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【新婚旅行編】十一日目:甘いのは手つきばかりではなく
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「貴方様からの賛辞の声を一身に受けるそれらを妬まし、羨ましくは存じておりました。ですが、それだけです。誓って貴方様に不満を抱いてなど……そもそもお互い様と申しますか、私だって今しがたアオイを放ってしまい」
驚いたように見開かれた瞳。私を見つめている丸い双眸が、下がっていた眉が、小さな唇が、ふっと緩んだ。細い肩がふるふると揺れ出す。
「……アオイ?」
「ん、ふふっ、ふふふ……」
「アオイ?」
「そっか……羨ましいって思ってくれたんだ……へへ……」
「っ、アオイ……」
目尻を下げて微笑む瞳には喜びが溢れていた。蕩けるような眼差しが私にだけ向けられているという事実だけでも、胸の奥が甘く締め付けられるような心地を覚えてしまうというのに。
「可愛い……可愛いね、俺のバアルは」
伸ばされた手で、甘やかすように頭を撫でられてしまうとたちまち顔に熱が集まってしまう。これが欲しかったのだと、満たされていく喜びに目眩がしてしまいそうだ。
幸か不幸かアオイは私の変化に気付いていないらしい。花が綻ぶように優しい笑顔を浮かべたまま、私の頭を撫で回し、髪を梳いている。
よほどご機嫌麗しいのだろう。手つきだけでなく、声も甘い。それから香りも。温もりを分け合うほどに身を寄せ合ってはいないのに、私の理性を試すように、唆すように熟れた果実のような甘さが鼻を擽ってくる。
テーブルを挟んでいなければ周囲の目も構わずに魅力的な誘いに乗ってしまっていたやもしれない。そのか弱い首筋に歯を立て、アオイは私のものなのだと言外に主張してしまっていたやもしれない。
アオイは、私の胸の奥でどろりと渦巻く欲など知る由もない。何処までも続く空のように澄み渡った瞳に清らかな愛を滲ませたまま、私を愛でてくれている。
つい先程まで別の意味での忍耐を試されていたばかりだというのに。
「よしよし……ありがとう、ずっと待っていてくれて」
「アオイ……誠に嬉しいのですが、これ以上は……」
ポンッ、ポポンッ!
突如聞こえてきたそれは、私達が散々鳴らしてきたおもちゃの銃の発砲音のような。コルク栓を抜いたかのような小気味いい音を合図に、周囲の明かりが失われていく。
何処からか短い悲鳴が聞こえた。それを切っ掛けに明るかったざわめきに、驚きや不安が混じっていく。広がっていってしまう。
か弱い力が私の手を握ってくる。私が何も言わずとも、飛び立ったコルテはアオイを守るように彼の肩へと止まり、柔らかな光を放っていた。
少し力が緩んだ手を包み込むように握りながら、手の甲を優しく撫でる。曇りかけていた顔に、心和らぐ笑顔が戻る。私も自然と微笑んでいた。
屋台の明かり、虹の泡、輝く魚達。私達に夜を忘れさせてくれていた色とりどりの明かりが消え、すぐ目の前にいるアオイの愛らしい笑顔すら見辛くなってしまった時、目が眩むような輝きが空から降り注いできた。
驚いたように見開かれた瞳。私を見つめている丸い双眸が、下がっていた眉が、小さな唇が、ふっと緩んだ。細い肩がふるふると揺れ出す。
「……アオイ?」
「ん、ふふっ、ふふふ……」
「アオイ?」
「そっか……羨ましいって思ってくれたんだ……へへ……」
「っ、アオイ……」
目尻を下げて微笑む瞳には喜びが溢れていた。蕩けるような眼差しが私にだけ向けられているという事実だけでも、胸の奥が甘く締め付けられるような心地を覚えてしまうというのに。
「可愛い……可愛いね、俺のバアルは」
伸ばされた手で、甘やかすように頭を撫でられてしまうとたちまち顔に熱が集まってしまう。これが欲しかったのだと、満たされていく喜びに目眩がしてしまいそうだ。
幸か不幸かアオイは私の変化に気付いていないらしい。花が綻ぶように優しい笑顔を浮かべたまま、私の頭を撫で回し、髪を梳いている。
よほどご機嫌麗しいのだろう。手つきだけでなく、声も甘い。それから香りも。温もりを分け合うほどに身を寄せ合ってはいないのに、私の理性を試すように、唆すように熟れた果実のような甘さが鼻を擽ってくる。
テーブルを挟んでいなければ周囲の目も構わずに魅力的な誘いに乗ってしまっていたやもしれない。そのか弱い首筋に歯を立て、アオイは私のものなのだと言外に主張してしまっていたやもしれない。
アオイは、私の胸の奥でどろりと渦巻く欲など知る由もない。何処までも続く空のように澄み渡った瞳に清らかな愛を滲ませたまま、私を愛でてくれている。
つい先程まで別の意味での忍耐を試されていたばかりだというのに。
「よしよし……ありがとう、ずっと待っていてくれて」
「アオイ……誠に嬉しいのですが、これ以上は……」
ポンッ、ポポンッ!
突如聞こえてきたそれは、私達が散々鳴らしてきたおもちゃの銃の発砲音のような。コルク栓を抜いたかのような小気味いい音を合図に、周囲の明かりが失われていく。
何処からか短い悲鳴が聞こえた。それを切っ掛けに明るかったざわめきに、驚きや不安が混じっていく。広がっていってしまう。
か弱い力が私の手を握ってくる。私が何も言わずとも、飛び立ったコルテはアオイを守るように彼の肩へと止まり、柔らかな光を放っていた。
少し力が緩んだ手を包み込むように握りながら、手の甲を優しく撫でる。曇りかけていた顔に、心和らぐ笑顔が戻る。私も自然と微笑んでいた。
屋台の明かり、虹の泡、輝く魚達。私達に夜を忘れさせてくれていた色とりどりの明かりが消え、すぐ目の前にいるアオイの愛らしい笑顔すら見辛くなってしまった時、目が眩むような輝きが空から降り注いできた。
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