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★【新婚旅行編】八日目:折衷案はいかがでしょうか?
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シーツにシミを作ってしまうほどに念には念を入れて濡らしたそこは、思っていたよりは柔らかかった。
いつもバアルはたっぷり時間をかけて解してくれていたから、もっと硬く締まっているというか、ちょっと触ったくらいじゃどうにもならないような手強そうな気がしていたんだけれど。
当たり前だけどバアルの指とは全然違う。感触の違いは仕方がないとしても、それ以上に気分が違うのだ。自分の指だと緊張のドキドキはあれど、そわそわしてしまうような期待感を感じない。それどころか心地よさすらも、今のところは全然。ホントにただ触られてるなって感じだ。触っているのは俺自身なんだけど。
やっぱり、ただ撫でてくれているだけじゃあなかったんだ。
改めてバアルの凄さを実感していると頭を優しく撫でてもらえた。
「宜しいですよ、その調子です……アオイはやはり飲み込みが早い御方ですね」
「あ、ありがとう……」
褒め上手な彼にそう言われてしまうと、そうなんじゃないかって、俺でもちゃんと出来ているんじゃないかって気がしてくる。このまま頑張っていたら、バアルみたいに出来るんじゃないかって。
「マッサージをするように、周囲を優しく押してみても解れやすくなりますよ」
そのようなアドバイスを適時受けながら、俺は濡れた指で潤滑油を丹念に自分の穴へと馴染ませていった。そうして。
「では、そろそろ指先を挿れてみましょうか」
ここだ。ここが俺にとっての一番の難関。ここさえクリアすることが出来たら、最初の一本さえ挿れる勇気を出せればその後は。
「アオイ……」
心配そうに呼ばれて初めて気がついた。空いている手で俺を支えてくれている彼の腕を縋るように掴んでしまっていたことに。
「だ、大丈夫……ちゃんと、俺だけで出来るから……準備してみせるから」
慌てて離した左手を掴まれた。指を絡めて握ってくれながら、バアルが俺の顔を覗き込んできた。真っ直ぐに見つめてくる緑の瞳はやはり不安そうに細められていた。
「バアル……」
「折衷案はいかがでしょうか?」
「せっちゅうあん……?」
つい聞き返してしまっていたが言葉の意味は何となく分かってはいる。要は、お互いに納得が出来るように歩み寄ろうって話だろう。
でも、今の俺達の状況においての落としどころって?
「ええ、まず私の指を貴方様にお貸し致します」
「バアルの指を、俺に?」
「はい。ですが、私の意志で動かしたりは致しません。貴方様がご命令された通りにのみ動かします」
「俺の、思った通りに……」
「はい。そう致しましたら、アオイが自ら準備をして下さっているのと代わりはないのではございませんか? 違いは私の指を使っているという点だけでございます故」
その一点が、滅茶苦茶重要な気がするんだけれども。
思ったものの、俺はすでにバアルとの約束を破りかけてしまっていた。ほんのちょっとでも怖いと思ったなら任せるということで俺の我儘を許してもらえていたのに、それでも続けようとしてしまっていたのだ。
それに対する罪悪感が背中を押したんだろう。引っかかるところはあったものの、俺はその折衷案を受け入れることにした。
「分かった……じゃあ、バアル……お願いね」
「はい」
バアルは最後まで頑張りたいと思っていた俺の手前だからか、喜びを隠しているようだった。
でも、俺には分かってしまっていた。眉間のシワがなくなったのも見ちゃったし、羽のはためく音も聞こえちゃっていたから。
いつもバアルはたっぷり時間をかけて解してくれていたから、もっと硬く締まっているというか、ちょっと触ったくらいじゃどうにもならないような手強そうな気がしていたんだけれど。
当たり前だけどバアルの指とは全然違う。感触の違いは仕方がないとしても、それ以上に気分が違うのだ。自分の指だと緊張のドキドキはあれど、そわそわしてしまうような期待感を感じない。それどころか心地よさすらも、今のところは全然。ホントにただ触られてるなって感じだ。触っているのは俺自身なんだけど。
やっぱり、ただ撫でてくれているだけじゃあなかったんだ。
改めてバアルの凄さを実感していると頭を優しく撫でてもらえた。
「宜しいですよ、その調子です……アオイはやはり飲み込みが早い御方ですね」
「あ、ありがとう……」
褒め上手な彼にそう言われてしまうと、そうなんじゃないかって、俺でもちゃんと出来ているんじゃないかって気がしてくる。このまま頑張っていたら、バアルみたいに出来るんじゃないかって。
「マッサージをするように、周囲を優しく押してみても解れやすくなりますよ」
そのようなアドバイスを適時受けながら、俺は濡れた指で潤滑油を丹念に自分の穴へと馴染ませていった。そうして。
「では、そろそろ指先を挿れてみましょうか」
ここだ。ここが俺にとっての一番の難関。ここさえクリアすることが出来たら、最初の一本さえ挿れる勇気を出せればその後は。
「アオイ……」
心配そうに呼ばれて初めて気がついた。空いている手で俺を支えてくれている彼の腕を縋るように掴んでしまっていたことに。
「だ、大丈夫……ちゃんと、俺だけで出来るから……準備してみせるから」
慌てて離した左手を掴まれた。指を絡めて握ってくれながら、バアルが俺の顔を覗き込んできた。真っ直ぐに見つめてくる緑の瞳はやはり不安そうに細められていた。
「バアル……」
「折衷案はいかがでしょうか?」
「せっちゅうあん……?」
つい聞き返してしまっていたが言葉の意味は何となく分かってはいる。要は、お互いに納得が出来るように歩み寄ろうって話だろう。
でも、今の俺達の状況においての落としどころって?
「ええ、まず私の指を貴方様にお貸し致します」
「バアルの指を、俺に?」
「はい。ですが、私の意志で動かしたりは致しません。貴方様がご命令された通りにのみ動かします」
「俺の、思った通りに……」
「はい。そう致しましたら、アオイが自ら準備をして下さっているのと代わりはないのではございませんか? 違いは私の指を使っているという点だけでございます故」
その一点が、滅茶苦茶重要な気がするんだけれども。
思ったものの、俺はすでにバアルとの約束を破りかけてしまっていた。ほんのちょっとでも怖いと思ったなら任せるということで俺の我儘を許してもらえていたのに、それでも続けようとしてしまっていたのだ。
それに対する罪悪感が背中を押したんだろう。引っかかるところはあったものの、俺はその折衷案を受け入れることにした。
「分かった……じゃあ、バアル……お願いね」
「はい」
バアルは最後まで頑張りたいと思っていた俺の手前だからか、喜びを隠しているようだった。
でも、俺には分かってしまっていた。眉間のシワがなくなったのも見ちゃったし、羽のはためく音も聞こえちゃっていたから。
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