751 / 1,566
【新婚旅行編】五日目:新婚さんっぽいことって?
しおりを挟む
「新婚さんっぽいこと、でございますか?」
胸元で抱き抱えていた頭がひょこりと持ち上がった。愛しい重みがますます軽くなる。ただでさえ、のしかかられているとは思えないくらいなのに。
「はい。今日はホテルでのんびりする予定でしょう?」
大なり小なりお互いに、充実した疲れを抱えたままだろうし。時間を気にせずに二人っきりで過ごせるのも、旅行の醍醐味なんだし。だったら、今しか出来ないようなことを、バアルさんとしてみたいなって。
考えていて辿り着いた結論が、新婚さんっぽいことをやってみたい、だったという訳で。
尋ねながらも俺の両手は止まらない。指通りのいい髪を撫でてみては、優しい目元を撫でてみたり。しっとりとした頬をむにむにと指先で揉むように触れてみては、柔い耳たぶを捏ねてみたり。たっぷり愛でさせてもらっている延長のまま、なでなでむにむにと動かしてしまっていた。
「ええ、本日は貴方様を独占させて頂きたく。致し方がなかったとはいえ、昨日は貴方様の人気ぶりに夫として誇らしくもあれど、年甲斐もなく妬いておりましたので」
「やっ!? ……んんっ……あ、ありがとう」
「いえ」
ついつい驚いてしまう。舞い上がってしまう。嫉妬してくれていたって、昨日の時点で御本人から直々に伝えてもらい済みだってのに。
変なところに入りかけて、むせかけた喉を整えていると催促をされた。止めてしまっていた手のひらに、頬を擦り寄せてきてくれる。
今日のバアルさんはわんこさんみたい。撫で始めるとぶんぶんぱたぱた。目尻のシワを満足気に深めながら、触角と羽でも喜びをアピールしてくれている。
「んふ……だ、だから、何か……新婚さんっぽいことが、したいなって」
……いかんいかん、またむせてしまうところだった。
だらしなくニヤけきった頬に気合を入れる。相変わらず胸の方はときめきっぱなしだけれども。
「ふむ……因みではございますが、アオイはどのようなことがしたいのでしょうか?」
「えっと……」
それっぽい特別なことがしたいとは思ったけれども、いざどのようなことが、と聞かれると。
……新婚さんっぽいことって、どういうことをしたらいいんだろう?
単純に……イチャイチャする、とか? いや、でも、それは恋人同士でもするし、したいし。そもそも、スキンシップなら今の今までずっとさせてもらっているし。
「……では、手始めにルール決めなどしてみましょうか?」
「ルール、ですか?」
「ええ」
小さく頷いてからバアルさんが身体を起こす。俺の上から退いた時、寂しくなった素肌を柔らかな風が吹き抜けていった。馴染のあるこの感覚は。
「あ、ありがとうございます」
やっぱりだった。素っ裸のままだった全身はひとっ風呂浴びたかのようにサッパリ。更には、着替えさせてもらっていた。部屋着代わりにしようと思っていた、ヨミ様特製パーカー猫バージョンに袖を通していた。
フードは被っていないから耳の方は繋がってはいない。けれども尻尾の方はすぐに術で繋がったらしかった。いつもは無い感覚に戸惑ったのもつかの間で、すぐに馴染んできてしまう。これも術によるものなんだろうか。
「いえ」
胸に手を当て会釈をしたバアルさんは、いつものリラックススタイルに。首元を緩めた白いカッターと黒のズボンを身に纏っている。長い足を伸ばして寛げてから、お膝の上をぽん、ぽんと叩いて俺を招いてくれた。
向き合う形でお邪魔させてもらうと、新参者のアイツが早速バアルさんにちょっかいを。ゆらゆらと揺れていた尻尾が、彼の腕にくるりと巻き付いてしまう。
経験的に分かってはいたけれど、やっぱり言うことを聞いてはくれない。服を着ている間だけとはいえ、ホントに俺の身体の一部になっているのか?
「……ごめん」
「ふふ……いえ、私は大歓迎でございますので。では、私達も手を繋ぎましょうか?」
「……ん」
頷いて、差し出された大きな手に手を重ねると不思議な満足感に胸が満たされた。尻尾の方は相変わらずバアルさんの腕にくるりと懐いたまま、先をゆらゆら左右に振っている。
胸元で抱き抱えていた頭がひょこりと持ち上がった。愛しい重みがますます軽くなる。ただでさえ、のしかかられているとは思えないくらいなのに。
「はい。今日はホテルでのんびりする予定でしょう?」
大なり小なりお互いに、充実した疲れを抱えたままだろうし。時間を気にせずに二人っきりで過ごせるのも、旅行の醍醐味なんだし。だったら、今しか出来ないようなことを、バアルさんとしてみたいなって。
考えていて辿り着いた結論が、新婚さんっぽいことをやってみたい、だったという訳で。
尋ねながらも俺の両手は止まらない。指通りのいい髪を撫でてみては、優しい目元を撫でてみたり。しっとりとした頬をむにむにと指先で揉むように触れてみては、柔い耳たぶを捏ねてみたり。たっぷり愛でさせてもらっている延長のまま、なでなでむにむにと動かしてしまっていた。
「ええ、本日は貴方様を独占させて頂きたく。致し方がなかったとはいえ、昨日は貴方様の人気ぶりに夫として誇らしくもあれど、年甲斐もなく妬いておりましたので」
「やっ!? ……んんっ……あ、ありがとう」
「いえ」
ついつい驚いてしまう。舞い上がってしまう。嫉妬してくれていたって、昨日の時点で御本人から直々に伝えてもらい済みだってのに。
変なところに入りかけて、むせかけた喉を整えていると催促をされた。止めてしまっていた手のひらに、頬を擦り寄せてきてくれる。
今日のバアルさんはわんこさんみたい。撫で始めるとぶんぶんぱたぱた。目尻のシワを満足気に深めながら、触角と羽でも喜びをアピールしてくれている。
「んふ……だ、だから、何か……新婚さんっぽいことが、したいなって」
……いかんいかん、またむせてしまうところだった。
だらしなくニヤけきった頬に気合を入れる。相変わらず胸の方はときめきっぱなしだけれども。
「ふむ……因みではございますが、アオイはどのようなことがしたいのでしょうか?」
「えっと……」
それっぽい特別なことがしたいとは思ったけれども、いざどのようなことが、と聞かれると。
……新婚さんっぽいことって、どういうことをしたらいいんだろう?
単純に……イチャイチャする、とか? いや、でも、それは恋人同士でもするし、したいし。そもそも、スキンシップなら今の今までずっとさせてもらっているし。
「……では、手始めにルール決めなどしてみましょうか?」
「ルール、ですか?」
「ええ」
小さく頷いてからバアルさんが身体を起こす。俺の上から退いた時、寂しくなった素肌を柔らかな風が吹き抜けていった。馴染のあるこの感覚は。
「あ、ありがとうございます」
やっぱりだった。素っ裸のままだった全身はひとっ風呂浴びたかのようにサッパリ。更には、着替えさせてもらっていた。部屋着代わりにしようと思っていた、ヨミ様特製パーカー猫バージョンに袖を通していた。
フードは被っていないから耳の方は繋がってはいない。けれども尻尾の方はすぐに術で繋がったらしかった。いつもは無い感覚に戸惑ったのもつかの間で、すぐに馴染んできてしまう。これも術によるものなんだろうか。
「いえ」
胸に手を当て会釈をしたバアルさんは、いつものリラックススタイルに。首元を緩めた白いカッターと黒のズボンを身に纏っている。長い足を伸ばして寛げてから、お膝の上をぽん、ぽんと叩いて俺を招いてくれた。
向き合う形でお邪魔させてもらうと、新参者のアイツが早速バアルさんにちょっかいを。ゆらゆらと揺れていた尻尾が、彼の腕にくるりと巻き付いてしまう。
経験的に分かってはいたけれど、やっぱり言うことを聞いてはくれない。服を着ている間だけとはいえ、ホントに俺の身体の一部になっているのか?
「……ごめん」
「ふふ……いえ、私は大歓迎でございますので。では、私達も手を繋ぎましょうか?」
「……ん」
頷いて、差し出された大きな手に手を重ねると不思議な満足感に胸が満たされた。尻尾の方は相変わらずバアルさんの腕にくるりと懐いたまま、先をゆらゆら左右に振っている。
22
あなたにおすすめの小説
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
【本編完結】才色兼備の幼馴染♂に振り回されるくらいなら、いっそ赤い糸で縛って欲しい。
誉コウ
BL
才色兼備で『氷の王子』と呼ばれる幼なじみ、藍と俺は気づけばいつも一緒にいた。
その関係が当たり前すぎて、壊れるなんて思ってなかった——藍が「彼女作ってもいい?」なんて言い出すまでは。
胸の奥がざわつき、藍が他の誰かに取られる想像だけで苦しくなる。
それでも「友達」のままでいられるならと思っていたのに、藍の言葉に行動に振り回されていく。
運命の赤い糸が見えていれば、この関係を紐解けるのに。
【完結】国に売られた僕は変態皇帝に育てられ寵妃になった
cyan
BL
陛下が町娘に手を出して生まれたのが僕。後宮で虐げられて生活していた僕は、とうとう他国に売られることになった。
一途なシオンと、皇帝のお話。
※どんどん変態度が増すので苦手な方はお気を付けください。
何も知らない人間兄は、竜弟の執愛に気付かない
てんつぶ
BL
連峰の最も高い山の上、竜人ばかりの住む村。
その村の長である家で長男として育てられたノアだったが、肌の色や顔立ちも、体つきまで周囲とはまるで違い、華奢で儚げだ。自分はひょっとして拾われた子なのではないかと悩んでいたが、それを口に出すことすら躊躇っていた。
弟のコネハはノアを村の長にするべく奮闘しているが、ノアは竜体にもなれないし、人を癒す力しかもっていない。ひ弱な自分はその器ではないというのに、日々プレッシャーだけが重くのしかかる。
むしろ身体も大きく力も強く、雄々しく美しい弟ならば何の問題もなく長になれる。長男である自分さえいなければ……そんな感情が膨らみながらも、村から出たことのないノアは今日も一人山の麓を眺めていた。
だがある日、両親の会話を聞き、ノアは竜人ですらなく人間だった事を知ってしまう。人間の自分が長になれる訳もなく、またなって良いはずもない。周囲の竜人に人間だとバレてしまっては、家族の立場が悪くなる――そう自分に言い訳をして、ノアは村をこっそり飛び出して、人間の国へと旅立った。探さないでください、そう書置きをした、はずなのに。
人間嫌いの弟が、まさか自分を追って人間の国へ来てしまい――
【完結】抱っこからはじまる恋
* ゆるゆ
BL
満員電車で、立ったまま寄りかかるように寝てしまった高校生の愛希を抱っこしてくれたのは、かっこいい社会人の真紀でした。接点なんて、まるでないふたりの、抱っこからはじまる、しあわせな恋のお話です。
ふたりの動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります。
YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!
完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
BLoveさまのコンテストに応募しているお話を倍以上の字数増量でお送りする、アルファポリスさま限定版です!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
愛され少年と嫌われ少年
透
BL
美しい容姿と高い魔力を持ち、誰からも愛される公爵令息のアシェル。アシェルは王子の不興を買ったことで、「顔を焼く」という重い刑罰を受けることになってしまった。
顔を焼かれる苦痛と恐怖に絶叫した次の瞬間、アシェルはまったく別の場所で別人になっていた。それは同じクラスの少年、顔に大きな痣がある、醜い嫌われ者のノクスだった。
元に戻る方法はわからない。戻れたとしても焼かれた顔は醜い。さらにアシェルはノクスになったことで、自分が顔しか愛されていなかった現実を知ってしまう…。
【嫌われ少年の幼馴染(騎士団所属)×愛され少年】
※本作はムーンライトノベルズでも公開しています。
借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる
水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。
「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」
過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。
ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。
孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる