異世界雑貨屋は神のまにまに、

りう。

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異世界雑貨屋

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目の前に浮かぶ、きらきらと輝く光。
空を見上げれば、浮島や小惑星が、遥か彼方の天空を漂っている。

目の前に、突然現れたに、私は引き攣った笑みを浮かべることしか出来なかった。

私の記憶が間違っていなければ、私はついさっきまで喫茶店にいた筈だ。
それが、外に出ようとした瞬間、まるで別世界のように変わってしまったのだから、私の反応はあながち間違ってはいないと思う。

しかも、私は今、何処とも分からない店の前で、一人佇んでいるのだから、本当、何が何やら全く分からない。


異世界雑貨屋『月詠』


そう看板に書かれてある、小さな店。
そこに今、私は店長相手に話し込んでいた。

「それで?お客さん。何をお求めで?」
子供のように小さな店主は、私の顔を覗き込んで悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「あの………ここは、何処ですか?」
花瓶に生けられた甘い匂いの花や、ビーカーに詰められたお菓子などが所狭しと並べられた店内。
それらを落ち着かなく見つめて、私は店主に尋ねた。

「んん?見て分かんない?……ここは雑貨屋だよ。」
手持ち無沙汰に手前の瓶を眺めながら、店主はそう言う。
「あんたが今までいた世界は、この店とゲートで繋がってる。あんたはその門に引っ掛かって、この世界に来た。ま、要は迷子ってわけ。」
まだ状況が掴めない私に「座りなよ。」と言うと、店主は指を一つ鳴らした。
勘定台前の椅子が、手を触れずに動いた。

まるで魔法でも掛けたみたいな、信じられない出来事だった。



…………魔法?



そう言えば昔、似たことがあったような…





曇った硝子の窓を指でなぞるように、思い出されていく記憶。





生まれつき髪が灰色だった私は、何処にいても、好奇の目で見られていた。
私の事を化け物のように悪く言う人もいたし、態とらしい親切を押しつけてくる人もいた。
皆、私と仲良くしてくれようとしなかった。
私だけが、同じ人間じゃないみたいに。

そんな嫌な毎日が、ずっと続いていた頃だった。

ある夏の日。
近くの山で一人、遊んでいた私は、日が暮れているのも気付かず、いつの間にか辺りは真っ暗になっていた。
急いで帰ろうとしたその時、暗闇から私を呼ぶ声がした。

『……ちゃん。こっちへおいで。』

振り返ると、暗闇に大きな目玉がふたつ、浮かんでいた。
怖くて声も出ない私に向かって、化物はじりじりと躙り寄る。
闇色の目が、私を見下ろした瞬間に。
そう、その瞬間に。
魔法は起こったんだ。
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