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【新婚旅行編】十一日目:じゃあ、最初っからじゃん……!!
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ピンときていない俺に出来ることといえば、尋ねられた通りに現状を確認することだけだ。俺の夢とはいえ、バアルに申し訳なさそうな顔はさせたくはない。
余韻のせいだろうが、触れられているところがジンとする。それくらいだ。別にイヤな感覚ではないから俺にとっては問題にすらなってはいない。が、何か、と尋ねられた以上、些細なことでも伝えておくべきだろう。
「問題って訳じゃあないんだけど……ちょっとだけ熱い? かな? 触ってもらっているところが……」
「そう、ですか……安心致しました……甘噛みを許してもらえているとはいえ、此方にさせて頂いたのは初めてでした故」
「うん、大丈夫だよ、気にしないで。気持ちいいだけだったか……ん?」
甘噛み。その単語を聞いたことで、流されていた疑問が蘇ると同時に解けていた。もしかして。
「アオイ?」
身体を起こそうとしていたところで、長く引き締まった腕に抱き支えられた。バアルは不思議そうな顔をしながらも、俺を抱き起こしてくれる。
「ありがとう」
「いえ……」
彼に向かって微笑み、手を取り繋いでから視線を落とした。さっきまで彼が触れてくれていた左胸を確認した。そこには、予想していた通りの。
まるで赤い点線で乳首の周りを囲ったかのよう。それは、もうくっきりと残ってしまっている。付けてもらえてしまっている。浅い呼吸に自然と笑みが混じっていく。口角が上がっていく。
「ふふ……スゴ……ホントにバアルの歯型、付いちゃってる……カッコよくて、可愛いの……リアルだな……夢の中なのに……」
「……はい?」
俺の夢のバアルは、何やら驚いているようだった。俺の方が驚きだってのに。夢の中でも乳首だけで、とびきり気持ちよくなれちゃったりさ。
「アオイ……今、何と?」
「ん……? カッコよくて、可愛いバアルの歯型、付いてるなって……」
「んんっ……そちらの後、でございます」
「へ? 夢の中、なのに?」
「ふむ……成る程……」
噎せたように息を詰まらせながらお髭の似合う口元を手で覆ったかと思えば、シャープな顎に指を添えながら何やら納得したように頷き始めたり。ころころと忙しなく反応を変える彼を見ている内に、何だか胸の辺りがざわつき始める。
……何か、俺、とんでもないことをやらかしちゃっているんじゃ?
「バアル……?」
「おはようございます、アオイ」
「え? うん、おはよう? バアル」
「要は、そういうことでございます」
「はい?」
不安に駆られて呼びかければ、返ってきたのは朝の挨拶。どうしてこのタイミングでなのか。
不思議に思いながらもいつものように返せば、さらなる不思議を俺に与えてきた。そういうことって、どういうことなんだ?
「現実だということです」
「え」
「寝惚けていらっしゃったアオイは、今までの事柄の全てを、ご自身の夢だと思われていらっしゃるようですが」
「は、ぇ……?」
彼の言葉が上手く飲み込めなかった。けれども、遅れてジワジワと染み渡っていくように、現実、という単語が俺の頭にこだまのように響いていく。
でも、俺は信じられなかった。
「夢、じゃない? 明晰夢じゃ?」
「夢ではございません」
「じゃ、じゃあ、どこから?」
信じたくないと足掻いてしまっていた。だって、ただ単に寝惚けて夢だと勘違いしていただけなら、俺は。
けれどもバアルは優しく、しかし残酷なまでにハッキリと事実を突きつけてきた。
「……いつものように私めは、妻のお可愛らしい寝顔を拝見させて頂いておりました。その際中にアオイが目覚め、私めに微笑みかけてくれたのですが……覚えは?」
「っ、んな……」
じゃあ、最初っからじゃん……!!
余韻のせいだろうが、触れられているところがジンとする。それくらいだ。別にイヤな感覚ではないから俺にとっては問題にすらなってはいない。が、何か、と尋ねられた以上、些細なことでも伝えておくべきだろう。
「問題って訳じゃあないんだけど……ちょっとだけ熱い? かな? 触ってもらっているところが……」
「そう、ですか……安心致しました……甘噛みを許してもらえているとはいえ、此方にさせて頂いたのは初めてでした故」
「うん、大丈夫だよ、気にしないで。気持ちいいだけだったか……ん?」
甘噛み。その単語を聞いたことで、流されていた疑問が蘇ると同時に解けていた。もしかして。
「アオイ?」
身体を起こそうとしていたところで、長く引き締まった腕に抱き支えられた。バアルは不思議そうな顔をしながらも、俺を抱き起こしてくれる。
「ありがとう」
「いえ……」
彼に向かって微笑み、手を取り繋いでから視線を落とした。さっきまで彼が触れてくれていた左胸を確認した。そこには、予想していた通りの。
まるで赤い点線で乳首の周りを囲ったかのよう。それは、もうくっきりと残ってしまっている。付けてもらえてしまっている。浅い呼吸に自然と笑みが混じっていく。口角が上がっていく。
「ふふ……スゴ……ホントにバアルの歯型、付いちゃってる……カッコよくて、可愛いの……リアルだな……夢の中なのに……」
「……はい?」
俺の夢のバアルは、何やら驚いているようだった。俺の方が驚きだってのに。夢の中でも乳首だけで、とびきり気持ちよくなれちゃったりさ。
「アオイ……今、何と?」
「ん……? カッコよくて、可愛いバアルの歯型、付いてるなって……」
「んんっ……そちらの後、でございます」
「へ? 夢の中、なのに?」
「ふむ……成る程……」
噎せたように息を詰まらせながらお髭の似合う口元を手で覆ったかと思えば、シャープな顎に指を添えながら何やら納得したように頷き始めたり。ころころと忙しなく反応を変える彼を見ている内に、何だか胸の辺りがざわつき始める。
……何か、俺、とんでもないことをやらかしちゃっているんじゃ?
「バアル……?」
「おはようございます、アオイ」
「え? うん、おはよう? バアル」
「要は、そういうことでございます」
「はい?」
不安に駆られて呼びかければ、返ってきたのは朝の挨拶。どうしてこのタイミングでなのか。
不思議に思いながらもいつものように返せば、さらなる不思議を俺に与えてきた。そういうことって、どういうことなんだ?
「現実だということです」
「え」
「寝惚けていらっしゃったアオイは、今までの事柄の全てを、ご自身の夢だと思われていらっしゃるようですが」
「は、ぇ……?」
彼の言葉が上手く飲み込めなかった。けれども、遅れてジワジワと染み渡っていくように、現実、という単語が俺の頭にこだまのように響いていく。
でも、俺は信じられなかった。
「夢、じゃない? 明晰夢じゃ?」
「夢ではございません」
「じゃ、じゃあ、どこから?」
信じたくないと足掻いてしまっていた。だって、ただ単に寝惚けて夢だと勘違いしていただけなら、俺は。
けれどもバアルは優しく、しかし残酷なまでにハッキリと事実を突きつけてきた。
「……いつものように私めは、妻のお可愛らしい寝顔を拝見させて頂いておりました。その際中にアオイが目覚め、私めに微笑みかけてくれたのですが……覚えは?」
「っ、んな……」
じゃあ、最初っからじゃん……!!
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