奴隷少女は騎士となる

灰色の街。

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行方不明事件⑤

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馬を走らせること30分。ようやく近くまで来た。
ヒントの中の"人々が最初に行く場所"というのは各街の入り口の門のことだろう。そして"国"、というのは昔の言葉で都と言う意味もある。王都で一番大きい門は西門。人々が一番多く通るところでもあるので、ヒントが示すのは西門。
そして丑寅というのは他の国の言葉で、北東という意味だ。
今は西門から北東に少し進んだところなのだが……ここは門の外。つまり、管理が曖昧な危険地域でもある。
盗賊や低級魔物が石のようにゴロゴロいる。定期的に見回はをしているようだが、それでも全てを倒しきることなんて不可能なのだ。

それより、少しこの辺りから嫌な気配がある。肌にベッタリとくっついてくるような、不快な気分になる。
それでもここまで来た以上、先に進む他ない。
班長達の気配を感じようと少し集中しようとすると、胸元についていた遠距離通話の魔道具が薄く光った。誰かが私に連絡を入れようとしているのか。魔道具に魔力を流し、通話状態にする。

「こちらライ。どうかしましたか?」

「おまっ!ライ!今どこにいる!?」

「……森ですね」

「あ?何でそんなとこいるんだよ!移動するなら声かけろ!」

「すみません」

そうだった。すっかり先輩達のこと忘れてた。

「何で連絡しなかったんだよ」

「連絡した時に近くに人が監視している可能性がありましたので」

「それだけじゃないだろ」

あれ。間髪入れずに指摘された。上手く隠せたと思ったんだけど。

「まあ、ありますけど……」

「何だ」

「……これを出来るのは、中々居ないんじゃないでしょうか」

何か言われる前に一言だけいって通信を切る。直ぐに魔道具が光るが、無視する。位置情報システムが入ってる魔道具を持っているため、先輩達に私の居場所は筒抜けだろうが、やはりこの仕事は私が一番向いている。

「そうだと思いませんか?」

私が声をかけると、木々の影から盗賊達が出てくる。しかもただの盗賊ではない。この国で最近活発に活動している、規模が数百人単位の規模で、かなり問題になっている盗賊グループだ。

「あなた達が班長達を連れ去ったんですか?」

「……連れ去ったのは俺らじゃねぇ。預かっただけだ」

まあ、そうだよね。班長達は強い。この人達が班長達を連れ去れる実力を持っているとは思えない。

「では、班長達を返してください……無理だと言うなら、実力行使しますが」

「簡単に渡す訳ないだろ……こっちも、命懸かってんだ」

命が懸かっているということは、誰かに依頼されているのか?自由奔放な盗賊が依頼を受けるなんて……どれだけの報酬を提示されたんだろう。

……今はそんなことより目の前のことに集中しますか。相手はこちらの出方を見るつもりなのか、攻撃はしてこない。警戒はされているが。

基本的に騎士は人に害は与えてはならない。但しそれは善良な人のみであり、国家に危害を与えるものに関しては、攻撃及び排除することを推奨する。
国の条文に書いてある。

「今からすることは国の条文に乗っ取った行動です。恨むなら己の行動を恨んで下さい」

私はそれに従うだけ。
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