くなった。
「だからほら、グリムも好きなだけ泣いちまえ。とことん付き合ってやる。俺の胸くらいなら、いくらでも貸してやるからよ」
こつんと額をくっつける。温かい。子供じみた体温が、じわりと伝わってくる。何となく、心音も。
潤んで煌めく薄紫が、ますます涙の膜に覆われていく。透明な液体越しに、キラキラと揺らめいている。
綺麗だな、と。場違いなことを考えてしまっていた。
「クロウ……くろ、う……うわぁぁぁんっ」
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ああ、いや……俺のせいか。つい見惚れてしまっていた、俺の。
細い背を抱きながら、柔らかい髪を梳くように撫で続ける。触り心地がいいからだろうか。不思議と気持ちが緩んでいく。大音量な泣き声が耳元で、絶えず響いているにも関わらず。
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