【完結】間違って地獄に落とされましたが、俺は幸せです。

白井のわ

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【新婚旅行編】九日目:とある王様は、彼の今後の成長を楽しみにしている

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「ええ、左様でございます。それから、此方もすでにご存知かとは思いますが、術には初級、中級、上級と系統の中でも行使する難易度によってランク付けがされております」

「はい。その中でも分身の術は、ちょっと高めの難易度なんですよね?」

 その答えを聞いた瞬間、全てに納得がいった。どうやら彼の師匠は、とんだ悪戯っ子さんであったらしい。

 グリムとクロウも気がついたのか、ご機嫌なバアルの方をそれはそれは驚いた顔で見つめていた。

 レタリーが軽く咳払いをしてからアオイ殿を真っ直ぐに見つめた。

「いえ、上級の上でございます」

「へ?」

「上級の術にのみ、その中からさらに、初、中、上とランク分けされております。分身の術は上級の内の上になります」

「えっ……!?」

 やっぱり教えてもらっていなかったらしい。めいいっぱいに見開かれた瞳が、バアルの方へと向けられた。

「じっくりと基礎を積まれた私のアオイならば可能かと。そもそもアオイの魔力の質からして、此方の分野に適性があるようでした故」

「で、でも、教えてくれても」

「申し訳ございません。あえて教えてしまわない方が、気軽に取り組めるかと存じまして」

 悪びれた様子はなく、寧ろ清々しいほどに綺麗な微笑みを浮かべながらバアルが答える。納得してしまった部分が大きかったのであろう。アオイ殿が身体を丸めながら唸った。

「うっ、ぐぅ……確かに……」

 確かに、アオイ殿のような生徒にとっては適切な教え方であったようだ。実際に成果はキッチリと出ておるし。今回は私達が言うことでネタバラシになってしまったが、いずれはバアルの方から言っていたで……いや、もしかして最初っからこのつもりで披露させることを決めたのでは?

 バアルを見つめると、何やら心ときめくウィンクで返されてしまった。いや、まぁ言わぬが? 交換条件のようにそのようなファンサをしてもらうまでもなく。

「あー……アオイ殿、宜しければ貴殿の分身をもっと見せてはくれないだろうか?」

 こうして話題を変えたのも、誠にアオイ殿の分身に興味が尽きないだけであるからな。

「は、はいっ、どうぞ」

 差し出された手の上にいるアオイ殿の分身は、ほんの少しだけ見えた通りやはりアオイ殿にそっくりであった。

 釣られて胸の内がほっこり温かくなるような、優しくほんわかとした印象を与えてくれる柔らかな目鼻立ち。丸っこくてつぶらな瞳も、本物さんなアオイ殿とそっくりさんで澄み渡るように透き通っている。

「やはり愛らしい……」

「可愛いですね、ちっちゃいアオイ様も」

「クッキー食べるかの?」

 私達が口々に思ったことを口にしてしまう度に、アオイ殿もアオイ殿の分身さんも頬をぽぽぽと赤くしていた。

 すでに感情の共有も出来ておるとは……誠に足りぬのは大きさだけのようであるな。今後の成長が楽しみである。それにしても。

 ……出来れば、もっと近くで触れ合ってみたいのであるが。

「彼は、アオイ殿の手のひらから離れても大丈夫なのであろうか?」

「はい、俺が集中している間は。今朝もバアルの手に乗っている間も少しの間は保つことが出来ていたんで」

 言いながらアオイ殿は、手のひらの上にいる自身の分身と何やら目配せをした。そして、私の方へと手を差し出してきた。

「どうぞ」

「良いのか?」

「はい。俺もそうしたいって思っていますし、彼も思っているみたいなので。撫でてくれる時は優しくお願いします」

「うむっ、感謝する。丁重にお借りしよう」

 笑顔なアオイ殿と微笑むバアルにも頭を下げてから、アオイ殿の分身さんへと手を差し出した。小さな彼は迷うことも躊躇することもなく、私の手のひらの上へと嬉しそうに乗ってきてくれた。
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