奴隷少女は騎士となる

灰色の街。

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取り調べ…?

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「お…さっそく捕まえたな」

拠点に戻るとハールド班長が出迎えてくれた。忙しい筈なのに…なんて思っていると外に用事があったようですぐに出ていった。

「ハールド班長、ああ見えてめっちゃ忙しいんだよね」

「通常業務である侵入者の確保とかも当然のようにやってるから、睡眠時間なんてあってないようなもん…よくやってるよ…」

「まあハールド班長の事だし、体調は自分でちゃんと整えてるんだろうけど」

キーカル先輩とガリウス先輩は以前ここ所属だったこともあり、色々思うところがあるらしい。まあ、以前お世話になってた人が寝る間も惜しんで仕事してたら不安になるのもしょうがない。

「まあそれは一旦おいといて、取り調べすっぞ」

「はい」

取り調べ…以前やった拷問とは違い、相手を傷つけず対話して情報を聞き出す。相手の心理状況とかも考えながら話さないといけないから拷問よりも難しい。
私も三年程前一度やったことがあったが全く情報を聞き出せなかった。その時は特に重要なものではなかったプラス、別に命令されてやったわけではないので特に何もペナルティはなかったが。

そんなわけで、取り調べは私が苦手とする分野でもあるため最初はキーカル先輩の取り調べを見学することにした。私達が捕まえた侵入者はまだ気絶しているらしいので、取り調べが難航している人の元へと行く。

ドアのところに立っている見張り役の騎士に挨拶をして、取り調べ室に入る。中は殺風景で、真ん中に机一つと椅子が二つ。端っこの方に記録用紙の乗った小さい机椅子が一つずつ置いてあるだけだった。

すでに真ん中の椅子の一つには誰かが座っていて、ずっとそっぽを向いている。見た目からして二十代半ばの男性でやせ形。聞くところによると捕まった当初は見るからに栄養失調で、髪もボサボサだったらしい。

まあそれだけ聞けば貧困層の人がグラード王国から逃げてきた、と捉えられるのだが問題は全く情報を話さないこと。名前などの個人情報だけでなく、身分すらも明かしてくれない。当然そんな人を釈放するわけもなく、この一週間ずっとここに捕らえられているらしい。

「…で?何で何も話してくれねぇの?なんか言いたくない理由でもあんの?」

キーカル先輩が取り調べをしているのだが…

私はこっそりガリウス先輩と目を合わせる。どうやらガリウス先輩も同じ気持ちらしい。

「キーカル…それだと取り調べじゃなくて、ただの脅迫。それじゃあどっちが犯罪者かわかったもんじゃないよ」

そう…キーカル先輩はその男性の襟首を掴み上げて睨みながらさぅきの発言をしたのだ。パッと見どこかのヤクザみたいだ。

それにしても…ガリウス先輩の犯罪者、という言葉にこの男性が反応したのは気のせいだったのだろうか…いや、先輩達の様子を見るに、気のせいじゃなさそうだ。

「チッ…あのな、お前からしたら、ただ辛いところから逃げてきた。殺されたくないからせめてひどい扱いを受けてもいいから生きていたいって思ってここに来たのかもしれねぇが…俺らからしたら、お前は正真正銘の不法侵入者…つまり犯罪者って訳」

「ごめんね。こいつが乱暴なことして…でも、言ってることは間違ってないから…教えてくれる?わざわざ不法侵入という形をとってターリスク王国に入ってきた理由…正式な手続きをしないで侵入してきた理由を…さ」

…まあ、それで答えたら逆に今までここの人達何してたのって話になってくるんだけど。予想通り、話してくれないか…これで話してくれるのが一番楽なんだけどな…

「…話したくないか~…なにしたら話してくれる?」

「ガリウス~そんなこと言ってもなんも話してくれねぇよ…そんなんで話したらここの奴らに一発ずつ拳骨くれてやっから」

…なんかキーカル先輩の口調がどんどん荒くなっていってる気がする。それだけ怒っているのか…それともわざとそうして堅苦しい雰囲気をなくそうとしているのか…普段の先輩の口調とだいぶ変わった話し方を聞きながら、私は注意深くその男性を観察する。

生き物というのは単純なもので、嘘をつくにも記憶を呼び起こすのも、ある特定の動作をする。そこを見落とさなければ誰にだって嘘は見破れる。観察眼が鋭い人というのは、大体がその特定の動作を見落とさない人だ。まあたまに第六感的なもので嘘を見破いている人もいるが。

どうしたものかと思っていると、ドアがノックされる。一番ドアに近い私が出ると、第七班の人がファイルを手に立っていた。

「お疲れ様です。そちらの男性に関する資料です。内容は薄いですが、役に立てばと思い持ってきました」

「ああ。ありがとうございます。お疲れ様です」

男性に関する資料。思っていた通り、紙一枚程度で事足りる情報しか集まっていないようだ。
わかっている情報として、種族は人間、家族が配偶者と子供が二人、グラード王国を極端に嫌っていることなどがある。その他はやはり犯罪者、という言葉に反応を示すことが書かれていた。

内容は薄いが、取り調べにおいて家族編成がわかったというのは大幅な進歩だ。ガリウス先輩に資料を渡し、再び男性を見る。

「さっさと吐いた方が楽になるぜ?特に怪しい物を持ち込んでるわけでもねぇし?何をそんなに言いたくないのかねぇ?」

「だからキーカル、それだと本当にヤクザみたいだから止めて」

「……」

終わる気配がしないな…
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