【完結】間違って地獄に落とされましたが、俺は幸せです。

白井のわ

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【新婚旅行編】五日目:俺の好きにさせてくれるってこと、だよね?

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 意外にも目覚めは良かった。

 昨日はお散歩に、皆さんへのご挨拶回りに、見応え抜群なショーを観覧。お土産選びに、ドラゴンさんの背に乗せてもらってからの空中遊泳と思いっきりパークを楽しんだ。ホテルに帰って夕食とお風呂を済ませてからも、バアルさんと二人っきりの時間を満喫した。

 だから、朝寝坊は確定的だと思っていたんだけれども。起きた時には、もう朝食が昼食になってしまうであろう時間帯を迎えてしまっていると思っていたんだけれども。

 遠目に見えている、カーテンの隙間からの景色はまだそんなに明るくなってはいない。今日の天気も快晴とのことだったから、曇り空だからって可能性はないだろう。ということは、珍しく早起き出来たという訳だ。時計がないから正確な時間は分からないけれどさ。

 知りたければ、ベッドサイドまだ行ければホテルに備え付けられた投影石、もとい太陽と月が仲良しこよししている彫像があるんだけれども。それに魔力を込めれば、今現在の時刻に部屋の温度や湿度と、事細かに教えてもらえるんだけれども。

「……すー……すー……」

 動けないし、動きたくないからなぁ。この腕の中から。

 枕代わりとして、引き締まった長い腕を俺に提供してくれている旦那様。バアルさんは、まだ夢の中のよう。すらりと長い背筋を丸め、俺を抱き寄せてくれながら規則正しい寝息を立てている。

 得した気分だ。早起き出来たことよりも嬉しい。バアルさんの寝顔を見られるなんて。

 最近はそれなりに見せてはくれている。とはいえ、それでも10回中2回見られるかどうか。レアなことには変わりないのだ。

 まぁ、元々俺が寝起きが悪いのに対して、バアルさんは早起きさんだからな。仕方がないっちゃあ仕方がないんだけれども。

 かけ布団の隙間からチラリと見える彼の姿は俺と同じで昨晩のまま。一糸纏わぬその姿は、凄腕の芸術家が作った彫刻みたい。流れるような筋肉のラインが、白い肌にくっきりと陰影をつくっていてカッコいい。その見た目はホントの石の彫刻みたいに硬そうだけれども、意外と柔らかいっていうのも素敵なポイントの一つだ。

 下ろしている前髪が乱れている。毎日欠かさないケアのお陰だろう。艷やかさやサラサラ加減に変わりはない。けれども、凛々しい眉や、優しい目元に、くるりとかかったり。呼吸と一緒に揺れている二本の触角みたく、ぴょいんっとはねていたり。

 キッチリとした普段の彼とは違う、俺にだけにしか見せてはいないだろう無防備な一面。大人な彼のあどけない表情を見ているだけで胸が擽ったくなってしまう。だらしなく頬が緩んでしまう。

「……ふふ、可愛いなぁ」

 つい、口まで。今更意味もないのに、慌てて手で覆う。

「……すー……すー……」

 焦る心音に紛れて聞こえてきたのは、さっきと変わらない静かな寝息。起きる気配が微塵も感じない彼の様子に、俺は手で覆ったままホッと息を吐いた。

 折角の機会なのだ。見ているだけで終わらせてしまっては勿体ないというもの。

「……失礼します」

 絶対に聞こえないであろうボリュームでひと声かけてから、口元へと手を伸ばした。どうということはないのだけれど、目的のものに触れるまではつい息を止めてしまう。

 指先に触れたお髭は、少し伸びた白いお髭はふわふわ。最初はちょんちょんと軽くつつくだけに抑えていたのだけれども、ついつい撫でてしまっていた。

「ふへへ……」

 腑抜けた笑みだってこぼれてしまう。調子に乗って頬まで撫でてしまっていた。

 透明感のある白い肌はしっとりスベスベ。ところどころに渋いシワが刻まれているのに、年齢を感じさせない撫で心地の良さだ。

 であれば、指先だけで止められる訳もなく。しっかりと両手で包み込むように添えてから、撫で回してしまっていた。手のひら全体でその美肌を楽しんでしまっていた。

 それでも銀糸のようにキレイな白くて長い睫毛は伏せられたまま。寝息以外を漏らすこともない。いつもならばこの辺で、では私も、とお返しの参戦をしてくるハズなんだけど。

 なんせバアルさんの場合、しっかり眠っちゃっていても魔力の気配というかなんというか、とにかく俺が何をやっているかくらいは分かるとのこと。なのに、なんのリアクションもないってことは?

「……俺の好きにさせてくれるってこと、だよね?」
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