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【新婚旅行編】十日目:その嬉しいはどちらに対してだろう
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緑の瞳が微笑んだ。目尻のシワが深くなって、緩やかに、不敵に、素敵に口角が持ち上がっていく。渋いお髭が笑っている。もう俺は、心を鷲掴みにされてしまっているってのに。
「ご心配なさらないで。今一度、お約束致します。愛しい私の妻には指一本、御髪の一本すら触れさせは致しません」
服越しでも頼もしい胸板へと手を当て会釈してから、鍛え抜かれた長身を屈める。古ぼけた石畳へと躊躇なく跪く。恭しく俺の左手を取ってくれてから、俺達の永遠の誓いの証に、魔宝石があしらわれた指輪へと口づけてくれてしまう。
ああ、ホントにズルい。ズルくて、とびきり素敵な人だ。
「信じ、てるよ……こんな、カッコいいこと……してもらわなくても……」
「大変嬉しく存じます」
その嬉しいはどちらに対してだろう。いや、どっちもなんだろうな。
バアルが立てた作戦は実にシンプルだった。
「私が此方の宝玉を取ります。恐らくその瞬間、兵士達が壁から現れてくるでしょう」
「うん」
「殲滅すれば道が開ける仕掛けだと仮定して、私めが彼らを蹴散らします。その間、アオイはコルテと共に天井近くへと飛んで避難して頂きます」
俺とバアルの間で飛んでいるコルテが了承を示すように瞬く。
合理的だ。槍は確かに長いけれども高い天井付近へと逃げてしまえば攻撃の範囲外。俺とコルテを狙うことは難しいだろう。念の為の障壁も事前に張ってもらえているし。
それに俺を守ってくれる為にバアルが気を配る必要がなくなる。俺が彼の足を引っ張らずに済む。済む……けど。
「うん……でも」
「無論、アオイとコルテにはこの老骨めのサポートをして頂きます。上空から戦況を見ることで気付かれることもあるでしょう。何か分かったことが有りましたらすぐに報告を、声援を送って頂けるだけでも私めは誰よりも強くなれます故」
見つめてくる優しい眼差しは確かに俺を頼りにしてくれていた。そう感じられるほどに彼の想いが伝わってきた。
「っ、うん! 俺とコルテも頑張るね!」
「ええ、力を合わせて此方の試練を乗り越えましょう」
もう一度、しっかりと手を繋ぐ。コルテも俺達の手の上に止まってから、鮮やかに瞬いた。えいえいおーで覚悟を決めた。
俺と視線を交わしてから頷いたバアルが宝玉へと手を伸ばす。石で作られた部屋は、いっそ不気味なくらいに静寂を保っていた。彼の白い指先が闇夜のように黒く、不思議なほどに目を惹かれる宝玉に触れるまでは。
大きな手のひらが宝玉を掴み取る。瞬間、何かのスイッチを押したかのように、カチリと嫌な音がして。
地震でも起こったかのような地響きと共に、部屋の壁に描かれていた兵士達が息を吹き返した。槍を手にした屈強な腕が、鎧を纏う筋骨隆々な身体が、二次元の壁を破るようにヒビ割れた壁から次々と俺達に向かって這い出してくる。
「ひっ……やっ、やっぱり来た! バアルっ、コルテっ」
予測していても目の前で起きているホラーな展開は、俺の心を怖気づかせた。でも、バアルとコルテは頼もしい。
「大丈夫、私めにお任せを。全て蹴散らしてみせます故」
額に口づけてくれて、微笑みかけてくれて、心が押し潰されそうな恐怖から俺を容易く助け出してくれた。
コルテもやる気十分だ。その煌めくボディを更にピカピカと光らせてから、俺を宙へと連れて行ってくれる。身体が風船になってしまったかのよう。ふわりと天井へと向かって浮かび始めた。
咄嗟に手を伸ばしていた俺にバアルが微笑む。その手は届かなかったし、繋いではもらえなかった。
「バアル……っ」
コルテによって俺が安全圏まで無事浮上出来たのと同時だった。愛しい彼の姿が、武器を手にして飛び掛かってきた兵士達によって見えなくなってしまったのは。
「ご心配なさらないで。今一度、お約束致します。愛しい私の妻には指一本、御髪の一本すら触れさせは致しません」
服越しでも頼もしい胸板へと手を当て会釈してから、鍛え抜かれた長身を屈める。古ぼけた石畳へと躊躇なく跪く。恭しく俺の左手を取ってくれてから、俺達の永遠の誓いの証に、魔宝石があしらわれた指輪へと口づけてくれてしまう。
ああ、ホントにズルい。ズルくて、とびきり素敵な人だ。
「信じ、てるよ……こんな、カッコいいこと……してもらわなくても……」
「大変嬉しく存じます」
その嬉しいはどちらに対してだろう。いや、どっちもなんだろうな。
バアルが立てた作戦は実にシンプルだった。
「私が此方の宝玉を取ります。恐らくその瞬間、兵士達が壁から現れてくるでしょう」
「うん」
「殲滅すれば道が開ける仕掛けだと仮定して、私めが彼らを蹴散らします。その間、アオイはコルテと共に天井近くへと飛んで避難して頂きます」
俺とバアルの間で飛んでいるコルテが了承を示すように瞬く。
合理的だ。槍は確かに長いけれども高い天井付近へと逃げてしまえば攻撃の範囲外。俺とコルテを狙うことは難しいだろう。念の為の障壁も事前に張ってもらえているし。
それに俺を守ってくれる為にバアルが気を配る必要がなくなる。俺が彼の足を引っ張らずに済む。済む……けど。
「うん……でも」
「無論、アオイとコルテにはこの老骨めのサポートをして頂きます。上空から戦況を見ることで気付かれることもあるでしょう。何か分かったことが有りましたらすぐに報告を、声援を送って頂けるだけでも私めは誰よりも強くなれます故」
見つめてくる優しい眼差しは確かに俺を頼りにしてくれていた。そう感じられるほどに彼の想いが伝わってきた。
「っ、うん! 俺とコルテも頑張るね!」
「ええ、力を合わせて此方の試練を乗り越えましょう」
もう一度、しっかりと手を繋ぐ。コルテも俺達の手の上に止まってから、鮮やかに瞬いた。えいえいおーで覚悟を決めた。
俺と視線を交わしてから頷いたバアルが宝玉へと手を伸ばす。石で作られた部屋は、いっそ不気味なくらいに静寂を保っていた。彼の白い指先が闇夜のように黒く、不思議なほどに目を惹かれる宝玉に触れるまでは。
大きな手のひらが宝玉を掴み取る。瞬間、何かのスイッチを押したかのように、カチリと嫌な音がして。
地震でも起こったかのような地響きと共に、部屋の壁に描かれていた兵士達が息を吹き返した。槍を手にした屈強な腕が、鎧を纏う筋骨隆々な身体が、二次元の壁を破るようにヒビ割れた壁から次々と俺達に向かって這い出してくる。
「ひっ……やっ、やっぱり来た! バアルっ、コルテっ」
予測していても目の前で起きているホラーな展開は、俺の心を怖気づかせた。でも、バアルとコルテは頼もしい。
「大丈夫、私めにお任せを。全て蹴散らしてみせます故」
額に口づけてくれて、微笑みかけてくれて、心が押し潰されそうな恐怖から俺を容易く助け出してくれた。
コルテもやる気十分だ。その煌めくボディを更にピカピカと光らせてから、俺を宙へと連れて行ってくれる。身体が風船になってしまったかのよう。ふわりと天井へと向かって浮かび始めた。
咄嗟に手を伸ばしていた俺にバアルが微笑む。その手は届かなかったし、繋いではもらえなかった。
「バアル……っ」
コルテによって俺が安全圏まで無事浮上出来たのと同時だった。愛しい彼の姿が、武器を手にして飛び掛かってきた兵士達によって見えなくなってしまったのは。
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