【完結】間違って地獄に落とされましたが、俺は幸せです。

白井のわ

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★【新婚旅行編】十一日目:明晰夢?

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 明晰夢。

 確か、夢を見ている時に、これは夢だって自覚出来るとか。それ故に、ある程度は自分の思った通りに夢の内容を操ることが出来るとか。

 そんな、説明からして魅力的な明晰夢ってヤツを、俺は今まで見たことがなかった。だからこそ、ハッキリと分かってしまったんだ。今がまさにそうだって。

 ぼんやりと開いている視界に映っているのは白い頭。金属のような光沢を帯びた二本の触角。細く長いそれらは、少し跳ねた柔らかそうな白い髪の上で、ご機嫌そうに揺れている。頭隠して……ではなく、頭しか見えていないこの光景には最近馴染みがある。

 更には胸元に感じている温かな重み。その感触は、全身を包み込んでくれている逞しい腕よりも柔らかくて滑らかな。こちらも馴染みがあるものだ。これら二つのことから、導き出される答えは一つしかない。

 バアルが甘えてきてくれている。ベッドで寝転んでいる俺の胸元に頬を擦り寄せてくれながら。

 これくらいなら前にもあったシチュエーションだろう? 夢の中ですら出てきてしまう冷静な俺が、水を差すように頭の中でツッコんできた。が、その判断は時期尚早というものだ。もう少し待ってみるといい。そうすれば、ほら、また。

 ふと胸の辺りが軽くなる。すると相変わらず薄ぼんやりとしている視界に映ったのは柔らかな笑顔。嬉しそうに細められた瞳が、若葉よりも鮮やかな緑の瞳が、俺を見つめてくれている。

 俺はちゃんと微笑み返すことが出来たのだろうか?

 流石の明晰夢といえど、第三者的な視点の切り替えは出来ないらしく分からない。けれどもバアルは目尻に刻まれた渋いシワを深めながら、俺に顔を寄せてきてくれた。喜んではくれているみたい。

 柔らかな唇が額に、頬に口づけてくれてから首元へと。肩口にその彫りの深い顔を埋めるように寄ってきてくれたかと思えば、何度目かの。素肌に硬い感触が食い込んできた。

「ん、ぅ……」

 途端にぞくぞくと背筋に淡い感覚が走っていく。

 甘く噛まれたところが熱い。ジンとしているような、ピリピリしてきているような。よく分からないが、イヤな感覚は一つもない。全部が全部、気持ちいい方に傾いている。

 バアルは労ってくれているのか、噛んだばかりのところに優しく口づけてくれている。それが、余計に。

「んっ……」

 まるで敏感になってしまっているところへと更に心地よさをおまけしてくれているようで。また俺は、確かな心地よさを感じてしまっていた。鼻にかかった声を上げてしまっていた。

 それでもバアルはマイペースに軽やかなリップ音を鳴らしている。繰り返し唇を擦り寄せてきたり、押しつけてきたり、時にはそっと吸ってきたり。

 夢の中でも寝惚けている俺に対して、バアルが甘噛みをしてくれている。これだけでも十分にレアなシチュエーションだ。

 でも、明晰夢ってヤツはスゴい。更に俺を驚かせようとしてくるんだから。

「は、ぅ……」

 ついさっきまでバアルが擦り寄ってきてくれていた胸元に感じた淡い感覚。まさかと思って視線を下げれば、骨ばった白い手が見えた。

 俺よりもひと回りは大きな手はゴツゴツしていて男らしい。けれども同じくらいにキレイで、繊細にも感じる。まさに理想って感じの手だ。それが今、俺の胸板を優しく撫で回している。
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