【完結】間違って地獄に落とされましたが、俺は幸せです。

白井のわ

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【新婚旅行編】一日目:目の前に広がっているのは、絵本や映画などでしか見る機会のなかった光景

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 目が追いつかない。じっくり眺めていたいんだけれども。

 俺達のすぐ横を、真上を、縦横無尽に泳ぎ回っている魚達。角のように細く伸びた背ヒレを揺らめかせながら、たった今、目の前を横切っていったのは水族館で見たことのある黄色と白と黒の縞模様。アゲハチョウを思わせるようなカラーリングの魚だ。名前は……えっと、何だったっけ。

 思い出そうとしている内に、今度は別の色へと目移りしてしまう。大きな岩を覆い尽くすように生えている、クリーム色をしたイソギンチャクから顔を覗かせている鮮やかなオレンジ。こっちは分かる。クマノミだ。

 ひょっこりと出てきたかと思えば、素早く引っ込む。そしてまた、様子見をしているかのようにひょっこりと。その可愛らしい仕草を目で愛でている最中、視界の端に映ったのは目立つ赤。

 またしても、名前の知らない魚だ。そもそも、赤い魚と言えばで浮かぶのは、鯛くらいな知識の無さだ。分かる訳がなかったな。

 開き直った俺は、ただただ目の前に広がっている景色を楽しむことに。

 ダイビングの経験がなかった俺にとって目の前に広がっているのは、絵本や映画などでしか見る機会のなかった光景。海という、人間にとっては過酷過ぎる環境に適応出来ている者達だけの楽園は、少し泳げば竜宮城でも見つけられそうな雰囲気だ。

 美しく、幻想的なそれに貢献しているのは、やはり魚達。透き通った海の色に負けないくらいに真っ青だったり、白と黒のまだら模様だったり。はたまた銀色に輝いていたり、渦を巻くような模様を持っていたりと、とにかく多種多様でカラフルだ。

 流石、南国って感じだな。何で、こんなにカラフルなのかは分からないけど。

『そちらに関しては、いくつかの説があるらしいですね』

 聞き慣れた穏やかな低音が頭の中で響く。反射的に横を向けば、隣で立ち泳ぎをしていたバアルさんが彫りの深い顔を綻ばせた。

 そういえば、繋がっていたんだった。俺の考えたことが筒抜けになっているんだった。

 俺の頭は本日も絶好調。何かに夢中になってしまえば、ところてん方式で抜けていってしまう。ついさっき、説明してもらったばかりにも関わらず。残念なことに。

 ふと、俺の周囲の海水が揺らめいた。腕が伸びてきていた。バアルさんの腕が、くっきりと浮き出た筋肉のラインに青い陰影をつけた長い腕が、俺の顔に向かって。

 周りの温度がひんやりと涼しいからか、頬に触れた手のひらの温度が少し温い。けれども、俺に直接囁いてくる言葉は。

『大丈夫、可愛かったですよ。美しい魚を見て、目を輝かせているアオイのお顔は……』
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