【完結】間違って地獄に落とされましたが、俺は幸せです。

白井のわ

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【新婚旅行編】七日目:ヨミ様達から俺達へのサプライズって、もしかして

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「ある日のことでございます。いつもと変わらぬ朝が始まろうとしていた時、世界中から悪夢を集めていた空の扉の一つから悪夢以外のものが降ってきたのでございます」

 続きを語り始めた声色は、先程の柔らかさとは打って変わってトーンが低い。

 語り手の口調に心を揺さぶるような説得力があるからだろう。その響きに含まれた緊張が、こちらにまでうつってくる。自然と背筋を伸ばした、唇を引き結んでいた。繋いでいる手に力を込めてしまっていた。

 淡い光に包まれていた和やかな静寂とは真逆の張り詰めた沈黙。妙に心臓が騒がしくなる空気を破るように、清らかな鈴の音がチリンと鳴った。

 こちらへと近づいてくる足音のように、チリン、チリン。一定の感覚で鳴り続けている鈴の音が、徐々に大きくなっていく。どこか幻想的で何かの始まりを告げるような音楽が、こちらの気持ちを盛り上げるように流れ始める。


 流れ星が、落ちてきた。


 オレンジ色の輝きが、黒いモヤを消し去るように煌めきながら、遥か上から真っ逆さまに落ちてきた様はそうとしか。

 まるで俺達の真上へと落ちてきたような眩さと、落下による衝撃の強さを表現しているような座席の震えに、俺はまた肩を寄せ合っている頼もしい長身にしがみついてしまっていた。あまりに一瞬の出来事に、今度は情けのない声を上げる暇がなかったのが救いだろうか。

 急に俺に抱き締められたバアルさんはといえば、相変わらずの平常運転。すぐさま筋肉質な腕で抱き締め返してくれて、大きな手のひらで甘やかすように頭を撫でてくれる。ぱたぱたとご機嫌そうな羽の音まで聞こえてくるくらいだ。バアルさんには、びっくりドッキリ要素なんて何一つ効かないのかもしれない。

 まだ、視界がチカチカしている。瞬きする度に、今は見えてはいない光の輪が焼き付いていて、閉じようが開けようが物語の主役にでもなったかのように俺が見つめる景色のど真ん中に陣取ってしまっている。

 それでも、眩んでいた目は慣れてきた。もうもうと立ち込めている霧のようなモヤの中に薄っすらと、誰かの影が見えてきて。

「悪夢に紛れて空高くより落ちてこられてしまった輝き、不思議なほどに温かな光を纏っていた御方は、偶々空の扉に不調がないかと見回っていたバアルーン様に抱き留められ、事なきを得ました」

 不意に頬を撫でていった柔らかな風が、視界を邪魔していた白いモヤを吹き飛ばしていく。

 ようやく見ることが出来たのは、男らしいガタイをしつつも流れるように美しいスタイルを兼ね備えた長身。バアルさんにそっくりな、大人の男の魅力にあふれたバアルーン様。彼が心配そうに凛々しい眉を下げ、萎れてしまった花のように羽を縮めて、ご自身の腕の中の存在を見下ろしている。身を挺して抱き留めた流れ星の正体を。

「アオニャン様……」

 バアルさんが俺を抱く腕に力を込め、座席から身を乗り出さんばかりに食いつく。彼の呼びかけに応えるかのようなタイミングで、アオニャンが目を覚ました。

 ぼんやりとしたオレンジ色の瞳でバアルーン様を捉え、見つめ合う二人。駆け寄れば、すぐにでも側へと行けてしまえそうな。そんな錯覚を覚えてしまうくらいに、映像であるハズの彼らは生き生きと動いていた。

 ……あれ? これってもしかして。ヨミ様達から俺達へのサプライズってもしかして。

「運命とは、まさにこの出会いの瞬間のことを言うのでしょう。アオニャンと名乗られた異邦の御方に、バアルーン様は一目で心を奪われました。アオニャン様もまた、初めてお会いするバアルーン様に言葉に出来ない安心感を抱いておりました」

 やっぱりそういうこと? 俺とバアルさんの出会いを、アオニャンとバアルーン様を通して描いているってこと?
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