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【新婚旅行編】十日目:だって、バアルが俺に言ってくれたんだから
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大丈夫、私めにお任せを。全て蹴散らしてみせます故。
柔らかく微笑みながらバアルはそう言ってくれた。俺を安心させようと額に口づけてくれたんだ。
周囲の壁から突然現れた、長い槍と大きな盾を手にした兵士達。俺達が手にした宝玉を取り戻すべく現れた彼らによってたちまち囲まれ、今にも襲いかかられそうになっていた最中、バアルは確かに俺にそう約束してくれたんだ。
信じている。ちゃんと分かっている。俺のバアルは強いんだって。バアルが俺に嘘をついたことはないんだって。今までも、これからも。だから。
「バアルっ! 負けないでっ!!」
コルテの助けにより浮かび上がり、天井付近まで逃げ延びていた俺の眼下。武器を手にした古代の兵士達が、一匹の獲物へと我先にとたかるように群がっているそこへと、ほんのさっきまで愛しい彼の姿が見えていたそこへと力の限り叫ぶ。
バアルが言ってくれたんだから。俺が応援したら、誰よりも強くなれるんだって。
だから、もう一度……いや、何度だって。彼の無事な姿を見ることが出来るまで、彼が全てに打ち勝ってくれるその時まで、この声を枯らすまいと息を大きく吸い込んだ。
「バア、っ」
咄嗟に俺は口を閉じてしまっていた。閉じざるを得なかった。猛烈な突風が、俺の顔を横殴りにするかのように吹きつけてきたから。
ここは、多分地下十三階くらい。窓なんてありゃしない。そんな場所で台風の中にいるような強風を起こせる人なんて。俺には一人しか思い浮かばなかった。
あの光景しか思い浮かばなかった。投影石に録画されている動画を再生して何度も見た彼の勇姿。レダさんによって鍛え上げられた兵士さんの中でも更に優秀な方々を相手取り、たった一人で勝利を収めた際の鮮やかでダイナミックな一撃。竜巻を巻き起こしてしまう程に強烈な回転蹴りを。
『ありがとうございます、アオイ』
穏やかな低音が頭の中に直接響いた。誰の声かなんて、考えるまでもない。
「バアル!」
突風によって舞い上がった砂ぼこりが徐々に収まっていく。視界が晴れた先に見えたのは。
部屋を埋め尽くさんばかりに現れていた兵士達が、人形のように力なく石の床へと倒れ伏している。
見るからに戦闘続行不可能になってしまっている彼らが積み重なるようにして出来ている人垣の真ん中。台風の目のようにキレイに空いた小さな一箇所で、スポットライトを浴びるかのように彼は佇んでいた。
遠目から見ても怪我をしてしまっているようには見えない。寄り添うように俺の側に居てくれているコルテが、嬉しそうにピカピカとそのメタリックなボディを輝かせていた。
「バアルっ……良かった、無事で……」
自然と声が漏れると共に力が抜けていく。そこで初めて気がついた。無意識の内に身体を強張らせてしまっていたことに。
白い手が上品な所作で服についてしまった埃を払い、どこからか取り出した銀の櫛で後ろへと緩やかに撫でつけている白い髪を整えていく。俺からはどこもかしこもカッコいいまま。乱れているようには見えなかったんだけれども。
手早く身嗜みを整えたところで、長い睫毛に縁取られた緑の瞳がこちらを見上げた。優しく微笑んでくれてから、何も持っていなかった手の上に手品のように宝玉を取り出して、何事もなかったかのようにひらひらと手を振ってくれた。
バアルがもう一度念入りに安全を確認した後、コルテがゆっくりと俺を彼の元へと下ろしてくれる。その最中だった。
部屋の真ん中にある台座の側に居たバアルを中心に、ドーナッツの輪のように積み重なっていた古代の兵士さん達。完全に機能を停止したかのように倒れていた彼らが、普通の人にしか見えなかった彼らが風化した石のようにサラサラと崩れていく。
みるみる内にただの砂の山になってしまっていた。
柔らかく微笑みながらバアルはそう言ってくれた。俺を安心させようと額に口づけてくれたんだ。
周囲の壁から突然現れた、長い槍と大きな盾を手にした兵士達。俺達が手にした宝玉を取り戻すべく現れた彼らによってたちまち囲まれ、今にも襲いかかられそうになっていた最中、バアルは確かに俺にそう約束してくれたんだ。
信じている。ちゃんと分かっている。俺のバアルは強いんだって。バアルが俺に嘘をついたことはないんだって。今までも、これからも。だから。
「バアルっ! 負けないでっ!!」
コルテの助けにより浮かび上がり、天井付近まで逃げ延びていた俺の眼下。武器を手にした古代の兵士達が、一匹の獲物へと我先にとたかるように群がっているそこへと、ほんのさっきまで愛しい彼の姿が見えていたそこへと力の限り叫ぶ。
バアルが言ってくれたんだから。俺が応援したら、誰よりも強くなれるんだって。
だから、もう一度……いや、何度だって。彼の無事な姿を見ることが出来るまで、彼が全てに打ち勝ってくれるその時まで、この声を枯らすまいと息を大きく吸い込んだ。
「バア、っ」
咄嗟に俺は口を閉じてしまっていた。閉じざるを得なかった。猛烈な突風が、俺の顔を横殴りにするかのように吹きつけてきたから。
ここは、多分地下十三階くらい。窓なんてありゃしない。そんな場所で台風の中にいるような強風を起こせる人なんて。俺には一人しか思い浮かばなかった。
あの光景しか思い浮かばなかった。投影石に録画されている動画を再生して何度も見た彼の勇姿。レダさんによって鍛え上げられた兵士さんの中でも更に優秀な方々を相手取り、たった一人で勝利を収めた際の鮮やかでダイナミックな一撃。竜巻を巻き起こしてしまう程に強烈な回転蹴りを。
『ありがとうございます、アオイ』
穏やかな低音が頭の中に直接響いた。誰の声かなんて、考えるまでもない。
「バアル!」
突風によって舞い上がった砂ぼこりが徐々に収まっていく。視界が晴れた先に見えたのは。
部屋を埋め尽くさんばかりに現れていた兵士達が、人形のように力なく石の床へと倒れ伏している。
見るからに戦闘続行不可能になってしまっている彼らが積み重なるようにして出来ている人垣の真ん中。台風の目のようにキレイに空いた小さな一箇所で、スポットライトを浴びるかのように彼は佇んでいた。
遠目から見ても怪我をしてしまっているようには見えない。寄り添うように俺の側に居てくれているコルテが、嬉しそうにピカピカとそのメタリックなボディを輝かせていた。
「バアルっ……良かった、無事で……」
自然と声が漏れると共に力が抜けていく。そこで初めて気がついた。無意識の内に身体を強張らせてしまっていたことに。
白い手が上品な所作で服についてしまった埃を払い、どこからか取り出した銀の櫛で後ろへと緩やかに撫でつけている白い髪を整えていく。俺からはどこもかしこもカッコいいまま。乱れているようには見えなかったんだけれども。
手早く身嗜みを整えたところで、長い睫毛に縁取られた緑の瞳がこちらを見上げた。優しく微笑んでくれてから、何も持っていなかった手の上に手品のように宝玉を取り出して、何事もなかったかのようにひらひらと手を振ってくれた。
バアルがもう一度念入りに安全を確認した後、コルテがゆっくりと俺を彼の元へと下ろしてくれる。その最中だった。
部屋の真ん中にある台座の側に居たバアルを中心に、ドーナッツの輪のように積み重なっていた古代の兵士さん達。完全に機能を停止したかのように倒れていた彼らが、普通の人にしか見えなかった彼らが風化した石のようにサラサラと崩れていく。
みるみる内にただの砂の山になってしまっていた。
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