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【新婚旅行編】七日目:最初はウキウキ、しばらくすれば
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バアルさんと手を繋いだまま、チョコレートケーキが乗せられたお皿の周りをぐるりと一周。上品な金の装飾に縁取られたお皿だけでも、俺達がお世話になっているホテルのキングサイズよりも大きなベッドであろうと乗せられそうなくらい。
だというのに、ちょっと歩いて回っただけでは、巨人さんにはぴったりなサイズの三角形のチョコレートケーキの全容を、しっかりと把握することは出来ない。
なんせ、何かがトッピングされているであろう真上は、縁取られたチョコレートクリームによって阻まれてしまっているからな。俺にとっては高くて広い壁にしか。茶色のスポンジとクリームを繰り返し重ねたシマシマの壁にしか見えない。
「当たり前だけど、すっごく大っきい……食べても食べても減らなそうだね……」
「左様でございますね」
着替え終えた俺達は、最初こそウキウキで。盛り沢山なチョコレートスポンジやチョコクリームを、包丁みたいに大きめなナイフとフォークを駆使して好きなサイズで切り取ってはお皿に盛って、バアルさんが淹れてくれた紅茶と一緒に楽しんでいた。
けれども、しばらくすれば自分達で言っていた通りになってしまっていた。
食べても食べても多少の穴凹が出来るだけ。一向に減る気配がない。そのキレイな三角形を崩すことなく立ちはだかっているケーキの甘さに幸福過多になってしまう。
「二人で食べてるのに……」
「ええ……ですが、私もアオイも大食いという方では……サタン様がいらっしゃれば、お一人で平らげてしまわれそうですが」
「ああ、確かに……最後まで美味しそうに、ひょいひょいひょいって食べちゃいそう」
「ええ」
もし居てくれれば頼もしい戦力になってくれていたであろう、仏のような笑顔を思い出す。
まぁ、無いもの強請りというか、思ったところで仕方がないので、用意されていたお持ち帰り用のタッパーを利用させてもらうことにした。
元のサイズに戻った時には二人で半分こにして、またお茶のお供にいただくことにしよう。その前に小さな俺達が奮闘した証の凸凹を、記念に撮影しておかないとな。
「コルテって、いつもこんな気持ちでいたんですかね」
少し休憩とその場に腰を下ろせば、彼もまた寄り添ってきてくれる。座り込んで、俺が寄りかかられるように頼もしくて筋肉質な肩を貸してくれる。
「やもしれませんね」
「あっ、ねぇ、ねぇ、この状態でコルテに現れてもらったら、俺達よりも大きくなっちゃうのかな?」
「ふむ、確かにコルテ自身は腕輪を着けてはおりません。ですが、コルテと私めは一心同体のようなものでして、恐らくは私達に合わせたサイズに縮んでしまわれるかと」
「そっか……残念」
いいアイデアを思いついたと思ったんだけどな。
「残念、とは?」
「いや、今の小ささだったら、コルテの背中に乗せてもらえるかなって」
ドラゴンさんの背中に乗せてもらった時のようにコルテと一緒に、コルテと同じ目線で空を飛べるかなって思ったんだけど。
「アオイ……」
「ん? バアル、どうし」
つい俺は笑みをこぼしそうになってしまっていた。寂しそうに見つめてくる鮮やかな緑の瞳が、そわそわとはためく彼の背にある羽が、主張していたのだ。自分ではダメなのかと。
「っ……バアルさえ、良かったらなんだけど」
「はいっ、貴方様のバアルが、どのようなお望みでも叶えて差し上げますよ」
元気よく返事をして、期待に瞳を輝かせているバアルの姿勢はすでに前のめりだ。薄い服越しでも厚い胸板に手を添えながら、弾むように触角を揺らしている。早くも羽を大きく広げている。穏やかな笑みは変わらないものの、全身からあふれ出てしまっている。
「ふふ、ありがとう。じゃあ、抱っこして欲しいな。それで、俺を運んだまま部屋の中を飛んで欲しいんだけど」
「畏まりました。愛しい妻のお望みのままに」
お手本のようにキレイなお辞儀を披露してから、バアルはエスコートする形で俺の手を取った。浮遊感を感じる間もなく、その筋肉質な腕に収まった時には、俺とバアルは軽やかに宙を泳いでいた。
だというのに、ちょっと歩いて回っただけでは、巨人さんにはぴったりなサイズの三角形のチョコレートケーキの全容を、しっかりと把握することは出来ない。
なんせ、何かがトッピングされているであろう真上は、縁取られたチョコレートクリームによって阻まれてしまっているからな。俺にとっては高くて広い壁にしか。茶色のスポンジとクリームを繰り返し重ねたシマシマの壁にしか見えない。
「当たり前だけど、すっごく大っきい……食べても食べても減らなそうだね……」
「左様でございますね」
着替え終えた俺達は、最初こそウキウキで。盛り沢山なチョコレートスポンジやチョコクリームを、包丁みたいに大きめなナイフとフォークを駆使して好きなサイズで切り取ってはお皿に盛って、バアルさんが淹れてくれた紅茶と一緒に楽しんでいた。
けれども、しばらくすれば自分達で言っていた通りになってしまっていた。
食べても食べても多少の穴凹が出来るだけ。一向に減る気配がない。そのキレイな三角形を崩すことなく立ちはだかっているケーキの甘さに幸福過多になってしまう。
「二人で食べてるのに……」
「ええ……ですが、私もアオイも大食いという方では……サタン様がいらっしゃれば、お一人で平らげてしまわれそうですが」
「ああ、確かに……最後まで美味しそうに、ひょいひょいひょいって食べちゃいそう」
「ええ」
もし居てくれれば頼もしい戦力になってくれていたであろう、仏のような笑顔を思い出す。
まぁ、無いもの強請りというか、思ったところで仕方がないので、用意されていたお持ち帰り用のタッパーを利用させてもらうことにした。
元のサイズに戻った時には二人で半分こにして、またお茶のお供にいただくことにしよう。その前に小さな俺達が奮闘した証の凸凹を、記念に撮影しておかないとな。
「コルテって、いつもこんな気持ちでいたんですかね」
少し休憩とその場に腰を下ろせば、彼もまた寄り添ってきてくれる。座り込んで、俺が寄りかかられるように頼もしくて筋肉質な肩を貸してくれる。
「やもしれませんね」
「あっ、ねぇ、ねぇ、この状態でコルテに現れてもらったら、俺達よりも大きくなっちゃうのかな?」
「ふむ、確かにコルテ自身は腕輪を着けてはおりません。ですが、コルテと私めは一心同体のようなものでして、恐らくは私達に合わせたサイズに縮んでしまわれるかと」
「そっか……残念」
いいアイデアを思いついたと思ったんだけどな。
「残念、とは?」
「いや、今の小ささだったら、コルテの背中に乗せてもらえるかなって」
ドラゴンさんの背中に乗せてもらった時のようにコルテと一緒に、コルテと同じ目線で空を飛べるかなって思ったんだけど。
「アオイ……」
「ん? バアル、どうし」
つい俺は笑みをこぼしそうになってしまっていた。寂しそうに見つめてくる鮮やかな緑の瞳が、そわそわとはためく彼の背にある羽が、主張していたのだ。自分ではダメなのかと。
「っ……バアルさえ、良かったらなんだけど」
「はいっ、貴方様のバアルが、どのようなお望みでも叶えて差し上げますよ」
元気よく返事をして、期待に瞳を輝かせているバアルの姿勢はすでに前のめりだ。薄い服越しでも厚い胸板に手を添えながら、弾むように触角を揺らしている。早くも羽を大きく広げている。穏やかな笑みは変わらないものの、全身からあふれ出てしまっている。
「ふふ、ありがとう。じゃあ、抱っこして欲しいな。それで、俺を運んだまま部屋の中を飛んで欲しいんだけど」
「畏まりました。愛しい妻のお望みのままに」
お手本のようにキレイなお辞儀を披露してから、バアルはエスコートする形で俺の手を取った。浮遊感を感じる間もなく、その筋肉質な腕に収まった時には、俺とバアルは軽やかに宙を泳いでいた。
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