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【新婚旅行編】七日目:俺が当てたかったのに
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じんわりと胸の内に広がっていた、擽ったさと嬉しさとが少しだけ落ち着いてきた頃。ふと前を向けば、改めて思い知らさせた。俺達の前にそびえ立っている階段の存在感を。その頂点にある玉座の高嶺の花感を。
「それにしても、スゴいね、この階段……」
「ええ」
一体、何段あるのか。興味は湧くものの、数える気には到底なれない。なんせ、玉座がミニチュアサイズに見えるくらいだ。これじゃあ。
「あんなに高いところにあるんじゃ……お二人の顔、あんまりよく見れないよね?」
つい俺は、浮かんだ疑問をそのまま口にしてしまっていた。バアルさんがどう思うかなんて考えないまま。
「あっ……で、でもっ、きっと別にスクリーンが用意されていたり……い、今は見えてなくても現れたりするよね? ちゃんと二人の顔がアップで見られるような……いや、有るよ! 絶対!!」
階段の方へと向けられていた眼差しが、慌てる俺を捉える。
途端に、ゆるりと微笑んだ。目尻に刻まれているカッコいいシワが深くなっていく。俺を気遣ってくれているにしては楽しげな。
「ふふ……」
「バアル……?」
「浮遊の術、安定の術、視力補正の術……」
「へ?」
「それから、万が一に備えたものもいくつか。此方の座席全てに、あらかじめ施されております」
「んん?」
バアルさんが言っていた言葉を、頭の中で繰り返してみる。浮遊、安定、視力補正、あと他にも。それらが全部の席にかけられていて……って。
「……あ、待って、それじゃあ」
「ええ、全ての座席は浮かぶようになっております。恐らくは、謁見が始まる時に合わせて。更には視力補正がかかるようになっております故、遠くからでも玉座にお座りになられるお二人の御姿を、全てを包み込むような優しい笑顔もバッチリと拝見することが出来るでしょう」
歌うようにツラツラと、緩やかな笑みを浮かべた唇が答えを披露してしまう。
「あー……俺が当てたかったのにー……」
出してくれていたヒントが、そもそも答えみたいなもんだったけどさ。それでも言いたかったのに。だって、それでもバアルさんは、きっと。
「ふふ、失礼……この老骨めも、貴方様に褒めて頂きたかったものですから」
言わんとしていた俺の不満までをも、彼は先に答えてしまった。凛々しい眉を片方下げながら、小さな笑みをこぼしながら。
「……また、そんな……俺が嬉しくなっちゃうことばっかり言ってさぁ……」
「……では、褒めて頂けますか?」
「ん……」
後ろに撫でつけた髪の上で、金属のような光沢を帯びた触角がそわそわと揺れている。彼にだけしか聞こえないように、俺は腰を浮かせて耳元へと顔を寄せた。
「俺のバアルはスゴいね。この国一番の術士だ」
そっと告げてから腰を落とせば、彼もまた俺の頬へと高い鼻先を寄せてきた。
「光栄に存じます……私のアオイ」
「ひぇ……」
穏やかで低いトーンの囁きが届いたのは耳だけではない。その響きは頭の奥にまで、なんなら全身にまで。じんわりと伝わってしまっていて、頭がくらくらしてしまう。鼓動が踊るように賑やかになってしまう。
やっぱり威力が段違いだ。これっぽっちも敵う気がしない。ちゃんと真似をしてみたのに。バアルみたいなカッコよくて優しい声を、意識してみたつもりなのにな。
「それにしても、スゴいね、この階段……」
「ええ」
一体、何段あるのか。興味は湧くものの、数える気には到底なれない。なんせ、玉座がミニチュアサイズに見えるくらいだ。これじゃあ。
「あんなに高いところにあるんじゃ……お二人の顔、あんまりよく見れないよね?」
つい俺は、浮かんだ疑問をそのまま口にしてしまっていた。バアルさんがどう思うかなんて考えないまま。
「あっ……で、でもっ、きっと別にスクリーンが用意されていたり……い、今は見えてなくても現れたりするよね? ちゃんと二人の顔がアップで見られるような……いや、有るよ! 絶対!!」
階段の方へと向けられていた眼差しが、慌てる俺を捉える。
途端に、ゆるりと微笑んだ。目尻に刻まれているカッコいいシワが深くなっていく。俺を気遣ってくれているにしては楽しげな。
「ふふ……」
「バアル……?」
「浮遊の術、安定の術、視力補正の術……」
「へ?」
「それから、万が一に備えたものもいくつか。此方の座席全てに、あらかじめ施されております」
「んん?」
バアルさんが言っていた言葉を、頭の中で繰り返してみる。浮遊、安定、視力補正、あと他にも。それらが全部の席にかけられていて……って。
「……あ、待って、それじゃあ」
「ええ、全ての座席は浮かぶようになっております。恐らくは、謁見が始まる時に合わせて。更には視力補正がかかるようになっております故、遠くからでも玉座にお座りになられるお二人の御姿を、全てを包み込むような優しい笑顔もバッチリと拝見することが出来るでしょう」
歌うようにツラツラと、緩やかな笑みを浮かべた唇が答えを披露してしまう。
「あー……俺が当てたかったのにー……」
出してくれていたヒントが、そもそも答えみたいなもんだったけどさ。それでも言いたかったのに。だって、それでもバアルさんは、きっと。
「ふふ、失礼……この老骨めも、貴方様に褒めて頂きたかったものですから」
言わんとしていた俺の不満までをも、彼は先に答えてしまった。凛々しい眉を片方下げながら、小さな笑みをこぼしながら。
「……また、そんな……俺が嬉しくなっちゃうことばっかり言ってさぁ……」
「……では、褒めて頂けますか?」
「ん……」
後ろに撫でつけた髪の上で、金属のような光沢を帯びた触角がそわそわと揺れている。彼にだけしか聞こえないように、俺は腰を浮かせて耳元へと顔を寄せた。
「俺のバアルはスゴいね。この国一番の術士だ」
そっと告げてから腰を落とせば、彼もまた俺の頬へと高い鼻先を寄せてきた。
「光栄に存じます……私のアオイ」
「ひぇ……」
穏やかで低いトーンの囁きが届いたのは耳だけではない。その響きは頭の奥にまで、なんなら全身にまで。じんわりと伝わってしまっていて、頭がくらくらしてしまう。鼓動が踊るように賑やかになってしまう。
やっぱり威力が段違いだ。これっぽっちも敵う気がしない。ちゃんと真似をしてみたのに。バアルみたいなカッコよくて優しい声を、意識してみたつもりなのにな。
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