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【新婚旅行編】十日目:結局、変わらないじゃないか
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胸の奥に火が灯ったみたい。燃えるように熱い。それに、何だかもどかしい。不思議な気分に襲われながらも、俺は何とか彼の期待に応えようとした。
小刻みに震えてしまっている唇を、淡い光を帯びた羽の先へとそっと押し当てた。見つめ合っている彼の瞳が、より嬉しそうに細められた。
冷たい。でも、氷のように尖った冷たさではない。
硬い。でも、物のように無機質な感じではない。生きているんだって、ちゃんとバアルの一部なんだって感じがする。何でなのかは分からないけれども。
一度、触れてしまえばハードルが下がるもんなんだろうか。感触を確かめるように少しズラして触れた二度目は、すんなりと。もっと触れてみたくなってしまっていた三度目なんて、続けて出来てしまっていた。
まだ一枚めなのに、その大きな面積の全てに口づけようとしているかのように繰り返し触れてしまっていた。そんな俺から一時も目を離さないバアルが声を抑えることもなく笑う。
「お気に召して頂けたようで、大変嬉しく存じます」
「あ、ぅ……ごめん……」
「何故、謝られる必要が? 私は愛しい妻に触れて頂けている喜びを、この上ない幸福を噛み締めているというのに」
「う……そう、だね……」
何で謝ったのか。自身の心に問いかけてみれば、呆気ないほどにすぐに返ってきた。なんか恥ずかしかったから、と。バアルに喜んでもらうよりも、自分が夢中になっちゃっていたから、と。
結局、変わらないじゃないか。ごく普通にバアルとするキスじゃなくても、夢中になっちゃって。
「ですが、些か寂しくはございますね」
「へ?」
思いがけない単語に慌ててバアルを見れば、緑の瞳がちょっぴり不満気に細められていた。楽しそうだった笑顔もなくなってしまっている。
「羽は私の一部、そちらをこれ程までに気に入って頂けていることに関しては誠に嬉しく存じます。ですが……」
ずっと受け身でいてくれていたバアルの手が、俺の手を握ってきた。自分の元へと引き寄せようとしてくる力は、優しいのだけれども少し強い。仮に抗おうとしても難しいだろう。最終的には確実に引き寄せられてしまいそう。まぁ、そもそも抵抗する気なんてサラサラないのだけれども。
手のひらが形のいい唇に触れる。柔らかな温もりと一緒に触れた吐息が熱い。
「アオイが夢中になって下さると、そう仰ってくれていたのは此方では?」
一体、彼は、どれだけ俺の心を鷲掴めば気が済むんだろうか。
最高速度で俺の心をぶち抜いていったときめきは最大級。こんな状況でもなければ、しばらくの間はぼうっとしてしまっていただろう。でも、今は。
「っ、えっと……それって、その……」
聞きたいっていう強い気持ちが俺の口を動かしていた。
いや、まさか、自分の身体の一部に対してだなんて、そんな。
頭の中では否定の言葉が浮かんでくるものの、胸の内では期待が膨らんでいってしまうばかり。バアルもそんな俺の気持ちに応えようとしてくれたんだろうか。
「……左様で、ございますね」
お願いしなくとも、すんなりと認めてくれただけじゃない。
「私の羽へとそれは熱心に、健気に口づけて下さる貴方様を見て……本日、私めの分身に抱いていたような……大人気ない嫉妬心を抱いてしまってはおりました」
「っ、バアル……」
込み上げてきたのは、愛おしさと喜びだった。
堪えきれない衝動のままに俺はバアルに飛びついてしまっていた。今度は俺が照れくさそうに微笑んでいるその唇を奪おうとして。
奪えなかった。
そっと押しとどめる形で触れてきたのは、またしてもひんやりとした硬さだった。
目元だけしか見えないけれども、目は口ほどにとよく言ったもので。鮮やかな緑の瞳はそれはもう嬉しそうににんまりと微笑んでいる。
「アオイ……此方は最後に賜ってくれるのでは?」
「うっ……」
「他のところにも、して頂けるのでしょう? そも、アオイが望んでくれた羽にも、まだ十分には賜ってもらえておりませんが?」
「それは……そう、なんだけど……」
透けて見える形のいい唇には届きそうで届かない。決して触れ合わせてはくれまいと俺と彼とを隔てている羽も退けてくれる様子はない。
「アオイ……私も貴方様から最後に此方へと賜われるのを心待ちにしております。ですから……」
「はいぃ……頑張らせてもらいまふ……」
宥めるようにそう告げられて、俺は我慢することにした。
いい子ですね、と褒めてもらえただけで現金にもやる気が湧いてきたことは俺の胸の内にだけ留めておいた。
小刻みに震えてしまっている唇を、淡い光を帯びた羽の先へとそっと押し当てた。見つめ合っている彼の瞳が、より嬉しそうに細められた。
冷たい。でも、氷のように尖った冷たさではない。
硬い。でも、物のように無機質な感じではない。生きているんだって、ちゃんとバアルの一部なんだって感じがする。何でなのかは分からないけれども。
一度、触れてしまえばハードルが下がるもんなんだろうか。感触を確かめるように少しズラして触れた二度目は、すんなりと。もっと触れてみたくなってしまっていた三度目なんて、続けて出来てしまっていた。
まだ一枚めなのに、その大きな面積の全てに口づけようとしているかのように繰り返し触れてしまっていた。そんな俺から一時も目を離さないバアルが声を抑えることもなく笑う。
「お気に召して頂けたようで、大変嬉しく存じます」
「あ、ぅ……ごめん……」
「何故、謝られる必要が? 私は愛しい妻に触れて頂けている喜びを、この上ない幸福を噛み締めているというのに」
「う……そう、だね……」
何で謝ったのか。自身の心に問いかけてみれば、呆気ないほどにすぐに返ってきた。なんか恥ずかしかったから、と。バアルに喜んでもらうよりも、自分が夢中になっちゃっていたから、と。
結局、変わらないじゃないか。ごく普通にバアルとするキスじゃなくても、夢中になっちゃって。
「ですが、些か寂しくはございますね」
「へ?」
思いがけない単語に慌ててバアルを見れば、緑の瞳がちょっぴり不満気に細められていた。楽しそうだった笑顔もなくなってしまっている。
「羽は私の一部、そちらをこれ程までに気に入って頂けていることに関しては誠に嬉しく存じます。ですが……」
ずっと受け身でいてくれていたバアルの手が、俺の手を握ってきた。自分の元へと引き寄せようとしてくる力は、優しいのだけれども少し強い。仮に抗おうとしても難しいだろう。最終的には確実に引き寄せられてしまいそう。まぁ、そもそも抵抗する気なんてサラサラないのだけれども。
手のひらが形のいい唇に触れる。柔らかな温もりと一緒に触れた吐息が熱い。
「アオイが夢中になって下さると、そう仰ってくれていたのは此方では?」
一体、彼は、どれだけ俺の心を鷲掴めば気が済むんだろうか。
最高速度で俺の心をぶち抜いていったときめきは最大級。こんな状況でもなければ、しばらくの間はぼうっとしてしまっていただろう。でも、今は。
「っ、えっと……それって、その……」
聞きたいっていう強い気持ちが俺の口を動かしていた。
いや、まさか、自分の身体の一部に対してだなんて、そんな。
頭の中では否定の言葉が浮かんでくるものの、胸の内では期待が膨らんでいってしまうばかり。バアルもそんな俺の気持ちに応えようとしてくれたんだろうか。
「……左様で、ございますね」
お願いしなくとも、すんなりと認めてくれただけじゃない。
「私の羽へとそれは熱心に、健気に口づけて下さる貴方様を見て……本日、私めの分身に抱いていたような……大人気ない嫉妬心を抱いてしまってはおりました」
「っ、バアル……」
込み上げてきたのは、愛おしさと喜びだった。
堪えきれない衝動のままに俺はバアルに飛びついてしまっていた。今度は俺が照れくさそうに微笑んでいるその唇を奪おうとして。
奪えなかった。
そっと押しとどめる形で触れてきたのは、またしてもひんやりとした硬さだった。
目元だけしか見えないけれども、目は口ほどにとよく言ったもので。鮮やかな緑の瞳はそれはもう嬉しそうににんまりと微笑んでいる。
「アオイ……此方は最後に賜ってくれるのでは?」
「うっ……」
「他のところにも、して頂けるのでしょう? そも、アオイが望んでくれた羽にも、まだ十分には賜ってもらえておりませんが?」
「それは……そう、なんだけど……」
透けて見える形のいい唇には届きそうで届かない。決して触れ合わせてはくれまいと俺と彼とを隔てている羽も退けてくれる様子はない。
「アオイ……私も貴方様から最後に此方へと賜われるのを心待ちにしております。ですから……」
「はいぃ……頑張らせてもらいまふ……」
宥めるようにそう告げられて、俺は我慢することにした。
いい子ですね、と褒めてもらえただけで現金にもやる気が湧いてきたことは俺の胸の内にだけ留めておいた。
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