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幾人もの願いが込められた、魔力の結晶
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背に回されていた腕の力が緩んでいく。大きな手から肩を優しく掴まれて、穏やかな低音に強請られた。
「アオイ……お顔を見せて下さい」
本来ならば、情けのない顔なんて見せたくはない。とびきりの笑顔で応えたい。
けれども頬を濡らす涙が止まることはない。それに俺だって見たいのだ。大好きな彼の顔を。あの日だまりのように優しい笑顔を。
「バアルさ……っ」
ボヤケた視界の中でも、鮮やかな緑の瞳は煌めいて見えた。
いくつもの光の粒を閉じ込めたように美しく、優しい眼差し。微笑む彼の双眸に映れていることに胸がいっぱいになってしまう。ますます目の奥が熱くなってしまう。
細く長い指先が俺の目元を拭ってくれた。それでも泣き止まない俺を宥めるように、バアルさんは濡れた頬に口づけてくれた。
「申し訳ございません……大変心細い思いをさせてしまいましたね……もう大丈夫ですよ……もう二度と、貴方様のお側を離れたりは致しません……」
「ひっぐ……う、ぇ……ホントに? ……一緒に……っ……来て、くれるん……ですか?」
「ええ。言ったでしょう? 私と共にヨミ様を連れ帰りましょうと」
温かい手のひらが俺の頬を包み込むように添えられる。俺がうつしてしまったんだろうか。凛々しい眉をひそめる彼の瞳は透明な水の膜に包まれていた。
何かを堪えるように目元に刻まれたシワが深くなって、あふれた雫が白い頬を静かに伝う。彼の声は震えていた。俺の頬に触れる手も。
「あの時は……諦めてしまって、申し訳ございませんでした……貴方様のことも、ヨミ様のことも……」
「そんな……俺だって……」
俺だって、諦めちゃっていたのに。有無を言わせずに一人で勝手に決めちゃっていたのに。
言葉にする前に遮られた。人差し指にちょこんと口をつつかれて。柔らかく微笑んだ彼がゆっくりと首を横に振った。謝る必要はないんだと。
「もう、決して諦めは致しません。教えて頂きましたので……私達だけではないのだと……」
俺の頬をひと撫でしてから、バアルさんが一歩、後ろへと離れていく。ゆるりと差し出した手のひらの上に、どこからともなく現れたのは、俺が手にしているものと同じ煌き。魔力の結晶だった。
「私達の儀式を見守ってくれていた皆様が、声を上げてくれたのです……どうにか貴方様のお力添えが出来ないのかと……どうにかヨミ様をお助け出来ないのかと……」
形もやはり同じで、ガーベラと似ている。けれども、大きさと輝きは桁違い。逞しい彼の胸元を覆い隠すほどの結晶が浮かんでいる。絶えず温かな光を放ち、数多の色に移り変わっている。
一体、どれだけの方が……ご自身の命を、魔力を分けてくれたのだろうか。どれだけの方の願いが込められているのだろうか。
収まりかけていた、視界を滲ませる熱がぶり返してしまう。長い腕を伸ばし、また俺の目元を拭ってくれながらバアルさんが尋ねた。
「そちらの魔力の結晶は……レタリー殿とグリムさん達から、でしょうか?」
俺が胸元に両手でしっかりと握っていた結晶。黄緑、薄紫、金に赤、青と煌めく度に色が移り変わっていく、花の形をした結晶。
皆さんの大事な魔力によって形作られた結晶を、鮮やかな緑の瞳が見つめている。
「はい……レタリーさんとグリムさんとクロウさんが……それから、グリムさんの同僚の方達が分けてくれたものも。それで俺、レタリーさんに、ヨミ様の居る所に連れて行ってもらおうと……」
「左様でございましたか……レタリー殿も無茶をなさいますね……」
「え……?」
困ったように微笑んでいた眼差しが俺の後ろを見つめた。
振り向けば笑顔で泣いているグリムさん、安心したように微笑む瞳に涙を浮かべたクロウさん。そして、背筋を伸ばして佇むレタリーさんが居た。
「アオイ……お顔を見せて下さい」
本来ならば、情けのない顔なんて見せたくはない。とびきりの笑顔で応えたい。
けれども頬を濡らす涙が止まることはない。それに俺だって見たいのだ。大好きな彼の顔を。あの日だまりのように優しい笑顔を。
「バアルさ……っ」
ボヤケた視界の中でも、鮮やかな緑の瞳は煌めいて見えた。
いくつもの光の粒を閉じ込めたように美しく、優しい眼差し。微笑む彼の双眸に映れていることに胸がいっぱいになってしまう。ますます目の奥が熱くなってしまう。
細く長い指先が俺の目元を拭ってくれた。それでも泣き止まない俺を宥めるように、バアルさんは濡れた頬に口づけてくれた。
「申し訳ございません……大変心細い思いをさせてしまいましたね……もう大丈夫ですよ……もう二度と、貴方様のお側を離れたりは致しません……」
「ひっぐ……う、ぇ……ホントに? ……一緒に……っ……来て、くれるん……ですか?」
「ええ。言ったでしょう? 私と共にヨミ様を連れ帰りましょうと」
温かい手のひらが俺の頬を包み込むように添えられる。俺がうつしてしまったんだろうか。凛々しい眉をひそめる彼の瞳は透明な水の膜に包まれていた。
何かを堪えるように目元に刻まれたシワが深くなって、あふれた雫が白い頬を静かに伝う。彼の声は震えていた。俺の頬に触れる手も。
「あの時は……諦めてしまって、申し訳ございませんでした……貴方様のことも、ヨミ様のことも……」
「そんな……俺だって……」
俺だって、諦めちゃっていたのに。有無を言わせずに一人で勝手に決めちゃっていたのに。
言葉にする前に遮られた。人差し指にちょこんと口をつつかれて。柔らかく微笑んだ彼がゆっくりと首を横に振った。謝る必要はないんだと。
「もう、決して諦めは致しません。教えて頂きましたので……私達だけではないのだと……」
俺の頬をひと撫でしてから、バアルさんが一歩、後ろへと離れていく。ゆるりと差し出した手のひらの上に、どこからともなく現れたのは、俺が手にしているものと同じ煌き。魔力の結晶だった。
「私達の儀式を見守ってくれていた皆様が、声を上げてくれたのです……どうにか貴方様のお力添えが出来ないのかと……どうにかヨミ様をお助け出来ないのかと……」
形もやはり同じで、ガーベラと似ている。けれども、大きさと輝きは桁違い。逞しい彼の胸元を覆い隠すほどの結晶が浮かんでいる。絶えず温かな光を放ち、数多の色に移り変わっている。
一体、どれだけの方が……ご自身の命を、魔力を分けてくれたのだろうか。どれだけの方の願いが込められているのだろうか。
収まりかけていた、視界を滲ませる熱がぶり返してしまう。長い腕を伸ばし、また俺の目元を拭ってくれながらバアルさんが尋ねた。
「そちらの魔力の結晶は……レタリー殿とグリムさん達から、でしょうか?」
俺が胸元に両手でしっかりと握っていた結晶。黄緑、薄紫、金に赤、青と煌めく度に色が移り変わっていく、花の形をした結晶。
皆さんの大事な魔力によって形作られた結晶を、鮮やかな緑の瞳が見つめている。
「はい……レタリーさんとグリムさんとクロウさんが……それから、グリムさんの同僚の方達が分けてくれたものも。それで俺、レタリーさんに、ヨミ様の居る所に連れて行ってもらおうと……」
「左様でございましたか……レタリー殿も無茶をなさいますね……」
「え……?」
困ったように微笑んでいた眼差しが俺の後ろを見つめた。
振り向けば笑顔で泣いているグリムさん、安心したように微笑む瞳に涙を浮かべたクロウさん。そして、背筋を伸ばして佇むレタリーさんが居た。
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