奴隷少女は騎士となる

灰色の街。

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異常事態②

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本部に戻ってきた私達は取り敢えず寮に帰らされた。
異常事態なのでこれから緊急会議を開くらしい。
新人の私達はなす術もなく寮に帰るしかないということだ。

それにしてもこの現象、どこかでみたような気がするんだよな。
多分3年前ぐらいだったかな……
あまり覚えていない。でも、3年前ってそこまで昔じゃないよな……なのに覚えてないなんてことあるのか?
記憶でも消されたか。それとも私の勘違いなのか。
どちらにせよ今の私が出来ることは大人しくしておくこと位しかない。
連絡がくるまで休んでおこう。

15分程経ち、そろそろ昼食でも摂ろうと思っていたとき、部屋のドアがノックされた。

「ライ。カールだが、入ってもいいか?」

「どうぞ」

カール班長は険しい顔のまま私の花の写真前に立ち、重々しく口を開く。

「奴隷商人が出た」

「!!」

その言葉に息を飲む。

どうして。もしかして私の居場所がばれた?
いや、そんなはずはない。ボロは出していないし、何よりもし私を見つけたとしたら速すぎる。
でも、そうでなければあの森に奴隷商人が出るなんてことはあり得ない。
なんせあの森は騎士団の管轄地。あんなところに現れるなんて、よほどの命知らずか、よほどの用があった時だけだろう。
私は奴隷としてはそれなりに優秀だったから、奴隷商人からしても、失うには惜しい道具なのだろう。

「おい!ライ!大丈夫か?」

カール班長の心配する声にも私はただ、頷くことしか出来なかった。

「すまん。先に段取りをもって説明すべきだったな。少し説明するから聞いとけよ」

いつもより少し柔らかい声で説明を始めたカール班長。
その説明を要約すると、
緊急会議の途中で森に残してきたベテラン騎士から連絡が入った。
その内容は、何人かの奴隷が森の中で息耐えていたというもの。
その近くには誰もいないが、魔法が使われた後が発見された。
その魔法は奴隷商人がやったものと判断した班長達は、魔力探知が得意な人に声を掛け、森に向かうところだそう。

「本来新人であるライにこんなことを任すのは酷だとわかっているが……生憎魔法が使われてからそれなりの時間が経っていたようで、普通の奴らだと魔力が探知してる間につきちまう」

「魔力探知が得意な獣人に頼んでも、魔力が足りないんだ。ちゃんと元を辿れるのは、魔力無しでも魔力探知が出きる黒狼族のみ。そしてこの騎士団で黒狼族なのはライと俺だけ。……現場、行けるか?」

「……勿論です。私の力がここ騎士団で必要になるのなら私は私が出せる力の全てを出しきってその期待に応えます」

「……ありがとう」

私とカール班長は最短で準備をした。 
午前中は雲1つない晴天だったのに、今は雷が鳴って嵐のようだ。
だが、雷魔法は天候が悪ければ悪いほど威力が上がる。気分は落ちるが魔力の質が上がるのなら安いものだ。

私達は嵐の中馬を走らせ、森へと急いだ。
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