【完結】間違って地獄に落とされましたが、俺は幸せです。

白井のわ

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【新婚旅行編】六日目:……これは、もしかして、さらにバアルを甘やかせるチャンスだったり?

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 俺達が寝転がっているベッドのサイズは、小さな部屋ならば埋め尽くしてしまいそうなくらいに広い。余裕で八頭身はあるであろうバアルさんが、その長く引き締まった手足を大の字に伸ばしても全然余裕。なんだけど。

「アオイ……どうぞ、此方へ」

 俺達は、その余りあるスペースを全然有効活用出来てはいなかった。とはいえ、致し方がないことなのだ。

 両腕を広げて微笑む旦那様からのお誘いには、彼の腕の中という魅力的過ぎる寛ぎスペースには、何を持ってしても敵いっこないのだから。

「……お邪魔します」

 まっさらなシーツの上を、いそいそと這って進んで彼の胸元へ。広い背中に腕を回して、服越しでも盛り上がっている胸板に頬を寄せる。程よい柔らかさと弾力を兼ね備えた温もりから、トクトクと落ち着く心音が伝わってきた。

 大きな手のひらが、俺の背中を一定のリズムで優しく叩いてくれ始めた。それだけでも、うっかりうとうとしそうなくらいに心地いい。だというのに、優しい手つきで一緒に頭も撫でてもらえてしまったら。

「……ホントに、このまま眠っちゃいそう……」

「構いませんよ。小一時間ほどお休みになられますか? お昼を沢山お召し上がりになられましたから、まだあまりお腹は空いてはいないでしょう?」

「うん……」

 それはそれでいいんだけれども。夕ご飯の間まで、バアルの腕の中でのんびりゴロゴロ過ごすのも。

「ね、バアル」

 声をかけてから、すぐさま俺は彼の背中へと回していた腕を緩めた。顔を上げて、代わりに引き締まった首へと腕を伸ばす。

「はい、アオイ。いかが致しました、か」

 鮮やかな緑の瞳がきょとんと丸くなっている。まだ、何をされたのか分かっていないみたい。

「んふふ、びっくりした?」

 珍しい彼の反応が嬉しくて、つい俺は調子に乗ってしまっていた。顔を上げざまに奪うように重ねていた唇を、もう一度形のいい唇に押し付けていた。

 ついでに彼の真似を、柔らかな彼の唇を唇でそっと食んでから離す。上手く出来ただろうか。喜んで、褒めてもらえるだろうか。

 期待に胸を高鳴らせながら様子を窺ってみたものの、いまだにバアルさんは固まったまま。細い眉も、触角さえも動かさずにされるがまま。夢見心地のような眼差しで、ぼんやりと俺を見つめている。

 ……これは、もしかして、さらにバアルを甘やかせるチャンスだったり?

 それならばと、張り切ったのもつかの間。今度は艷やかな彼の髪を撫でようと、手を伸ばそうとした時には形勢が逆転していた。急に再起動した彼に、首を唇で甘く食まれていたのだ。

「わ、ひゃっ……バアル……」

 散々、好き勝手にやってしまっていたのだ。一度食んだところで、お返しが終わることは。すっかりいつものペースを取り戻した彼は、クスクスと小さな笑みをこぼしながら繰り返し口づけてくる。

 わざとらしいリップ音を鳴らしながら、首の周りをついばむように。かと思えば、擦り寄るように頬に口づけてきたり、悪戯をするみたいに耳を食んできたり。

「ふは、んっ、擽ったい……擽ったいってば……」

 柔らかな唇が肌を触れていくだけでも背中の辺りがムズムズしてしまう。それに加えて、時々ふわふわのお髭まで掠めてくるのだから、余計に笑いが込み上げてくる。止まらなくなってしまう。

 滲んできた涙でボヤけてきた視界を、整えられた指先がクリアにしてくれた。そっと拭ってくれてから、目元をよしよしと撫でてくれる。

 俺を見つめる彼の口角は、楽しそうに緩やかに持ち上がっていた。ああ、これは、まだまだ終わらないヤツだ。むしろ、これからが本番っていう。

「お返しです。先程は、大変愛らしいサプライズを頂きました故」

「ん……いやいや、だとしても倍返しにもほどがあ、うひゃっ、ちょ、んふふ……」

 案の定、じゃれ合いモードに入っていた彼の可愛いスキンシップは止まらなかった。悪戯っぽく微笑んでいる唇だけではない。しなやかな指まで参戦してきてしまった。
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