奴隷少女は騎士となる

灰色の街。

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さっそく侵入者?

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「いや~流石。よくこいつらが元・第七班だってわかったな!」

「まあ…少し考えたらわかります。ヒントは至るところにありましたから」

「謙遜しすぎだっての!一年目でそんだけできるって結構すごいことだぜ?」

「…ありがとうございます」

当然のことをしただけなんだけどな…けど…周りから感じられていた鋭い視線はもう感じないな。まあ、理由はわかるんだけどね。
おおよそ、私が新人にも関わらず第一班に配属されたことに不満を持っていた人達からの視線だったんだろう。そして、さっきの私の発言がその人達を納得させるだけのものだったんだろう。

取り敢えず、この数日まともなご飯を口にしていなかったので少し遅めの昼ごはんを食べる。変わらず美味しいご飯食べながら今後の予定を確認する。

「侵入者が来たらアラームが鳴るから、そいつが鳴ったら侵入者を捕まえるもしくは排除するのが主な仕事だ。キーカルとガリウスは元々ここ所属だからわかるだろ?詳しいこと、ライに教えてやれ」

「「了解です」」

「後、ライ。侵入者を捕まえるのに情は要らねぇ。抵抗するようなら躊躇なく排除しろ。俺らにはそれが許されている」

「はい。仕事に私情は持ち込みません。私はやるべきことをだだこなす…それだけです」

「そうか…そりゃ、頼もしいこった!」

ハールド班長が少し複雑そうな顔をした気がした。でもすぐに笑顔になったので気のせいかもしれない。

説明も終わりキーカル先輩とガリウス先輩と団欒をしていると、いきなり部屋の明かりが赤に点滅し、ビービーと警報音が鳴り出す。これがハールド班長の言っていたアラームだとすぐにわかった。

「ライ!行くぞ!」

「はい!」

第七班の皆さんは忙しく、班員の八割が取り調べや現場に向かっていてここにいない。残った二割も書類整理などで忙しそうだ。私達が呼ばれた理由がよくわかる。

魔道具で示された場所に馬を走らせる。当然ながら、到着した先は既に人はいなかった。けど…私からは逃げられない。空間魔術Lv.2

「探し出せ 見つけ出せ スペーション·グラスプ」

範囲をできるだけ広くして侵入者を探す。その分魔力を消費するが、別に支障をきたす程でもない。さっきしっかり休んでおいたお陰で調子がいいのか、いつもよりコスパよく発動できた気がする。見逃さず、かつ迅速に探す。

「…!いました。こっから前方千メートル。移動は魔法を使った徒歩です」

「おけ!追うよ!」

いくら魔法を発動しているからといっても、こちらは馬。みるみる内に距離は縮まり、十分後には侵入者の背中を捉えていた。周りが山で移動しにくかったのもあり、そこまで距離が離れていなかったことが幸いした。加えて私達が乗っている馬は、ある程度の斜面や地面が舗装されていないところでも大丈夫なように訓練された馬で、普通の山だったら乗り降りぐらい余裕でできる。
…まあ、余裕で追い付くわけだ。

「止まれ!」

「止まれと言われて止まる奴がどこにいるんだよ!」

それはそう。まあでも…

「これも仕事だ。悪く思うな」

私は走ってる馬から半ば落馬するように飛び降り、侵入者に飛び乗る。
咄嗟のことに反応できなかったのか、そのまま地面に伏せる侵入者。

動けないように関節を固めながらも様子を伺うと、どうやら気絶しているらしい。息はしているものの、全く抵抗してこない。

「ライ!大丈夫か!」

「全く…お転婆すぎる。肝が冷えたぞ。次からはもっと落ち着いていけ」

私が飛び降りた馬を引っ張りながら先輩達がやってくる。呆れているように見えるが、それでも口角は上がってる。

「お手柄だったな!」

「お陰で手間が省けた…さっさと戻るぞ」

ぐしゃぐしゃと頭を撫でられる。意外と乱暴にやられたせいで髪はボサボサになったが、嫌ではない。むしろやられると胸がポカポカして暖かく感じる。

侵入者を持ってきていたロープで手足を縛りキーカル先輩の馬に乗せる。私も自分の馬に乗り、元来た道を戻る。

「そういえば…さっきの続きなんですけど、グラード王国は国民に洗脳教育をしているんですよね。にも関わらず、最近になるまで旅行者の受け入れをしていたのは何でですか?旅行者が国民の洗脳を解くかもしれませんよね?」

「それで洗脳が解ける程甘い教育はしていない。国民はグラード王国の政府を神の遣いみたいに思ってるからな。それに旅行者はまだ洗脳が完璧にされていない子供への接触は禁止されている。破ったら首が飛ぶ」

「神の遣い!?そんなの…いつ天罰が下るかわかったもんじゃないですよ…それに首が飛ぶって…仮にも他国の人ですよね?そんなの周りの国が黙ってないですよ…」

「まあ色々とち狂った国だが、これでも国の規模は結構でかい。それにグラード王国は魔道具の原料が世界トップ三の指に入る。安易に抗議して、戦争になったら殆どの国が負ける。それもあって黙認してる国が殆どだ」

「天罰についてだけどね~…過去に一度忠告されてるんだよね。神様に。だから今、グラード王国は神に背いている状況って訳」

「ふざけた話だが、グラード王国は自らが神だと信じて疑わない」

「…関わりたくないですね」

話を聞いて思ったことは一つ。
絶対に関わりたくない。関わったらこの国の存続も危ない…成る程。そういうのもあってグラード王国とは戦争をしていないのか。通常だったらとっくに戦争に踏み切っているにも関わらず。

…でも隣国である以上関わらない、というのは無理な話か…
私達は拠点に戻りながら今後訪れる未来であろう結末に、頭を悩ませた。
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