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【新婚旅行編】十日目:決意を新たに、振り返らずに
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「ありがとう。それで、その文章からさ……サ、タ、ン、を……その三つの文字を抜いてから、読んでみてくれない?」
俺が知っている、定番中の定番な暗号と同じパターンだったら、これで。
「畏まりました」
バアルはすぐに納得したように微笑んだ。バアルさんも気付いたんだろう。いや、もう、二人の頭の中には正解の文章が出来上がっているのかも。
「では、改めて読み上げさせて頂きます……ほしをひかりのやでいよ……星を光の矢で射よ、となりますね」
「星を、光の矢で……あっ」
遅れて俺が思い浮かべた星は、頷くバアルとバアルさんと同じ物に違いない。
「ええ、アオイさえ宜しければ、直ちに試してみたいと存じますが」
「うん、お願い、バアル。やってみて?」
「承りました」
バアルはまるで俺を撫でてくれるように鏡に触れてから離れていった。少し遠くに映っている彼が、長く筋肉質な腕を天井へと向かってゆらりと上げる。軽く伸ばした人差し指に、一番星のような輝きが灯った。
真剣な眼差しが見据えている先は星の彫像だろう。バアルは照準を合わせるように腕の角度を調整している。
コルテは応援しているみたい。バアルの瞳と似た緑の光を瞬かせながら、ふわふわと側で飛んでいた。
不意に眩い光が鏡を緑色に染め上げた。まだ光が収まらない内に、ポーンと明るい音が鳴った。聞き覚えのある音だった。
光が収まってすぐに聞こえたのは嬉しい報告と扉が開く音。見えたのは、褒めて欲しいとばかりに羽をはためかせて微笑むバアルの姿だった。
「ありがとう、バアル。俺達の部屋の扉も開いたみたいっ、バアルのお陰で次に進めそうだよ」
「いえ、アオイが見つけてくれたヒントがあってのことでございますので」
「ふふ、じゃあ、皆のお陰だね」
「ええ」
先へと進む扉も開けた、バアルとも鏡を通してだけど顔を見ながら会話することが出来る。良いことづくめで浮かれてしまっていた俺は気付けなかった。
「次の部屋にも、此方と同じ鏡があると良いのですが……」
バアルさんが言い辛そうに呟くまで。
「あ」
間の抜けた声を上げてしまったのと時を同じくして、バアルの表情がみるみる内に曇っていってしまう。
「お、重いだろうけど、頑張れば持っていけるんじゃ」
「難しいかと。台座に固定されております故、持ち出すのであれば……」
濁した先は言葉にしてくれなくても分かった。
「……壊しちゃうのは、ダメだね、絶対に」
「……ええ」
和やかだった空気が重く静まり返っていく。そんな最中、いち早く動いたのはコルテだった。チリンチリン!! と俺達を励ますような音を鳴らしてくれたんだ。
「左様でございますね。いつまでも鏡の前に居る訳には……今日の目的は、アオイと共にこの遺跡のお宝を手にすることでございます故」
「そう、だよね……」
そうだ。ここに居てもバアルの寂しさを完全には拭えやしない。ちゃんと合流してから、いっぱいぎゅってしてあげないと!
「うんっ、頑張るよ、俺!」
「私も頑張ります。そちらの私、アオイをどうか宜しくお願い致します」
「ええ、必ずや私達の妻を笑顔のまま、そちらへと導きます」
「……お願い致しますね」
鏡に映るバアル。見えているのに遠い彼と鏡越しに手を合わせてから、俺は手を振った。
振り返りはしなかった。多分、バアルも。信じていたから。すぐにまた会えるって。
俺が知っている、定番中の定番な暗号と同じパターンだったら、これで。
「畏まりました」
バアルはすぐに納得したように微笑んだ。バアルさんも気付いたんだろう。いや、もう、二人の頭の中には正解の文章が出来上がっているのかも。
「では、改めて読み上げさせて頂きます……ほしをひかりのやでいよ……星を光の矢で射よ、となりますね」
「星を、光の矢で……あっ」
遅れて俺が思い浮かべた星は、頷くバアルとバアルさんと同じ物に違いない。
「ええ、アオイさえ宜しければ、直ちに試してみたいと存じますが」
「うん、お願い、バアル。やってみて?」
「承りました」
バアルはまるで俺を撫でてくれるように鏡に触れてから離れていった。少し遠くに映っている彼が、長く筋肉質な腕を天井へと向かってゆらりと上げる。軽く伸ばした人差し指に、一番星のような輝きが灯った。
真剣な眼差しが見据えている先は星の彫像だろう。バアルは照準を合わせるように腕の角度を調整している。
コルテは応援しているみたい。バアルの瞳と似た緑の光を瞬かせながら、ふわふわと側で飛んでいた。
不意に眩い光が鏡を緑色に染め上げた。まだ光が収まらない内に、ポーンと明るい音が鳴った。聞き覚えのある音だった。
光が収まってすぐに聞こえたのは嬉しい報告と扉が開く音。見えたのは、褒めて欲しいとばかりに羽をはためかせて微笑むバアルの姿だった。
「ありがとう、バアル。俺達の部屋の扉も開いたみたいっ、バアルのお陰で次に進めそうだよ」
「いえ、アオイが見つけてくれたヒントがあってのことでございますので」
「ふふ、じゃあ、皆のお陰だね」
「ええ」
先へと進む扉も開けた、バアルとも鏡を通してだけど顔を見ながら会話することが出来る。良いことづくめで浮かれてしまっていた俺は気付けなかった。
「次の部屋にも、此方と同じ鏡があると良いのですが……」
バアルさんが言い辛そうに呟くまで。
「あ」
間の抜けた声を上げてしまったのと時を同じくして、バアルの表情がみるみる内に曇っていってしまう。
「お、重いだろうけど、頑張れば持っていけるんじゃ」
「難しいかと。台座に固定されております故、持ち出すのであれば……」
濁した先は言葉にしてくれなくても分かった。
「……壊しちゃうのは、ダメだね、絶対に」
「……ええ」
和やかだった空気が重く静まり返っていく。そんな最中、いち早く動いたのはコルテだった。チリンチリン!! と俺達を励ますような音を鳴らしてくれたんだ。
「左様でございますね。いつまでも鏡の前に居る訳には……今日の目的は、アオイと共にこの遺跡のお宝を手にすることでございます故」
「そう、だよね……」
そうだ。ここに居てもバアルの寂しさを完全には拭えやしない。ちゃんと合流してから、いっぱいぎゅってしてあげないと!
「うんっ、頑張るよ、俺!」
「私も頑張ります。そちらの私、アオイをどうか宜しくお願い致します」
「ええ、必ずや私達の妻を笑顔のまま、そちらへと導きます」
「……お願い致しますね」
鏡に映るバアル。見えているのに遠い彼と鏡越しに手を合わせてから、俺は手を振った。
振り返りはしなかった。多分、バアルも。信じていたから。すぐにまた会えるって。
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