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ただ単に砕けなければよい、という訳にはいかないでしょう?
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三人で抱き合いながら思いっきり泣いて、泣き疲れた頃には皆ぐしゃぐしゃ。みんな鼻は真っ赤っ赤になっちゃったし、バアルさんのお髭もしっとり縮んじゃっていた。
お互いの泣き腫らした顔が妙にツボったのか、この状況下が無性におかしくなったのか。ほとんど同時に吹き出して、笑っていた。笑い過ぎてまた涙が出てしまった。
笑いも収まって、ようやく落ち着きを取り戻した頃。俺達の前に柔らかい輝きが、光で形作られた巨大な人影が現れた。ヨミ様やサタン様と、どこか似た雰囲気を纏いながら。
「神様……」
バアルさんにそっくりの瞳が、俺達を優しく見つめている。嬉しそうに微笑んでいる。
「良かった……ヨミ……私の愛しい子よ……やっと自分の幸せを選んでくれましたね……これでもう、心残りはありません……」
「一体どういう意味だ? 心残りがない、とは……」
長い指で目元を拭いながら眉間にシワを寄せたヨミ様の質問に、神様は緩やかに口角を上げただけ。優しい微笑みだった。でも、何だか寂しそうに見えたような。
「アオイ、バアル……貴方達に心より感謝を……ヨミを説得してくれて、皆の想いを運んできてくれてありがとうございます」
「あ……いえ、俺達がしたくてやったことですから……俺もバアルさんも、皆さんも……ヨミ様が居なくなっちゃうなんて考えられないんで」
「ええ、全く持って考えられません」
求める間もなく隣から同意の声が上がって、繋いだ手に力が込められる。少し遅れて反対の手も。震える指が、ヨミ様が、俺とバアルさんの手を握り返してくれた。
神様は、ちょっとだけ驚いていた。でもすぐに柔らかい笑みを浮かべて、小さく頷いた。
「本当に、私としたことが……見誤っていました……いつまでも貴方達は、か弱いものだとばかり……こんなにも強く、優しく、育っていたのですね……」
噛み締めているように言葉を切って、俯いた顔をゆるゆると振って、神様は再び俺達を見つめた。その瞳は少し滲んでいたけれど、凛とした輝きが宿っていた。
「これだけの魔力があれば、アオイの生命力は半分ほどで事足りるでしょう。器が砕ける心配もありません……」
「器が、砕けない……」
信じてはいた。皆さんから頂いた魔力があれば、何とかなるハズだって。
信じてはいた。バアルさんさえ側に居てくれたら、一緒だったら、どんな困難だって乗り越えられるって。奇跡だって起こすことが出来るって。
でも、追いつかない。
多分、まだ心の隅っこの方では、覚悟していたんだ。諦めないって言い聞かせていたけれど、ヨミ様の為ならって。バアルさん達の、皆さんの為ならって。
「バアルさん……ヨミ様……俺……」
「ええ、アオイ……帰れるのですよ……三人で……っ」
「良かった……本当に、良かった……我らが民達には、感謝してもしたりぬな……っ」
また少し、嬉し涙でぐしゃぐしゃになっていた二人に左右から抱き締められて、ようやくだった。安堵が、喜びが、血が巡るように全身に広がっていく。
ずっと張り詰めていた気が抜けたんだろう。力が抜けて倒れかけていた俺を、二人がしっかり抱き支えてくれた。
手放しで喜んでいた俺達を、神様は複雑な顔で見つめていた。そのことに最初に気がついたのは、やっぱりバアルさんだった。
「……我らが神よ……もしや……まだ何か、問題があるのでしょうか?」
「ええ……ただ単に砕けなければよい、という訳にはいかないでしょう?」
問われても、俺には何のことだか。
ただ、熱が引いていくのは分かった。背筋が薄ら寒くなるほどに。指先が勝手に震え出すほどに。
「アオイが今までのように、貴方達と心穏やかに暮らせなければ……」
憂いを帯びた声で付け加えられ、バアルさんとヨミ様は察したようだった。どこか確信を持ったように瞳を鋭く細めてヨミ様が尋ねた。
「……健康被害……要は何かしらの後遺症が残る、ということか?」
「はい……可能性は多いにあります。せめて、ほとんど影響を受けないであろう範囲に……三分の一、いえ、十分の一程度に収めなければ……」
「っ……じゃあ、後……今の十倍は……魔力を集めないといけないってことですか?」
ぬか喜びとはこのことだ。
皆さんが限界まで魔力を分けてくれたというのに。三人で無事に帰れると思ったのに。この国を脅かしている穢れの問題も解決出来ると思っていたのに。全部が上手くいくと思っていたのに。
手足の一、二本不自由になるくらいなら、まだマシだ。イヤだけれども。
でも……もしも、万が一寝たきりになってしまったら? それどころか、植物状態になってしまったら?
そんなの、意味がないじゃないか。身体が無事でも、生き残れても……どんな影響が出るのか、分からないんだったら。
お互いの泣き腫らした顔が妙にツボったのか、この状況下が無性におかしくなったのか。ほとんど同時に吹き出して、笑っていた。笑い過ぎてまた涙が出てしまった。
笑いも収まって、ようやく落ち着きを取り戻した頃。俺達の前に柔らかい輝きが、光で形作られた巨大な人影が現れた。ヨミ様やサタン様と、どこか似た雰囲気を纏いながら。
「神様……」
バアルさんにそっくりの瞳が、俺達を優しく見つめている。嬉しそうに微笑んでいる。
「良かった……ヨミ……私の愛しい子よ……やっと自分の幸せを選んでくれましたね……これでもう、心残りはありません……」
「一体どういう意味だ? 心残りがない、とは……」
長い指で目元を拭いながら眉間にシワを寄せたヨミ様の質問に、神様は緩やかに口角を上げただけ。優しい微笑みだった。でも、何だか寂しそうに見えたような。
「アオイ、バアル……貴方達に心より感謝を……ヨミを説得してくれて、皆の想いを運んできてくれてありがとうございます」
「あ……いえ、俺達がしたくてやったことですから……俺もバアルさんも、皆さんも……ヨミ様が居なくなっちゃうなんて考えられないんで」
「ええ、全く持って考えられません」
求める間もなく隣から同意の声が上がって、繋いだ手に力が込められる。少し遅れて反対の手も。震える指が、ヨミ様が、俺とバアルさんの手を握り返してくれた。
神様は、ちょっとだけ驚いていた。でもすぐに柔らかい笑みを浮かべて、小さく頷いた。
「本当に、私としたことが……見誤っていました……いつまでも貴方達は、か弱いものだとばかり……こんなにも強く、優しく、育っていたのですね……」
噛み締めているように言葉を切って、俯いた顔をゆるゆると振って、神様は再び俺達を見つめた。その瞳は少し滲んでいたけれど、凛とした輝きが宿っていた。
「これだけの魔力があれば、アオイの生命力は半分ほどで事足りるでしょう。器が砕ける心配もありません……」
「器が、砕けない……」
信じてはいた。皆さんから頂いた魔力があれば、何とかなるハズだって。
信じてはいた。バアルさんさえ側に居てくれたら、一緒だったら、どんな困難だって乗り越えられるって。奇跡だって起こすことが出来るって。
でも、追いつかない。
多分、まだ心の隅っこの方では、覚悟していたんだ。諦めないって言い聞かせていたけれど、ヨミ様の為ならって。バアルさん達の、皆さんの為ならって。
「バアルさん……ヨミ様……俺……」
「ええ、アオイ……帰れるのですよ……三人で……っ」
「良かった……本当に、良かった……我らが民達には、感謝してもしたりぬな……っ」
また少し、嬉し涙でぐしゃぐしゃになっていた二人に左右から抱き締められて、ようやくだった。安堵が、喜びが、血が巡るように全身に広がっていく。
ずっと張り詰めていた気が抜けたんだろう。力が抜けて倒れかけていた俺を、二人がしっかり抱き支えてくれた。
手放しで喜んでいた俺達を、神様は複雑な顔で見つめていた。そのことに最初に気がついたのは、やっぱりバアルさんだった。
「……我らが神よ……もしや……まだ何か、問題があるのでしょうか?」
「ええ……ただ単に砕けなければよい、という訳にはいかないでしょう?」
問われても、俺には何のことだか。
ただ、熱が引いていくのは分かった。背筋が薄ら寒くなるほどに。指先が勝手に震え出すほどに。
「アオイが今までのように、貴方達と心穏やかに暮らせなければ……」
憂いを帯びた声で付け加えられ、バアルさんとヨミ様は察したようだった。どこか確信を持ったように瞳を鋭く細めてヨミ様が尋ねた。
「……健康被害……要は何かしらの後遺症が残る、ということか?」
「はい……可能性は多いにあります。せめて、ほとんど影響を受けないであろう範囲に……三分の一、いえ、十分の一程度に収めなければ……」
「っ……じゃあ、後……今の十倍は……魔力を集めないといけないってことですか?」
ぬか喜びとはこのことだ。
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手足の一、二本不自由になるくらいなら、まだマシだ。イヤだけれども。
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