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【新婚旅行編】七日目:じ、自分の手で! 俺に戻ってから、撫で撫でさせてもらいたいですっ!
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「ふむ……確かに……いくら私めを通して可愛らしいアオイを見ることが出来ているとはいえ……少々、抵抗がございますね……」
「でしょ? 俺もさ、ちゃんと俺の後ろにバアルが見えてはいるんだけどさ……」
だからこそ、違和感が半端ないんだよね。
見た目は完全にクリームとイチゴたっぷりで美味しそうなショートケーキなのに、実際にいただいてみるとしょっぱくて、ご飯が進みそうな味がしちゃうみたいな。脳がバグっちゃいそうになるんだよ。
「左様で、ございましたか……」
いくら納得出来たとしても、それはそれ、これはこれ。もどかしくて残念な気持ちには変わりないんだろう。
力なく呟いたバアルさんは、小さな身体をますます小さく丸めてしまっている。
何とも言えない空気だ。居心地が悪いとまではいかないんだけれども、落ち着かない。消化不良って感じ。
いつも通りの俺達だったら問題ないのに。ぎゅっとしてもらえたら落ち着けるし、満足出来るのに。
「あっ、次の部屋、行きましょう? 確か、部屋を移動しても術が解けるんでしたよね?」
術の効果が解ける条件は腕輪の魔宝石を押した時以外にも。スタッフさんがしてくれた説明によると、一定の時間が経過するか、次の部屋へと進むことでも解除することが出来るらしい。ただ、行った先でしばらくしていると、また別の術が発動してしまうんだけれども。
とはいえ、また入れ替わるってことはないだろうし。このまま術が自然と解けるまで、ずっとそわそわしちゃうよりはマシだろう。でないと、この先楽しめないし。
「ええ、左様ではございますが」
俺の提案にバアルさんは小さく頷いた。けれども、何か引っかかっているのか言葉を濁す。ちょっとだけ迷っているかのように睫毛を伏せ、小さな顎を撫でてから再び口を開いた。
「……宜しいので? もう、私めに触れては頂けないのでしょうか?」
「う……」
見上げてくる彼は、どこからどう見ても俺の姿をしているってのに。
可愛くって仕方がない。今すぐ抱き締めてしまいたい。頭を、頬を思いっきり撫でてあげたい。甘やかしたい。
求められている喜びと一緒に込み上げてくる衝動を何とか抑えながら、俺は伸ばしかけていた手を必死に引っ込めた。
「じ、自分の手で! 俺に戻ってから、撫で撫でさせてもらいたいですっ!」
「次のお部屋へ参りましょう」
俺の宣言を聞いてからの彼の行動は早かった。ぱぁっと瞳を輝かせたかと思えば即座に軽やかにソファーから降り立ち、流れるような美しい動作で俺の手を恭しく取ったのだ。
優しく引かれるがままに俺も立ち上がり、そして。
「ふぁっ?」
気がつけば彼の細い腕の中にいた。ひと回り以上もある体格差など何のその。軽々と俺を横抱きの形で抱き上げたまま、次の部屋へと繋がる扉へと鼻歌交じりに歩みを進めている。
「な、なんでっ? 俺の身体、なのに?」
「おや、アオイもご自身の筋力を増強させる術は使えるでしょう?」
「それは……でもっ、こんなにスムーズに、それも自分の力だけじゃあ出来な……」
もしかして、中身がバアルだから? バアルが優秀な術士だから、大した術が使えない俺の身体でも最大限に活用出来て……
「ってことは、俺も頑張ればバアルを抱っこ出来るってこと?」
「ええ。現に私めが、貴方様のお力をご利用させて頂いているでしょう?」
「うんっ! バアル、スゴいっ!」
「お褒め頂き光栄に存じます」
細腕で支えているとは思えない抜群の安定感を感じながら、俺は彼に抱き上げられたまま扉をくぐった。その瞬間を狙っていたかのように、また目の前が真っ暗になってしまった。
「でしょ? 俺もさ、ちゃんと俺の後ろにバアルが見えてはいるんだけどさ……」
だからこそ、違和感が半端ないんだよね。
見た目は完全にクリームとイチゴたっぷりで美味しそうなショートケーキなのに、実際にいただいてみるとしょっぱくて、ご飯が進みそうな味がしちゃうみたいな。脳がバグっちゃいそうになるんだよ。
「左様で、ございましたか……」
いくら納得出来たとしても、それはそれ、これはこれ。もどかしくて残念な気持ちには変わりないんだろう。
力なく呟いたバアルさんは、小さな身体をますます小さく丸めてしまっている。
何とも言えない空気だ。居心地が悪いとまではいかないんだけれども、落ち着かない。消化不良って感じ。
いつも通りの俺達だったら問題ないのに。ぎゅっとしてもらえたら落ち着けるし、満足出来るのに。
「あっ、次の部屋、行きましょう? 確か、部屋を移動しても術が解けるんでしたよね?」
術の効果が解ける条件は腕輪の魔宝石を押した時以外にも。スタッフさんがしてくれた説明によると、一定の時間が経過するか、次の部屋へと進むことでも解除することが出来るらしい。ただ、行った先でしばらくしていると、また別の術が発動してしまうんだけれども。
とはいえ、また入れ替わるってことはないだろうし。このまま術が自然と解けるまで、ずっとそわそわしちゃうよりはマシだろう。でないと、この先楽しめないし。
「ええ、左様ではございますが」
俺の提案にバアルさんは小さく頷いた。けれども、何か引っかかっているのか言葉を濁す。ちょっとだけ迷っているかのように睫毛を伏せ、小さな顎を撫でてから再び口を開いた。
「……宜しいので? もう、私めに触れては頂けないのでしょうか?」
「う……」
見上げてくる彼は、どこからどう見ても俺の姿をしているってのに。
可愛くって仕方がない。今すぐ抱き締めてしまいたい。頭を、頬を思いっきり撫でてあげたい。甘やかしたい。
求められている喜びと一緒に込み上げてくる衝動を何とか抑えながら、俺は伸ばしかけていた手を必死に引っ込めた。
「じ、自分の手で! 俺に戻ってから、撫で撫でさせてもらいたいですっ!」
「次のお部屋へ参りましょう」
俺の宣言を聞いてからの彼の行動は早かった。ぱぁっと瞳を輝かせたかと思えば即座に軽やかにソファーから降り立ち、流れるような美しい動作で俺の手を恭しく取ったのだ。
優しく引かれるがままに俺も立ち上がり、そして。
「ふぁっ?」
気がつけば彼の細い腕の中にいた。ひと回り以上もある体格差など何のその。軽々と俺を横抱きの形で抱き上げたまま、次の部屋へと繋がる扉へと鼻歌交じりに歩みを進めている。
「な、なんでっ? 俺の身体、なのに?」
「おや、アオイもご自身の筋力を増強させる術は使えるでしょう?」
「それは……でもっ、こんなにスムーズに、それも自分の力だけじゃあ出来な……」
もしかして、中身がバアルだから? バアルが優秀な術士だから、大した術が使えない俺の身体でも最大限に活用出来て……
「ってことは、俺も頑張ればバアルを抱っこ出来るってこと?」
「ええ。現に私めが、貴方様のお力をご利用させて頂いているでしょう?」
「うんっ! バアル、スゴいっ!」
「お褒め頂き光栄に存じます」
細腕で支えているとは思えない抜群の安定感を感じながら、俺は彼に抱き上げられたまま扉をくぐった。その瞬間を狙っていたかのように、また目の前が真っ暗になってしまった。
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