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【新婚旅行編】七日目:バアルの笑顔は、太陽みたいに温かいから
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上級な術の内の、条件が整ったら発動するタイプの術でもかけられているのかな? バアルさんに、そういう術もございます、って前に教えてもらったことがあったけれども。
その場合、発動条件はバッジをつけようとした時だろうか。そんでもって、外そうとしたら術が解除されるっていう。それとも俺の知らない他の……それこそ術ではない特殊な技術が用いられていたり?
ついついバッジのことばかりに思考を囚われてしまっていると、風を切るような音が耳に入った。
バアルさんの羽の音だ。水晶のように透き通った四枚が、彼の心の内を代弁するかのように忙しなくはためいている。
そうだった。今は、バッジの構造よりも。
「このバッジって、どこで買えるんですかっ? あ、勿論、こちらのカチューシャも買わせていただきますけど」
「アオイ……」
腰に回されていた手に力がこもる。二本の触角を弾ませながら、バアルさんがそっと抱き寄せてくれた。
「こちらのエリアでご購入出来るのは、太陽と星のバッジですね。このまま、道なりに真っ直ぐ進んでいかれると、私のように通りにお店を構えているスタッフがございます」
「じゃあっ、他のバッジ、サターン様とヨミーン様の別の種類もですけど、例えば……バアルーン様のバッジも有ったりするんですか?」
「はい、ございますよ」
「やっ」
「バアルーン様単品のものもございますが、やはりアオニャン様とペアになられているバッジが多いですね」
「ひゃわ……」
思わずガッツポーズを、握ろうとしていた拳から力がふにゃりと抜けていく。
いや、まぁ、そりゃあ……ありますよね。二人で一つ……ですよね。
思い浮かべた自分の言葉に、ますます顔が熱を持ってしまう。そんな俺に対してバアルさんはますますテンションアップ。俺を抱き支えてくれながらも、店員さんに詰め寄るように聞き出そうとしていた。
「因みに、そちらは」
「確実にご購入出来るのは、城内ですね。東のサンライズエリアでもご購入出来るお店はございますが、何しろ人気のお品ですので」
「成る程……ありがとうございます。では、此方のカチューシャを一つずつ頂けますでしょうか」
「はい、お買い上げありがとうございます。どちらかを付けていかれますか?」
「あっ、えっと、これとこれをっ」
咄嗟に俺は角バージョンのカチューシャを選んでいた。ほんの一瞬、しょんぼりと沈みかけていたバアルさんが、はたと長い睫毛を瞬かせる。
「畏まりました。後は包みますね」
店員さんにお礼を言って店を後にする。この先にあるというバッジ屋さんを目指す道中、バアルさんが残りのカチューシャが入った袋をあの空間にしまい込んだところで、俺はカチューシャを差し出した。
「俺は星の方を付けるから、バアルは太陽ね」
「は、はい」
「ほら、屈んで。付けてあげるから」
「畏まりました」
何か言いたげにしながらも、俺が付けやすいようにバアルさんは、その真っ直ぐに伸びた背筋を屈めてくれる。太陽のマークに飾られた金の王冠を被った角のカチューシャ。ぬいぐるみのような質感で作られているそれが、艷やかな白い髪にちょこんとのった。
「ん、いいよ」
「ありがとうございます」
「んーん……ふふ、やっぱり似合う。銀の王冠や星も素敵だけどね」
バアルの笑顔は、太陽みたいに温かいから。
その場合、発動条件はバッジをつけようとした時だろうか。そんでもって、外そうとしたら術が解除されるっていう。それとも俺の知らない他の……それこそ術ではない特殊な技術が用いられていたり?
ついついバッジのことばかりに思考を囚われてしまっていると、風を切るような音が耳に入った。
バアルさんの羽の音だ。水晶のように透き通った四枚が、彼の心の内を代弁するかのように忙しなくはためいている。
そうだった。今は、バッジの構造よりも。
「このバッジって、どこで買えるんですかっ? あ、勿論、こちらのカチューシャも買わせていただきますけど」
「アオイ……」
腰に回されていた手に力がこもる。二本の触角を弾ませながら、バアルさんがそっと抱き寄せてくれた。
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「じゃあっ、他のバッジ、サターン様とヨミーン様の別の種類もですけど、例えば……バアルーン様のバッジも有ったりするんですか?」
「はい、ございますよ」
「やっ」
「バアルーン様単品のものもございますが、やはりアオニャン様とペアになられているバッジが多いですね」
「ひゃわ……」
思わずガッツポーズを、握ろうとしていた拳から力がふにゃりと抜けていく。
いや、まぁ、そりゃあ……ありますよね。二人で一つ……ですよね。
思い浮かべた自分の言葉に、ますます顔が熱を持ってしまう。そんな俺に対してバアルさんはますますテンションアップ。俺を抱き支えてくれながらも、店員さんに詰め寄るように聞き出そうとしていた。
「因みに、そちらは」
「確実にご購入出来るのは、城内ですね。東のサンライズエリアでもご購入出来るお店はございますが、何しろ人気のお品ですので」
「成る程……ありがとうございます。では、此方のカチューシャを一つずつ頂けますでしょうか」
「はい、お買い上げありがとうございます。どちらかを付けていかれますか?」
「あっ、えっと、これとこれをっ」
咄嗟に俺は角バージョンのカチューシャを選んでいた。ほんの一瞬、しょんぼりと沈みかけていたバアルさんが、はたと長い睫毛を瞬かせる。
「畏まりました。後は包みますね」
店員さんにお礼を言って店を後にする。この先にあるというバッジ屋さんを目指す道中、バアルさんが残りのカチューシャが入った袋をあの空間にしまい込んだところで、俺はカチューシャを差し出した。
「俺は星の方を付けるから、バアルは太陽ね」
「は、はい」
「ほら、屈んで。付けてあげるから」
「畏まりました」
何か言いたげにしながらも、俺が付けやすいようにバアルさんは、その真っ直ぐに伸びた背筋を屈めてくれる。太陽のマークに飾られた金の王冠を被った角のカチューシャ。ぬいぐるみのような質感で作られているそれが、艷やかな白い髪にちょこんとのった。
「ん、いいよ」
「ありがとうございます」
「んーん……ふふ、やっぱり似合う。銀の王冠や星も素敵だけどね」
バアルの笑顔は、太陽みたいに温かいから。
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