奴隷少女は騎士となる

灰色の街。

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勝負の行方 第3班班員side

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ガキン ガキン

訓練場に響き渡る音。

試合が始まった瞬間から鳴り響いているが、全く気にならなかった。
そのぐらいその試合は見ごたえがあるし、勉強にもなる。

「すげえ」

誰かぎポツンと言ったその一言に、全員が同意する。
無駄のない動きや全方位を戦いながら常に警戒する。
簡単なように見えて難しい技を目の前の少女はなんなくやって見せたのだ。感心と同時に悔しさが生まれる。
その高度な技は当然俺らも出来るが、新人の頃は全くできなかった。それに、今だって少しの環境の変化で出来なくなることがかなりある。
出来るようになるまでのスピード、それに洗練度合い。全てにおいて兎に角凄い。

今までは最年少と言うことで目のいきやすい第1班としていさせているのかと思ったし、そういう噂も立っていた。だが、今のこれを見て同じことを言える人はいないだろう。もしこの本部にいるとしたら、そいつは見る目がないとして追い出されることになるだろう。
そのぐらい、誰が見ても圧倒的な実力を持っていた。

それと同時に疑問に思う。
ライはいつこの実力を身に付けたのだろうか。
ライの様子を見るに、新しく覚えたことは定着までに時間が掛かっているし、最初からなんでも出来る天才型というわけではないのだろう。だとすると、この洗練された動きは一体いつどこで誰に教わったのだろうか。

まあ、俺は第1班みたいに考える専門じゃないから分からないが、ライの過去が原因であることはなんとなくわかる。皆がそうやって考えているからこそ、班長達や第1班班員なんかは、ライのことを探っているらしいし。まあ、相手が相手だからかなり苦戦しているようだが。
それでもやはり、騎士として知りたい気持ちはある。だから、俺としてはいつかライが自分から教えてくれることを願っている。それまではじっくりと待つ。自分の中の区切りとして、そう決めてた。

決意を新たにしている中、二人は今だ激しい攻防を続けている。
まあ、両者の決着は殆どついているものだが。
ライは半獣化しており、鎌や投げナイフ、雷魔法まで使ってかなり疲労困憊の様子。
対してラインハルト班長は半獣化はしているものの、使っているのは両手剣のみ。適正魔法である土魔法は全く使っていなかった。それでいて、涼しい顔でライの攻撃を避けている。 

そしてライが一瞬、よろけたその隙を狙い、首に剣をあてた。

ラインハルト班長の、勝ちだ。

「っ、降参、です」

「お疲れ」

息を切らしながらその場に座り込むライと、そんなライの背中を擦りながら戦闘の反省点を言っていくラインハルト班長。その姿はなんだか…

「親子みたいだな…」

まだ成人にもなっていないライ。
普段は冷静沈着で、しっかりしているが、こういう何気ないところで子供らしさがでてくる。
騎士は命を落とすことも多い職業だから、未成年で入ってくる人は中々いない。いるとしても、きつい訓練に根を上げてすぐにやめてしまう。だから今騎士団で未成年なのはライだけだし、だからこそ皆ライを甘やかす。けして調子に乗らず、まるで大人のように振る舞うライに、俺らの前だけでも、子供の姿でいて欲しい。
まるでライの親みたいだが、実際騎士団にはライ見守り隊なるものがあるらしい。因みに結成後一番に加入したのはカール班長とジーク総長だとか…メンバーが豪華すぎる。

話はそれたが、ライとラインハルト班長のその様子は親子のようで俺らはそれを暖かい目で見守ることにする。

数分後。
大分回復した様子のライがひと息ついたと思えば、ラインハルト班長が立ち上がり、こちらをニヤリと見た。
長年の経験でこういう時は大体無茶振りされることも、それを断ることも出来ないと分かっている俺らはそっとため息をついた。

「それじゃ、お前らもライと戦ってみろ。ライはこいつらの実力を知れるし、お前らもライと戦うことで自分を見つめ直すいい機会になるだろ。ライは人の弱点を見抜くのが上手いからな。もしかすると自分達でもまだ気づいていない弱点に気づけるかもしれないぞ」

ああ、予想通り。
ライは少し驚いたようだが予想はしていたのか、すぐに準備を始める。

「とは言っても、時間が時間だからクジ引いて当たった五人だけな。んで、その五人とライを入れて六人でチーム戦しよう」

まあそりゃそうだ。
現在時刻19時。いつもならそろそろ訓練が終わる時間だ。全員とやっていたら、日付が変わってしまう。

さっとクジを引いて当たったのは…

「おいおい、まじかよ」

「ふふっ」

「宜しく頼む」

「お前ら三人か。丁度いい。上手く連携しないと負けるぞ。後輩に負けたくなかったら、頑張れよ」

俺と、俺の同僚の二人だった。
第3班の中で同僚はこの二人なので、よく一緒に訓練しているが、全く息が合わないのだ。

俺は後方支援を得意とするが、この二人はどちらも超近距離、つまり相手に隙を与えずに攻撃し続けるというタイプで、全然連携がとれないのだ。

「う…出来ないっすよ班長…なんかアドバイスとかないんすか?」

「やる前に出来ないなんて言うな。いつも言っているだろう。味方が何をしたいのかちゃんと気付けって。味方は自分に何かしらの合図を送ってる筈だ」

「そっすけど…」

ああ…負ける気しかしない。
先輩や後輩から応援を貰いながら位置についた。対戦相手はライと一年上の先輩二人だ。

「んじゃ、いいか?……始め!」

取り敢えず、ボロ負けだけはしたくない。

「合わせろよ!」

「「お前もな!」」

ああ、足が震えるよ
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