【完結】間違って地獄に落とされましたが、俺は幸せです。

白井のわ

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【新婚旅行編】八日目:今度は、一体何を思いつきになられたので?

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 俺が前のめりで食いついた為か、ご機嫌に羽をはためかせたバアルに先手を打たれて、寝室までお姫様抱っこで運ばれてしまったが、まだまだここから。

 今度こそ俺が、バアルが思わず夕食の時間になるまでぐっすりすやすや眠っちゃうくらいに、とびきり癒してみせよう!

 そう張り切っていたんだけれども。

 肌心地のいいシーツから香ってくる花のような上品な香りに、俺の好きなハーブの香りが混ざっている。優しく俺の身体を包みこんでくれている温もりは心地よく、気を抜けばすぐうとうとしてしまいそう。

「ねぇ、バアル……」

「はい、いかがなさいましたか? アオイ」

 嬉しいんだけれども納得がいっていない俺に対して、バアルは今もご機嫌だ。それは何よりなんだけれども。

「俺が、バアルに……膝枕するんじゃ、ダメだったの?」

 抱き枕じゃなくってさ。

「そうですね……確かにそちらも比べようがならないほどに魅力的ではございます」

「だったら」

「ですが、今は私の愛しい妻を存分に抱き締めさせて頂きたいのです」

「う……」

「お嫌でしょうか?」

「うぅ……」

 ホントにズルい。そんな嬉しいことばっかり言われちゃったら俺が断れないって分かってるクセに。そんな切なそうな目で見つめられちゃったら俺が何でもお願いを聞いてあげたくなっちゃうって知ってるクセに。

「イヤな訳ないじゃんっ! バアルの腕の中が一番安心するし好きだって、俺、言ったでしょ?」

 一枚も二枚も上手な彼によってすっかり詰んだ状態へと追い込まれて、つい俺は拗ねたような、駄々っ子のような言い方をしてしまっていた。

 けれども、海よりも深い包容力をお持ちのバアルにとっては、なんてことはないみたい。ただひたすらに優しい眼差しで見つめてくれている。愛しておりますって、言われてもいないのに伝わってきちゃいそう。

「ええ、存じております。私めもアオイを独り占めに出来るこのひと時に、何よりも代えがたい幸福を感じておりますよ」

 その言葉だけで満足しちゃってる俺は、きっとバアルに敵いっこないのだろう。多分、ずっと、これからも。

 これが、惚れた弱みというヤツなんだろうか。

「もー……やっぱり、バアル……ズルい……」

「おや、どうしてでしょうか?」

 おどけたような明るい調子で尋ねてくるバアルは、ほんの少し前のしょんぼりとした表情とは打って変わって上機嫌だ。

 すでに俺の言いたいことなんて全部分かっているんだろうし、その上で楽しんじゃっているんだろう。そんな、ちょっぴり意地悪なところも好きだけど。

「……だって、全然俺にとびきり甘やかさせてくれないじゃん。今のこの状態だって、俺にとってのご褒美になっちゃってるし」

「宜しいのでは? 私もアオイに甘やかされておりますし、癒されてもおります故」

「うぐ……確かにウィンウィンではあるんだけどさぁ……」

 それでも、もっと何かしてあげたい。もっとバアルに喜んで欲しい。

 撫でてみようか、それとももっと大胆にキスでもしてみようか。思い浮かんだ案は、即座に頭の中のもう一人の自分によって却下された。絶対にお返しをされて、余計に俺が甘やかされてしまうのがオチだろうと。

 確かに、そうかも。っていうか、もう、そうなる未来しか見えなくなっちゃったんだけど。

 それじゃあ他に、抱き締められているこの状態でも出来ることはないものか。無いなりに思考をフル回転させていると珍しく良いアイデアを思いついた。

「あっ……ねぇ、バアル、このままでいいからさ……手、貸して?」

「……ええ、愛しい妻のお望みのままに」

 目尻のシワを深めたバアルは、温かな手のひらで頬をひと撫でしてくれてから、さり気なく額に口づけてくれた。

 やっぱり、あの作戦は却下して正解だったな。だって、もうドキドキさせられちゃってるし。

「今度は、一体何を思いつきになられたので?」

 楽しそうに言いながら、バアルは右手を手のひらを上にして差し出してくれた。
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