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【新婚旅行編】十日目:嬉しいんだけれども、男としては何だか悔しい
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扉に描かれていた通りのお辞儀やらを行ったことで開くことが出来た扉。その大きくも黒い入り口をそっと覗いてみると階段が見えた。
遺跡と同じく石で作られているであろう段差の一つ一つは決して高くはない。急でもない。けれどもその行き着く先が暗がりに覆われていて見えないせいだろう。地の底にまで続いてしまっているような。
そこまで余計な考えを働かせてしまったところで、背筋がぞくりと寒くなっていた。周囲の温度はジャングルに、この遺跡を覆い隠さんとひしめくように生えている木々に囲まれているだけあって、空気は肌にまとわりつくような湿り気を帯びている。不快なほどに温かいというのに。
「結構……暗そう、だね……」
「ええ」
応えながらバアルはその筋肉質な長い腕で俺の肩を抱き寄せてくれた。俺の不安を感じ取って心配してくれたんだろうか。顔には出していないつもりだったんだけど。ホントに彼は、いつも俺よりも俺のことを分かってくれている。
カッコよくて頼もしい、シャープな横顔をそっと見つめていれば、すぐに鮮やかな緑の瞳に見つかってしまった。悪いことをしてはいないのに、心臓がどくりと跳ねてしまう。そればかりか、視線を交わし続けている間にどんどんと駆け足になっていってしまって。
これ以上はと、逸らしてしまいたいのだけれども逸らせずにいると優しく微笑みかけられた。凛々しい眉も、知的で冷静な眼差しも、渋いお髭が似合う口元も、どれもがふっと綻んでいく様に、心の奥を悪戯に摘まれたような心地がしてしまう。嬉しいんだけれども、男としては何だか悔しい。
「ホンっと……カッコいいね、俺のバアルはさ……」
つい溜め息と一緒に込み上げてきていた気持ちを吐き出してしまっても、大人な彼にとっては何のその。打って変わって子供のように無邪気な微笑みを向けられてしまった。
「おや、これはこれは……思いがけないお褒めの言葉、誠に嬉しく存じます」
……分かっててやってたんじゃないの?
ご機嫌そうに触角を揺らし、羽をはためかせている彼に向かって尋ねてやりたくなったのを飲み込んだ。
だって、バアルのことだ。苦し紛れな俺の言葉ですらも、優しく包み込んでくれて、さらなる喜びで俺の心をときめかせにくるに決まっている。今までだって、そうやって俺は彼への好きを募らせていっているんだからさ。きっと、これからも。
ぽん、と温かな手のひらが頭に乗せられる。しなやかな指が短めの俺の髪を、指通りを楽しんでいるかのように梳いて、撫でてくれ始める。宥めてくれているつもりなんだろうか。
胸の内はまだドキドキと乱れてしまっている。けれどもさっきよりは明らかにマシだ。理由がポジティブなものに変わったから。バアルのお陰で。
改めて暗くて長そうな階段を見つめる。驚くほどに怖さはなくなってしまっていた。冷静に今俺達に必要な物を考えることが出来ていた。
「先に進むには……何か、灯りは必要だよね? 火を灯す術でも使おうか?」
指の先に火を灯す、または光を灯す。バアルから習った術の中で基礎とされているそれらの術を、俺はようやく使いこなすまでに至っていた。
最初は灯すだけでもひと苦労。ほんの豆粒程度の小ささの火や光を灯すだけでゼーハーゼーハー息は乱れ、広いグラウンドを大きく外回りで何周も走りきったかのような疲れに襲われてしまっていた。
でも、今はバアル程ではないけれども、それなりに余裕がある程度には。身体を温める準備運動程度の労力で、ロウソク位の火や光を灯せるようになったのだ。
それらの派生である僅かな量の水を出現させたり、風を起こしたりするのは元々の俺の魔力との相性が悪いせいか、まだまだ失敗してしまうんだけどさ。
俺の提案にバアルは頷いてはくれた。けれども、させてくれる訳ではないみたい。
遺跡と同じく石で作られているであろう段差の一つ一つは決して高くはない。急でもない。けれどもその行き着く先が暗がりに覆われていて見えないせいだろう。地の底にまで続いてしまっているような。
そこまで余計な考えを働かせてしまったところで、背筋がぞくりと寒くなっていた。周囲の温度はジャングルに、この遺跡を覆い隠さんとひしめくように生えている木々に囲まれているだけあって、空気は肌にまとわりつくような湿り気を帯びている。不快なほどに温かいというのに。
「結構……暗そう、だね……」
「ええ」
応えながらバアルはその筋肉質な長い腕で俺の肩を抱き寄せてくれた。俺の不安を感じ取って心配してくれたんだろうか。顔には出していないつもりだったんだけど。ホントに彼は、いつも俺よりも俺のことを分かってくれている。
カッコよくて頼もしい、シャープな横顔をそっと見つめていれば、すぐに鮮やかな緑の瞳に見つかってしまった。悪いことをしてはいないのに、心臓がどくりと跳ねてしまう。そればかりか、視線を交わし続けている間にどんどんと駆け足になっていってしまって。
これ以上はと、逸らしてしまいたいのだけれども逸らせずにいると優しく微笑みかけられた。凛々しい眉も、知的で冷静な眼差しも、渋いお髭が似合う口元も、どれもがふっと綻んでいく様に、心の奥を悪戯に摘まれたような心地がしてしまう。嬉しいんだけれども、男としては何だか悔しい。
「ホンっと……カッコいいね、俺のバアルはさ……」
つい溜め息と一緒に込み上げてきていた気持ちを吐き出してしまっても、大人な彼にとっては何のその。打って変わって子供のように無邪気な微笑みを向けられてしまった。
「おや、これはこれは……思いがけないお褒めの言葉、誠に嬉しく存じます」
……分かっててやってたんじゃないの?
ご機嫌そうに触角を揺らし、羽をはためかせている彼に向かって尋ねてやりたくなったのを飲み込んだ。
だって、バアルのことだ。苦し紛れな俺の言葉ですらも、優しく包み込んでくれて、さらなる喜びで俺の心をときめかせにくるに決まっている。今までだって、そうやって俺は彼への好きを募らせていっているんだからさ。きっと、これからも。
ぽん、と温かな手のひらが頭に乗せられる。しなやかな指が短めの俺の髪を、指通りを楽しんでいるかのように梳いて、撫でてくれ始める。宥めてくれているつもりなんだろうか。
胸の内はまだドキドキと乱れてしまっている。けれどもさっきよりは明らかにマシだ。理由がポジティブなものに変わったから。バアルのお陰で。
改めて暗くて長そうな階段を見つめる。驚くほどに怖さはなくなってしまっていた。冷静に今俺達に必要な物を考えることが出来ていた。
「先に進むには……何か、灯りは必要だよね? 火を灯す術でも使おうか?」
指の先に火を灯す、または光を灯す。バアルから習った術の中で基礎とされているそれらの術を、俺はようやく使いこなすまでに至っていた。
最初は灯すだけでもひと苦労。ほんの豆粒程度の小ささの火や光を灯すだけでゼーハーゼーハー息は乱れ、広いグラウンドを大きく外回りで何周も走りきったかのような疲れに襲われてしまっていた。
でも、今はバアル程ではないけれども、それなりに余裕がある程度には。身体を温める準備運動程度の労力で、ロウソク位の火や光を灯せるようになったのだ。
それらの派生である僅かな量の水を出現させたり、風を起こしたりするのは元々の俺の魔力との相性が悪いせいか、まだまだ失敗してしまうんだけどさ。
俺の提案にバアルは頷いてはくれた。けれども、させてくれる訳ではないみたい。
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