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【新婚旅行編】十一日目:誰の真似でしょう?
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誰の真似をしてみるのか決まったんだろうか。宜しいでしょうか? と前置きをしてきた彼の瞳は、自信に満ちていた。
「可愛らしいのう、愛らしいのう、アオイは」
声はバアルのまま。でも、分かりやすい語尾の変化にすぐに彼の横に真似をしたであろうご本人の顔が、仏様みたいな笑顔が浮かんでくる。
バアル自身も、いつもより眉と目尻がゆるりと下がっているもんだから余計に分かりやすい。
「ふふ、分かったっ、サタン様だっ!」
「はい、正解でございます。では……」
一度、軽く咳払い。真似ようという意識から、だろうか。またしても表情が変わっていく。柔らかく微笑んでいた瞳が鋭く細められていく。
「可愛らしいな、アオイ……相変わらず透き通った瞳が美しい」
「ヨミ様っ!」
「はい、正解でございます」
満足そうに微笑むバアルが可愛くて、俺も自然とクスクス笑っていた。
次は誰の真似をしてくれるんだろうか。期待して待っていたのだけれども、また何かあったんだろうか。バアルは困ったように眉尻を下げる。
「ふむ……」
「どうかしたの、バアル?」
「いえ……お次も参考にしようと考えてみたのですが、他の皆様は私と大して変わらないかと……グリムさんにクロウさん、レタリー殿やレダ殿……スヴェン殿も私とは一人称が異なる程度で、皆様言葉遣いは丁寧ですので」
「ああ、そっか……」
そもそもの話だったのだ。
バアルは、サタン様が王様として国を治めている時から彼の右腕で。ヨミ様へと引き継がれた後も、俺が此方へと来るまでは彼を真摯に、自分のことを犠牲にしてでも支え続けていて。そんな彼のことを皆さんも、国の方々も敬っていて。
「……バアル」
「はい」
「ぎゅってして?」
「は? ……え、ええ」
困惑しながらも、バアルは俺の望みを叶えてくれた。両腕を広げて強請った俺を、その鍛え抜かれた身体で包み込むように抱き締めてくれた。
広い背中に腕を回せば、バアルは緊張しているかのように少しだけ身を硬くした。いきなりだったから、まだ戸惑っているんだろう。
「ありがとう」
「いえ……」
安心出来る温もりから身を離しても、バアルは不思議そうに俺を見つめている。
「後、バアルに膝枕したい。いっぱい頭撫でたい。いいよね?」
「それは……構いませんが……」
「ふふ、ありがとう」
どこか納得のいかない顔をしながらも、バアルは俺の膝に頭を預けてくれる形で仰向けにソファーへと寝転がった。少し乱れた髪を整えながら頭を撫でると、くるりと先の反った触覚がそわそわと揺れ始める。
閉じかけようとしていた緑の瞳が、思い出したかのようにはたと開く。見上げてきた眼差しはやっぱり不思議そうに細められていた。
「アオイ……」
「ん? なあに、バアル」
「宜しかったので? まだ、私めは……貴方様のお願いを叶えられてはいないのでは?」
「さっきのお願いは、十分叶えてもらったよ。だからさ、追加のお願いを叶えて欲しい……俺にバアルを甘やかさせて?」
「っ、ですが、それでは」
「バアル、俺のお願いを叶えてくれるんじゃなかったの?」
鈍い俺でもバアルが何を言おうとしていたのかは分かった。だから、先手を打ってやった。こう言われてしまえば、流石のバアルでも。
「はい……貴方様からのお願いであれば、何でも叶えたく存じております……」
「じゃあ、いいよね?」
「はい……」
思っていた通り。バアルは渋々ながらも俺のお願いを叶えてくれるみたい。何かを言いたそうにしていた口を閉じ、髪を梳く俺の手を受け入れてくれている。
「ふん……ふん……ふふん……」
浮かれ気分からか、自然と口ずさんでしまっていたのはバアルが時々歌ってくれていた曲。彼と踊る時にコルテが演奏してくれる、聞き慣れたクラシックのメロディー。
はたと見つめてきた緑の瞳は、最初は驚いていたもののゆるりと細められていく。
俺の鼻歌に、穏やかな低音がそっと重なった。
「可愛らしいのう、愛らしいのう、アオイは」
声はバアルのまま。でも、分かりやすい語尾の変化にすぐに彼の横に真似をしたであろうご本人の顔が、仏様みたいな笑顔が浮かんでくる。
バアル自身も、いつもより眉と目尻がゆるりと下がっているもんだから余計に分かりやすい。
「ふふ、分かったっ、サタン様だっ!」
「はい、正解でございます。では……」
一度、軽く咳払い。真似ようという意識から、だろうか。またしても表情が変わっていく。柔らかく微笑んでいた瞳が鋭く細められていく。
「可愛らしいな、アオイ……相変わらず透き通った瞳が美しい」
「ヨミ様っ!」
「はい、正解でございます」
満足そうに微笑むバアルが可愛くて、俺も自然とクスクス笑っていた。
次は誰の真似をしてくれるんだろうか。期待して待っていたのだけれども、また何かあったんだろうか。バアルは困ったように眉尻を下げる。
「ふむ……」
「どうかしたの、バアル?」
「いえ……お次も参考にしようと考えてみたのですが、他の皆様は私と大して変わらないかと……グリムさんにクロウさん、レタリー殿やレダ殿……スヴェン殿も私とは一人称が異なる程度で、皆様言葉遣いは丁寧ですので」
「ああ、そっか……」
そもそもの話だったのだ。
バアルは、サタン様が王様として国を治めている時から彼の右腕で。ヨミ様へと引き継がれた後も、俺が此方へと来るまでは彼を真摯に、自分のことを犠牲にしてでも支え続けていて。そんな彼のことを皆さんも、国の方々も敬っていて。
「……バアル」
「はい」
「ぎゅってして?」
「は? ……え、ええ」
困惑しながらも、バアルは俺の望みを叶えてくれた。両腕を広げて強請った俺を、その鍛え抜かれた身体で包み込むように抱き締めてくれた。
広い背中に腕を回せば、バアルは緊張しているかのように少しだけ身を硬くした。いきなりだったから、まだ戸惑っているんだろう。
「ありがとう」
「いえ……」
安心出来る温もりから身を離しても、バアルは不思議そうに俺を見つめている。
「後、バアルに膝枕したい。いっぱい頭撫でたい。いいよね?」
「それは……構いませんが……」
「ふふ、ありがとう」
どこか納得のいかない顔をしながらも、バアルは俺の膝に頭を預けてくれる形で仰向けにソファーへと寝転がった。少し乱れた髪を整えながら頭を撫でると、くるりと先の反った触覚がそわそわと揺れ始める。
閉じかけようとしていた緑の瞳が、思い出したかのようにはたと開く。見上げてきた眼差しはやっぱり不思議そうに細められていた。
「アオイ……」
「ん? なあに、バアル」
「宜しかったので? まだ、私めは……貴方様のお願いを叶えられてはいないのでは?」
「さっきのお願いは、十分叶えてもらったよ。だからさ、追加のお願いを叶えて欲しい……俺にバアルを甘やかさせて?」
「っ、ですが、それでは」
「バアル、俺のお願いを叶えてくれるんじゃなかったの?」
鈍い俺でもバアルが何を言おうとしていたのかは分かった。だから、先手を打ってやった。こう言われてしまえば、流石のバアルでも。
「はい……貴方様からのお願いであれば、何でも叶えたく存じております……」
「じゃあ、いいよね?」
「はい……」
思っていた通り。バアルは渋々ながらも俺のお願いを叶えてくれるみたい。何かを言いたそうにしていた口を閉じ、髪を梳く俺の手を受け入れてくれている。
「ふん……ふん……ふふん……」
浮かれ気分からか、自然と口ずさんでしまっていたのはバアルが時々歌ってくれていた曲。彼と踊る時にコルテが演奏してくれる、聞き慣れたクラシックのメロディー。
はたと見つめてきた緑の瞳は、最初は驚いていたもののゆるりと細められていく。
俺の鼻歌に、穏やかな低音がそっと重なった。
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