【完結】間違って地獄に落とされましたが、俺は幸せです。

白井のわ

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【新婚旅行編】十日目:小さいのに大きいだなんて、そんな摩訶不思議なことがある訳が

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「ふふ、お褒め頂き嬉しく存じます。アオイも大変お可愛らしいですよ」

「ありがと……」

「いえ」

 照れちゃっている可愛いバアルは、もう閉店してしまったみたい。すっかりいつもの余裕を取り戻してしまっている。そういうところも好きだけどさ。

 何だか彼の照れが移ってしまったような。ちょっぴり気恥ずかしい感覚を誤魔化すべく、俺は話の流れを戻そうとしていた。

「そ、それで? 不思議な感じって?」

「ああ、はい……それが……何と申してよいのか……」

 珍しいな。バアルが言葉を迷うだなんて。

 普段の彼は語彙力が豊富というか、的確なのだ。それこそ俺が、うんうん分かるっ、そうだよね! って思わず共感出来てしまうような……

 例えば食べ物だったら、食べていなくてもその美味しさが伝わってくるくらい。早く食べたいなっていう気持ちにさせられるくらいに表現力にも長けているのだ。

 時々、そのお陰で気恥ずかしくさせられちゃう時もあるけど。主に……バアルに可愛がってもらえている時に……わざわざしなくてもいい俺の現状報告とか、エッチな褒め方をされちゃう時とかにさ。

 とっ、とにもかくにもっ、そんな彼が、自身の思ったことや感じたことを歌うようにツラツラと話してくれる彼が、何を言ったらいいか分からないだなんて。俺にとっては初めてで、衝撃的で、俺からも何を言ったらいいのか分からなくなってしまっていたんだ。

 お互いに言葉を探している真っ最中という不思議な沈黙。やっぱり俺が何とかすべきだろう。そもそもの原因なのだから。

 えっと……不思議な感じ……不思議な感じ、か。

「それってさ、俺の触り方のせいだったりする? 今のバアルの羽、妖精さんみたいでさ……いつも以上に繊細そうな感じがして、慎重に触っちゃってたんだけど」

「触り方……ああ……そう、ですね……」

 何か腑に落ちたんだろうか。バアルの声は納得しているような。

「貴方様の指は華奢で、可憐でいらっしゃる」

「へ?」

 唐突な褒めに異なる気持ちが一気に押し寄せてくる。疑問が、嬉しさが、照れ臭さが。

 とはいえ、バアルは自分の考えを口にしながら整理している様子。邪魔をしない方がいいだろう。その方が、彼が感じていた不思議を言葉には表せそうだ。

 そう思い口を閉じれば、バアルはまたぽつりと呟いた。

「指先もまた、小さく愛らしい……」

「あ、ありがとう」

「にも関わらず……大きく感じます……」

「んん?」

 流石に変な声を出さずにはいられなかった。いやだって、小さいのに大きいだなんておかしいだろう。そんな摩訶不思議なことがあるハズが。

「ああ」

 息ぴったりに重なった。きっと俺と同じような考えにバアルも行き着いたんだろう。

「……アオイの指は小さい……にも関わらず、私の羽のほとんどをいっぺんに撫でてもらえてしまった……その感覚が誠に不思議で……それと同時に大変嬉しくも存じておりました」

「確かに不思議に感じちゃうね。いつもの大きさだったら、手のひら全体で撫でても……めいいっぱい腕を振らないと全部を撫でてあげられないし」

「ええ」

 行き着いてみれば単純明快。撫でられる範囲が小さくなっているから、俺が指先一つで羽全体を撫でることが出来たから、あれ? ってなってしまっていたんだろう。今ならば彼の言葉が、不思議な感じが致します、という言葉が一番ピッタリだったなって思う。

 もし俺が小さくなっちゃって、バアルの指先だけで頭を撫でてもらえちゃったら……うん、不思議に感じちゃいそうだ。
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