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【新婚旅行編】十日目:お互いが、お互いを
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「バアル……」
触れるだけのキスをしてくれてから、バアルは俺の胸元へと顔を寄せてきた。
逞しい腕がするりと腰へ回される。これから始まるであろうひと時に思いを馳せるように、愛しい彼に全てを委ねるように目を閉じた。
「…………」
高鳴る胸の鼓動だけが聞こえている。他は何にも。服をめくったり、脱がせようとしてくれる衣擦れの音や、優しく口づけてくれる音も聞こえてはこない。
それどころか動きもない。大きな手は俺の腰や背を抱き締めてくれるばかり。いつもみたいに胸元とか、尻とか、太腿とか、はたまた首とか。彼によって心地いいんだと、心地よくなれるんだと教え込まれたところに触ってきてくれそうな気配もない。
そもそも、ほんのちょっぴりでも身じろぐような気配すら。
「…………バアル?」
つい俺は彼に呼びかけてしまっていた。それも不思議で仕方がないといった声色で。いや、だって、完全にそういう雰囲気だったじゃん。したいって、俺を可愛がってくれそうな流れだったじゃん。
閉じていた目も開けていた。バアルはやっぱり動いてはいなかった。目を閉じる前と同じ。俺の胸元に顔を寄せてくれているままだった。
ややあって、バアルはのそりと顔を上げた。何だか珍しい。ワンテンポも遅れた反応といい、ゆったりな動きといい。
……もしかして、うとうとしてくれちゃってた?
そう思って見れば、ゆるりと細められた瞳は単に寛いでくれていたというよりは、優しい眠気に誘われているように見えなくも。
「……お約束は」
「へ」
「……甘やかして、頂けるのでは?」
「あっ……」
どっちも違っていた。待ってくれていた、いや、待たせてしまっていたみたい。
うっかりして俺も期待しちゃっていたから、お互いにお互いからの行動を待つっていう。何とも背中の辺りが擽ったくなってしまうことになっていたようだ。
「ごめんね、バアル……今からでも良いかな? バアルのこと、いっぱい撫でさせてもらっても……」
申し訳無く思うよりも行動をと、桜色に染まりかけている彼の頬へと手を伸ばす。
そっと添えるように触れたところで、広い背にある羽がはためいた。バアル自ら手のひらに擦り寄ってきてくれた。
「ええ、大歓迎でございます。どうか貴方様の愛らしい御手で、この老骨めを愛でて下さい」
「うん、ありがとう」
きめ細やかな肌は変わらずにしっとりと手のひらに馴染んできてくれる。一朝一夕の努力では得ることが出来ないハリの良さ、触り心地の良さである。
日頃、彼が好んで手伝ってくれている俺の手入れ。顔は勿論、全身くまなく保湿クリームや、化粧水やら何やら。多種多様なスキンケア用品を使ってくれている。
その前に彼自身もスキンケアを行ってはいるんだが、俺の時に発揮してくれている丁寧さや入念さ、時間の掛け方とはまさに真逆。手早く最低限に済ませているように見えていたんだけど。
単にバアルの手の動きが早くて、俺にはぱぱっとやっているようにしか見えなかっただけなのかもしれないな。
だって、見ていた通りの雑なケアならばこんなにも撫で心地のいい柔らかさやしっとり具合を、透明感のある白さを保てるハズがない。ホントにキレイだ。
考えながらも俺の手は、ところどころに渋いシワが刻まれている肌の滑らかさを楽しんでしまっていた。鼻筋の通った端正な顔を包み込むように両手を添えながら、無遠慮に撫で回してしまっていた。
それでも嬉しいことにバアルは心地が良さそう。目尻はふにゃりと下がり、凛々しい眉もいつも以上に緩やかな弧を描いている。ふわふわ揺れて、ぱたぱたとはためく、ご機嫌そうな動きを見せてくれている触角と羽も可愛らしい。
触れるだけのキスをしてくれてから、バアルは俺の胸元へと顔を寄せてきた。
逞しい腕がするりと腰へ回される。これから始まるであろうひと時に思いを馳せるように、愛しい彼に全てを委ねるように目を閉じた。
「…………」
高鳴る胸の鼓動だけが聞こえている。他は何にも。服をめくったり、脱がせようとしてくれる衣擦れの音や、優しく口づけてくれる音も聞こえてはこない。
それどころか動きもない。大きな手は俺の腰や背を抱き締めてくれるばかり。いつもみたいに胸元とか、尻とか、太腿とか、はたまた首とか。彼によって心地いいんだと、心地よくなれるんだと教え込まれたところに触ってきてくれそうな気配もない。
そもそも、ほんのちょっぴりでも身じろぐような気配すら。
「…………バアル?」
つい俺は彼に呼びかけてしまっていた。それも不思議で仕方がないといった声色で。いや、だって、完全にそういう雰囲気だったじゃん。したいって、俺を可愛がってくれそうな流れだったじゃん。
閉じていた目も開けていた。バアルはやっぱり動いてはいなかった。目を閉じる前と同じ。俺の胸元に顔を寄せてくれているままだった。
ややあって、バアルはのそりと顔を上げた。何だか珍しい。ワンテンポも遅れた反応といい、ゆったりな動きといい。
……もしかして、うとうとしてくれちゃってた?
そう思って見れば、ゆるりと細められた瞳は単に寛いでくれていたというよりは、優しい眠気に誘われているように見えなくも。
「……お約束は」
「へ」
「……甘やかして、頂けるのでは?」
「あっ……」
どっちも違っていた。待ってくれていた、いや、待たせてしまっていたみたい。
うっかりして俺も期待しちゃっていたから、お互いにお互いからの行動を待つっていう。何とも背中の辺りが擽ったくなってしまうことになっていたようだ。
「ごめんね、バアル……今からでも良いかな? バアルのこと、いっぱい撫でさせてもらっても……」
申し訳無く思うよりも行動をと、桜色に染まりかけている彼の頬へと手を伸ばす。
そっと添えるように触れたところで、広い背にある羽がはためいた。バアル自ら手のひらに擦り寄ってきてくれた。
「ええ、大歓迎でございます。どうか貴方様の愛らしい御手で、この老骨めを愛でて下さい」
「うん、ありがとう」
きめ細やかな肌は変わらずにしっとりと手のひらに馴染んできてくれる。一朝一夕の努力では得ることが出来ないハリの良さ、触り心地の良さである。
日頃、彼が好んで手伝ってくれている俺の手入れ。顔は勿論、全身くまなく保湿クリームや、化粧水やら何やら。多種多様なスキンケア用品を使ってくれている。
その前に彼自身もスキンケアを行ってはいるんだが、俺の時に発揮してくれている丁寧さや入念さ、時間の掛け方とはまさに真逆。手早く最低限に済ませているように見えていたんだけど。
単にバアルの手の動きが早くて、俺にはぱぱっとやっているようにしか見えなかっただけなのかもしれないな。
だって、見ていた通りの雑なケアならばこんなにも撫で心地のいい柔らかさやしっとり具合を、透明感のある白さを保てるハズがない。ホントにキレイだ。
考えながらも俺の手は、ところどころに渋いシワが刻まれている肌の滑らかさを楽しんでしまっていた。鼻筋の通った端正な顔を包み込むように両手を添えながら、無遠慮に撫で回してしまっていた。
それでも嬉しいことにバアルは心地が良さそう。目尻はふにゃりと下がり、凛々しい眉もいつも以上に緩やかな弧を描いている。ふわふわ揺れて、ぱたぱたとはためく、ご機嫌そうな動きを見せてくれている触角と羽も可愛らしい。
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