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三対三 第3班班員side
しおりを挟む全然合わせられない。
どれだけ頑張っても、味方が何をしようとしているかなんて分からない。しかも、ライと先輩達は、今日始めてペアを組んだ筈なのにめちゃくちゃ連携取れてる。これじゃあボロ負けすること間違いなしだ。
「っ、合わせてよっ!」
「君こそ!」
ああ、焦りと同時に苛立ちも募ってきている。このままじゃ負けるどころか、味方同士で自爆するぞ。二人に言い争いをやめるよう口を開いたその時、ライが手を止めた。二人の先輩も不思議そうにしながらも手を止めめた。俺らが疑問に思っていると、ラインハルト班長が呆れた口調で話し出す。
「はあ、年下に気を遣わせてどうすんだお前ら。いいか、今のお前らだと勝つことはおろか、一発入れることすら出来んぞ」
その通りだった。実際、俺らは試合が始まってから一度も攻撃を入れれてない。ラインハルト班長の言葉に反論できないのが悔しい。
「味方が何をしているのか読むのは大事だ。だがそればかりに気を配るな。全てにおいて考えを働かせろ。それと、お前らも」
班長は二人の先輩に向けて言ったようだ。先輩達は上手く連携を取れていたような気がしたが、ライのお陰だったのか。見ると、先輩達は悔しそうに目線を下にやっている。
ライが先輩達の動きを全部読んで合わせていたのも驚いたが、それに気がついたラインハルト班長も流石だ。
「ラインハルト班長、少しいいですか?」
「ライか、言ってみろ」
「ありがとうございます。えっと…そちらのチームに一言だけ。味方は自分にどういう行動を取って欲しいのか、そういうことを考えるのなら、自分がその味方だった場合どんな行動をして欲しいと思うか、それさえ考えれば分かると思います。決して団結力が弱いわけではないので、味方がどうとかより、自分だったらという目線で考えてみてください」
ライの言葉はすっと胸の中に入ってきた。それまで全く分からなかったラインハルト班長の言葉が一気に理解できた。
「自分だったら、どうして欲しいか」
俺だったら…
もし俺が超接近戦が得意で、ペアの人がサポート役だとしたら…俺は…
「話は終わったか?…んじゃ第二ラウンドスタート」
さらっと始まった第二ラウンド。
先程まで全然合わせられなくて試合にもならなかったのに、今はちゃんと攻防を繰り返した、ちゃんとした試合になっている。
自分だったら…
この考え方がいかに重要かを理解した。ライのたった一つのアドバイスで、俺らはこんなにも成長できた。改めて、第1班の凄さに気付いた。一年目でこれなら、第1班のライの先輩や、第1班班長であるカール班長は一体どれだけ凄いのだろうか。
騎士団の要と言われる第1班の凄さに圧倒している内に、試合はクライマックスへと突入する。
味方がライ達の攻撃を避けるために下がる瞬間を狙い、攻撃をしていく。
だがライ達も負けていない。緊張感が最高潮に高まった時、最初に動いたのは…同僚達だった。
少し後ずさった時にできた隙を見逃さず、攻撃を仕掛けていく。そこに俺の掩護射撃。ライは俺ら三人の攻撃により壁に向かって吹っ飛んでいく。そして比較的遠距離攻撃を得意とする先輩二人は、同僚達が、近距離に持ち込み……勝利した。
「…やるじゃん」
「「「ありがとうございます!」」」
中々貰えないラインハルト班長の褒め言葉に喜ぶ俺ら。
「流石、先輩達です。戦闘力に関しては、まだまだってことが痛い程分かりました…」
こちらに向かって歩いてくるライに対して、俺らは騎士の礼をする。
「ライがいなかったら今回俺らは勝つことなんてできなかった。ありがとう」
「「ありがとう」」
「いえいえ。お役に立てて光栄です」
「うしっ!試合終わったし片付けして終了にするか。明日は普通に訓練するから。いつもの時間に集合な!ライも、六時ぐらいにここに来てくれ」
「「「はい!」」」
「んじゃ、解散」
片付けといっても、殆ど終わっている状態だったので、すぐに終わった。ライと一緒に夕飯を食べようとしたが、見つからなかった。
お礼したいと思ったんだけどな。
「あの、先輩。ライ、どこに行ったか知りませんか?」
「ああ、ライならグラナーと一緒にどっかいったよ。グラナー、ライと同じで投げナイフが適性武器だからね。色々積もる話もあるんでしょ」
「ああ、分かりました。ありがとうございます」
「おう!」
グラナーはライの一つ上の騎士で、俺の後輩。常に飄々としていてなに考えてんのかよく分からない。だけど明るくて、人の心の中に入ってくるのが得意だ。しかもかなり優秀。
少し問題点をいうなれば、グラナーは今の騎士には珍しい、年功序列を重んじるやつで、よく同僚を言い争いをしていることだろうか。まあ、お互いに大人だから、信用を失うようなことや、班の仲に亀裂が走るような揉め事は起こしていないが、一度だけ大喧嘩になって、謹慎くらってた気がする。
まあ、俺的にはグラナーは十分信用できるし、ライもグラナーと仲良くしてくれれば問題ない。ライもまだ未成年だとはいえ、大人の振る舞いはちゃんとできるし、なにも心配する要素はないだろう。
そう思いながら食堂に向かった。
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