【完結】間違って地獄に落とされましたが、俺は幸せです。

白井のわ

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【新婚旅行編】一日目:バアル先生による豆知識講座、南の海編

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 ……だったら、大丈夫か。

 自分のポンコツ具合にうんざりしていた気分は、あっさりと。海面へと上がっていく泡のように弾けて消えていく。

 バアルさんが笑顔でいてくれるのであれば、何でもオールオッケーになってしまう俺だ。一発だった。柔らかく微笑みかけてもらえながら、大きな手からよしよしと頬を甘やかされてしまえば。

 ……ところで、バアルさんが教えてくれようとしていた、いくつかの説って?

 気分は絶賛右肩上がりとはいえ、胸の内に甘く漂う擽ったさは消えない。そんなもんだから、話題を変えたくなってしまった。バアルさんは、すぐに乗ってくれた。

『私めも、現世の知識を聞き齧った程度ではございますが……では、周りを見て下さい』

 そうして始まった、バアル先生による豆知識講座、南の海編。

 引き締まった腕に促されて見渡してみても、目を奪われるのは、いかにも南の海らしい豊かな彩りばかり。優雅に泳ぐ魚達だけでなく、漂う海藻やサンゴまで様々な色で色づいている。色鉛筆にある色を、全種類使ってやると意気込んだかのようだ。

 キレイな景色と、魚の色や模様に何の関係が……ん? 待てよ……もしかして、保護色ってことか? 天敵から身を守る為の。

『はい、ご推察の通りでございます。色鮮やかな海藻や、サンゴにイソギンチャク。それらと色を合わせることで、より身を隠しやすくし生存率を高めているのでは、と』

 分かっている状態で、改めて魚とサンゴとを見比べてみれば確かに。お互いにカラフルだから、遠目で見れば見るほど一体化して見えるというか。

『他には、紫外線や海水の温度が関係している、という説もあるとのことです』

 紫外線や温度……か。温度に関しては、他の海より温かいからかなって分かるけれども。紫外線に関しては、少しもピンとも。

 考えることを放棄して、早くも先生に答えの催促を。青い光に染まっても鮮やかな、緑の瞳を見つめてしまっていると、笑みを滲ませた声が頭の中で尋ねてきた。

『では、アオイ……黒と白とでは、どちらがより光を吸収しやすいと思いますか?』

 なんか、聞いたことがある気がする。そういう実験? みたいなのも、昔やったことがあるような。どっちだったっけ? イメージ的には白の方が反射しやすそうに思えるんだけど。

『合っておりますよ。白は光を反射し、黒は光を吸収します。紫外線においても変わりません。明るい色の方が、暗い色よりも光や紫外線を吸収しにくいのです』

 そこで繋がった。見ているだけで楽しい気持ちになる魚達の配色と、紫外線とが。

 良く出来ましたと言わんばかりに微笑みながら、頭を撫でてくれるバアルさん。心なしか柔らかさを増した声が、補足説明をしてくれた。

『現世において、暖かい地域は紫外線が強うございます。ですので、必要以上に取り込んでしまわぬよう体色や模様を明るくすることで、身を守っておられるとか』

 色彩豊かな景色を眺めながら、バアルさんは続ける。

『温かいと代謝がよくなりますよね? それは、魚にも言えることでございまして。温かい水温によって代謝が活性化することにより、鮮やかな体色になりやすいとも言われているとのことでございます』

 相変わらず分かりやすい。スッと頭に入ってくる。感心のあまり拍手を送ろうとしたが、音の届かない海中の中では意味がなかった。でも、動作だけで伝わったらしい。

 片方の口端を緩やかに持ち上げて、胸に手を当て角度のついたお辞儀を披露してくれた。少しの間の後に『ご清聴頂き、ありがとうございます』と締めくくった彼の声にも、喜びが滲んでいたんだ。
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