箱庭魔女の魔王奮戦記

遮具真

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只今、魔王創造中

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 三ヵ月前
 魔族領王都グインラドル
 私が部屋に入ると既に十士族の代表が円卓を囲み私の到着を待っていた。
「…全員揃っているようだな」
「………」
「………」
 珍しく静かだ……いつもこうだと楽なのだがな。まあ、今日は特別か…。
「ではこれより、十士族会議を行う。本日の議題は…」
「おい、グレイアッド!!」
「……」
「本当なんだろうな!!迷いの森に住み着いたやつがいるってのは?」
 真っ先に声を上げたのはブレフェルだ。十士族の中で一番若く、血気盛んで暴言が目立つ男。短く刈り上げた頭と眉のない三白眼…服のセンスも何処ぞの若頭という感じだ。
「本当だ……それが今日の議題だからな」
「マジかよ、信じらんねぇ!!」
「ふむ、あそこは三国不可侵の場所ではなかったのかね?」
 対して、常に冷静沈着に振舞うのはガウディンだ。切れ長の目に長髪のオールバック、冷静と言うより冷徹という感じの男。
「さよう……永らく暗黙の了解が成り立っておる」
 同意するのはモーブレフ老師、長い白髪白髭の誰もが敬意を払う魔族領の重鎮だ。中々士族会議に姿を見せてくれないのが玉に絆だ。それだけに今回の一件は重大という訳だ…。
「…と言うより、そもそも簡単に出入り出来る所じゃなかったはずだろ、あそこはさぁ」
 レクマティアは女だてらに十士族随一の武闘派だ。頭も切れる。ただ、赤いボサボサ頭に蛮族紛いの格好はとても士族とは思えん。
「ったく、どこのどいつだ!禁を破りやがって!!」
 エレグベテスは暴言は吐くが義理人情に熱い男。逆立つ髪に太い眉、男気に溢れる面構え…といったところか。
「………ふっ」
 カルカベールは十士族中、最も若い。童顔でいつもにこやかな顔をしているが……正直、何を考えているのかよくわからない男だ。
「……」
 そして、不穏な表情で沈黙を続けている魔族領一の実力者、オブロック公爵。無骨な中年戦士、いつも不機嫌な顔している。笑っているところは見た事かない。
 そして…。
「……♪」
 面白そうな顔で成り行きを見守るアルベルト。いつもヘラヘラとして掴みどころのない男……だが、こいつは十士族一のクセ者だ。
 さて…。
「……まずは現状を見てもらおう、詳しい話はそれからだ」
「……」
「……むぅ」
「一月前の映像だ…」
 円卓中央に迷いの森のビジョンが投影される。
「「「「おお~~~?!」」」」
 全員から驚きの声が上がる。当然だ…私も最初にこの映像を見た時は我が目を疑った…。
 鬱蒼とした森の中から塔らしきものが突き出ている。そう、らしきものだ……塔言うには語弊がある。まるで金属の塊のような巨大な物体、それが鈍く日光を反射して異彩を放っている。
「……はぁ?」
「おいおい…」
「なんだこれは…??」
 ボレフは寡黙な男だ、故に声を上げるのは珍しい。ガタイのいい筋肉の塊のような感じの体を震わせている。
 確かに異様な外見の物体だが、問題はそこじゃない…。
「こいつはたった一晩で出現したそうだ」
「……は?!」
「……なんだそりゃ?」
「エルフ共の策略じゃねぇのか?」
「そうさのぉ、あやつら幻術に長けておるでな…」
 エレグベテスの言にモーブレフ老が賛同する……まあ、まずは無難にそう考えるだろうな…。
「………♪」
 アルベルトは相変わらず愉快そうに成り行きを眺めている。
「私も当初はそう思って、部下を派遣して調べさせた…」
「……結果」
「………」
「………」
「幻の類いではなく……この謎の構造物は実在している」
「……バカな?!」
 モーブレフ老が呻く。当然だ…何故なら。
「我ら魔族ですら、容易には行き来出来ない場所なんだぞ…?!」
 そう、ガウディンの言う通り。だからこそ、この光景は衝撃的なのだ。
「空間がねじれた場所に建物を構築するなぞ…」
「…いやいや、領域魔法を使えば或いは…」
「常時発動出来ればな…」
「そんな事が可能なのですかな、老師?」
「難しいのぉ…」
 老師が難色示した事により、一層この光景を造り上げた魔法使いの力量の高さが伺い知れる。
「つーか、そもそもこれ建物なのか?」
「……」
「………」
 レクマティアの一言に改めて全員が映像を見直す。
 困惑の表情を浮かべながら映像に見入っているが、コレが何なのかわかる者は一人もいないようだ…。
 ここで、これ以上衝撃的な事実を付け加えたくはないが…。情報局を受け持つ身としては致仕方ない…。
「……もう一つ」
「…!?」
「……」
「住み着いたのは人族の魔法使いらしい…」
「バカな!」
「それこそ、あり得ん!!」
「何でも大魔法使いとか賢者とか呼ばれているそうだ…」
「…はっ人間ごときが賢者だと?!笑わせてくれるわ!!」
「三種族の内、一番魔力に劣る民族だぞ…?!」
「そんな劣等種族が迷いの森に住み着いたのか…?!」
「いやいや、人間がアレを造ったってか…?!」
「貴殿の配下を疑う訳ではないが…デマではないのかね?!」
「私もその辺疑ってはいるが……今のところデマの可能性は低い」
「むぅ…」
「所詮…人間どもがそう呼称しているに過ぎん…」
「……だが、住み着いたのは事実なのだろう」
「人間のふりをしているだけでは…?」
「その事に何のメリットがあるのかね?」
「つーか、何なんだよアレ!!」
「………」
 やれやれ、こうなっては収拾がつかないな、暫し…
 ダン!
 騒動を遮るように円卓を叩く大きな音がこだました。
「誰でもいい!!」
「……オブロック…公…」
「………」
「……」
 ここまで黙って聞いていた魔族領一の実力者が声を張り上げた。
「人間だろうがエルフだろうが関係なかろう……我ら魔族をコケにしたんだぞ!!」
「「「「………」」」」
「許されざる問題だ…」
 怨嗟に満ちた彼の発言により、方針はほぼ決定した。
「………」
「……」
 誰もが押し黙る中…。
「この儂が……直々に…その身を持って償わせてくれる…!!」
 オブロック公の捨て台詞で議会は幕となった。

「……アルベルト」
「……ん」
「君は何か知っているのではないかね…」
 会議が終了すると私は彼を呼び止め、少し尋問する事にした。
「…さて?」
「とぼけるのは止めたまえ…ここ最近、君が迷いの森に出入りしている事は既に知っている」
「おやまあ、諜報部は優秀な事で…」
 肩をすくめて苦笑いする、全くこの男は…。
「それに以前、君は人間領に出向いた事があっただろう……その時、件の魔法使いと接触しているはずだが…」
「……さすが、情報部顧問♪」
「…その顧問として情報の開示を要求する!!」
「ふむ、そうですね…」
 少し何かを思案すると珍しく応じてきた。
「一つ警告しておきましょう。彼女には迂闊に手を出さない方がいい」
 意外な答えが返ってきた。面白ければ率先して他人を煽るタイプの男が警告とは…。
 いや、反対か……今の一言をオブロック公が聞けは更に激怒する事だろう…。直接言わないのは十分な準備をさせる為…?
「…それほどの相手なのか?」
「強いですよぉ、彼女はね♪……それに実にユニークな魔法を使う」
「……ユニークとは?」
「多元複合領域魔法」
「…?!」
 あり得ない、只の領域魔法ですら人間に扱えはしないのだ。
「人間が使える魔法ではないだろう…」
「確かにねぇ…♪」
「ミディールなる人物は人族の出身と調べがついているのだが……違うのか?」
「人族ねぇ……」
 少し疑問を浮かべるような顔つきをするアルベルト。
「……?」
 人間ではない?……報告書に不審な点は見受けられなかったが…。
「…まあ、確かにかつては人間だったかもしれませんが…」
「今は違うと…」
「違いますね。アレはもう、どの種族でも……いや種族という範疇にも入らないかも♪」
 種族の範疇に入らないだと…??
「どういう意味だ?」
「言葉通りですよ、フフ♪」
「………」
 さっぱり訳がわからん…ミディールとは一体何者なのだ?
「さてさて、オブロック公は彼女を相手に一体どう攻めるのか……楽しみな事です♡」
 そう言って、アルベルトは部屋を後にした。
「………」
 何が楽しみだ……私は嫌な予感しかしないぞ。

 ※

 唸りを上げて各機器が動き始める。その様はまるで一匹の動物のようだ。
 うん、久し振りにフルで工房を稼働させたね。
 魔王の創造は当初、一年をかけて念入りに行うつもりだったんだけど…。クレーマーのせいで数ヶ月で仕上げなければならなくなった。おのれ、イチャモン魔族め!
 なので、既に存在するガーディアンタイプを改造して使う事にした。パワーがオーバースペックで使いどころが見つからなかったやつだ。うん、取っといて良かったね♪
 外見の方は魔族の伝承に沿う形にしようと思う。その方がクレーマーにはインパクトがデカイはず♡
 見てろよ、イチャモン魔族……私の平穏を脅かした罪は重い!!
「いや~~、何度見ても理解の範疇を越える光景だね…」
 なんて、呆れ顔でアルベルトが言う。
 いや、それほど?……確かに人型のゴーレムは一体も稼働していないけど…。この形状が一番効率がいいんだよ♡
「………効率重視」
「まるで異世界だよ、君んとこの工房は…」
「………」
 そんな事ないだろう、そもそもが工房のゴーレムが人型である必要なんてない、接客する訳じゃないんだから。なので当然、扱う機器も人が使うようには出来ていない。一部ゴーレムと融合しているものさえある。これぞ効率の賜物♪
「……機能美」
「機能美……ねぇ」
「………」
「まあ、言わんとしている事はわからんでもないけど……そういう風に徹底して考えるの君ぐらいじゃない…?」
「………」
「そもそも、コレが何なのかって魔族領で話題になってるほどだよ?」
「……見ればわかる」
「見ただけでコレが工房だってわかる人はまずいないと思うけど…?」
「………」
 そうかな?……まあいい。
 私は効率史上主義なのだ、意味のないデザインや装飾なぞ必要ない。
 それに…自分自身の考え方を他人に理解させようなぞ、所詮は無論難題と言うもの。……そこら辺はちっちゃい頃に散々学んだし。
 …ところで。
「……いつ?」
「迷いの森が目的地だからね、早くとも3ヶ月ぐらいかな」
「………」
 うん、大丈夫。想定の範囲内だ、十分間に合う。しょうもないクレーマーなぞ願い下げだ。
「……フッフッフッ♡」
「……君が魔王やった方がいいんじゃないの?」
「………」
 何言ってるかな、そんなの本末転倒じゃないか。一体何の為に魔王をこしらえてると思ってんだ。
 さて、一応予備も製造ラインに載せておこうかな。不測の事態にも対応出来るよう抜かりなく万全を期さねば!!
 それもこれも全ては我が平穏の為♡
「さて、それじゃ私は一旦魔族領に戻るとしよう。何か動きがあったら、また知らせに来るよ」
 コクッ…っと了承代わりに頷いておく。
「いや~、楽しみ楽しみ♡」
「………」
 なんて事を言いつつ、アルベルトは帰っていった。
「……全く」
 やっぱり、アイツ楽しんでるな…。
 私の平穏はしばらくはお預けのようだ。

 ※

 魔王の創造を始めて二週間、再びウィルがやって来た。
 ………少し早くね? いつもなら二、三ヵ月は間を置くのに……何やら嫌な予感。
 極度のシスコンの弟だが、領主としての矜持はちゃんとある、内政をほっぽり出してまで私に逢いに来ることは考えられない。何かしらの問題が発生したとみるべきだろう。
「姉上ぇぇ~~♡」
「………」
 いつも通りに私の膝にすがり付く。
「…♡」
 ………。
 ………いや、いつもと変わらないかな…?
 そう思っていると真顔に戻って話を切り出した。
「実は問題が…」
「………」
 ……良かった♡ シスコンが更に悪化したのかと姉さんは心配したぞ。
 …で、問題というのが人族の進行だとか。
 どうやら魔族領の動きは人間側でも掴んでいたようで、私に対する援軍と称して軍勢を派遣する事になったらしい。
 要は先に私の事を取り込んでしまおうという魂胆だ。鬱陶しいな…。
 更にエルフ側にも動きがあるとか……こっちもかい!!
「………全く!!」
 どいつもこいつも、私の平穏をぶち壊すつもりか!!
 ………許さん!!
 しかも予定より一月も早いじゃないか?!……あんにゃろ~、嘘吐きやがったな……後でぶちのめす!!
「姉上……たとえ全世界を敵に回そうとも、僕は姉上の見方です♡ 姉上の為なら死ねます♡」
「………」
 ………弟だけは相変わらずのようで、ちょっと安心した♡ いや、安心しちゃダメなんだけど…。
 まあ、一応ハグしておこう。私の事を心配してわざわざ知らせ来てくれたんだし♡
「よしよし♡」
「…♡」
 ……私も弟には甘いな。

 ※

 次の日、ずうずうしくもいけしゃあしゃあとアルベルトがやって来た。
「やぁ、済まないねぇ♪どうやらオブロック公の遠征が早まってしまうらしい♡」
「………は?」
 何を今更言ってるか!!
 …ジロッ!!
「おお、怖い…♪」
「………一月も早い!!」
「ああ~その事は申し訳ない……けど、嘘は吐いていないよ」
 …ギロッ!!
「そんなに睨まないで欲しいな、遠征が早まった事を知ったのは一度魔族領に戻ってからの事なんだから…」
「………」
「弁明の為に言っておくけど、うちの諜報部の連中がエルフの動向掴んでねぇ……公は大分無理して遠征を早めたって訳」
「………」
 確かにエルフ側の動向はウィルからも聞いたけど…。
「……むむ」
 引きこもってるお陰でかなり情報戦が不利になってる…。
「そこで提案なんだけど♪」
「………」
「君の分身体を魔族領に派遣しない?」
「………」
「ほら、以前使っていたアレ♡」
「………」
「衣食住は私が責任を持って提供しよう♪」
「………」
 ………確かに一考の余地はある。しかしながら、なんと言うかこいつの思惑に乗ってる気がして釈然としないな…。
 ジ~ッ!!
「嫌だなぁ、別に何も企んではいないよぉ♪」
「………」
 ………いや、絶対何か企んでるだろ、オ・マ・エ!
「………」
 ………だが、分身体を魔族領に置いとけば、何かあっても即座に対応可能な事も事実だ…。
 しょうがないか…。
「………」
 チョイチョイ!!
 手招きして工房の奥へ向かう。
「…♪」
 工房では昼夜を問わず作業が続けられていて、既にボディの方は完成している。
「おお~♪凄いねぇ…伝承より迫力がありそうだ♡」
「………」
 んな事を言ってる顔つきは実に悪そうだ…。やっぱりこいつは性根がねじ曲がってる。
 工房奥の保管庫の扉を開けると更に奥へと進む。
「…本当にねぇ」
 何かしみじみと感心したような台詞を吐いているけど、一体何に感心してるんだか…。
「君の才能だよ♡」
「………」
 本当にこいつとはツーカーだな……ちょっとヤダ。
「全く、ここに並んでるゴーレムだけで軽く魔族領を侵略出来そうだよ…」
「………後がめんどくさい」
 侵略とか征服とか事後処理の方の事が大変なのに…。世の中の権力者はアホしかいないのか…ホント。
「そんな風に後の事を考えるところが君らしいねぇ…」
「……そぉ?」
「そうさ、まずは侵略そのものから考えるのが普通だろう?」
「………」
 そういうものか…?
 そうこうしている内に分身体の保管場所に着いた。
「………え~と」
 沢山並んでいるケースの中から目当てのものを探す。
 03……05……番号を確かめてゆく……09あった!!
《ナンバー09》魔族仕様分身体
 ケースを開き、起動呪を詠唱する。
 ゆっくりと起き上がる私の分身体。
 現在の私は十代の仕様だが、魔族仕様は二十歳だ。
「……!!」
 と、ここで分身体がスッポンポンだった事を思い出した。
 …ジロッ!!
 図々しくも普通に見てるぞ、このスケコマシは!!
「……おい!!」
「ああ、ゴメン……後ろ向いておくね♡」
「………」
 いや、最初からわかって見てただろ、オマエ!!
 動作をシンクロさせると無難なローブを羽織る。
「……もういいかな?」
『大丈夫だ…』
 分身体の私が答えると待ちきれなかったみたいに振り返って…。
「おお~♪やっぱり魔族の君はいいねぇ~♡」
 なんて、まるで感極まったような台詞を口にした。
「………」
 ………ひょっとして魔族仕様の私が見たかっただけ…?
「さぁさぁさぁ、それでは魔族領までエスコートしよう♪」
 なんて、いそいそと私の分身体と一緒に連れ立って行ってしまった…。
「………」
 ………おい、本体置いてくな、シバクぞ!!

 ※

「さて、このまま君と一緒にここを出て行くはちょっと都合がいんだけど…」
 ああ、そういえばこいつ見張られてんだっけか……信用ないやつ。てか、見られて困るのは私も一緒なので秘密の出入りの方を使う事にしよう。
『大丈夫だ、別の出入り口がある』
 アルベルトを連れ別の出入りへと向かう。
 魔族領近くの湖の浮島に出ると…。
「へぇ~♪まだまだ、私の知らない出入り口があるんだねぇ~♡」
 なんて、これまた悪そうな顔で言ってる。
『………』
「他にもあるの?」
『…あなたには教えない』
 教えたら絶対ろくなこと考えないだろう、オ・マ・エ!
「それは残念♡」
 こうして、我が分身は諜報活動の為、魔族領へ向かった。

 ※

「………さて」
 魔族の方はこれでいいとして、残るはエルフだな。人間の方はほっぽっといてもウィルが知らせるくれる。
「………」
 ウィルか…。
 ん~……弟のとこにも分身を派遣しといた方がいいかな…?
 あいつの所に分身を派遣した事が知れたら…。
 絶対、駄々をこねるな…。
『うぁ~~ん、あいつだけ、ズルいズルいズルいぃぃ~~!!』
 いじけるな…。
『……いいんだ…いいんだ…僕なんて……イジイジ』
 泣きわめくな…。
『うえぉえあぉぉぉ~~~~!!』
「………」
 最悪、自殺するかも…。
 ………やっぱり、ウィルのとこにも分身を派遣するか。気は進まないけど…。
「エブリン、後でウィルを呼んどいて」
「畏まりました……ウィル様、喜ばれるでしょうね♡」
「………」
 ………多分ね。
 ………いや、確実に喜ぶな。
 ………そんでもって、四六時中一緒にいるだろうな。
 ………いやいや、絶対に添い寝するだろうな…。
 ………。
 もう一度考え直した方がいいかな…?
 なんて、思っていると。
「姉上ぇぇ~~~~♡」
 凄い勢いで弟が出現した。それはもう、出現したとしか言いようがないほど唐突に…。
「…は?」
「先ほど連絡致しました♪」
 エブリンが満面の笑みで答える。
「姉上♡姉上ぇぇ~~♡」
 弟が私の胸元に顔を埋めてスリスリしてる…。
「……へ?」
「連絡致しました♡」
 ものスッゴい笑顔でエブリンが繰り返す。
「………♡♡♡」
「………」
 ………いや、早くね…??
「ウィル様の所には緊急連絡機器が設置されております♡」
「………」
 ………忘れてた。てか、緊急で連絡したの?……エブリン??
「はい、それは勿論♪」
 眩しいぐらいの笑顔。
「………」
「マスターの尊弟様ですから♡」
 ……眩し過ぎて、直視出来ないぐらいの笑顔ぉぉ…。
「あ…うん……そだね…」
「姉上ぇぇ~~ぇぇ~~♡♡♡」
 ………号泣するな!!
 ………。
 ………で、弟は我が分身をお姫様抱っこで連れ帰って行った。
『………ちょっ?!』
 ……待て待て待て、何故ゆえにお姫様抱っこぉぉ……?!
 恥ずかしいから街に着く前に下ろしてぇぇ~~!!

 ※

「………」
 ………ちょっと、疲れて果てて言葉が出ない。いや、普段もあまり喋んないんだけど…。
「後はエルフだけですね♡」
「………」
 ………そうだった。まだ、エルフがいたっけ……?
「そういえば、以前エルフ若君にプロポーズされておりましたね♪」
「………は?!」
 ………。
 ………。
 ………うぉ~い、そんな事もあったような、なかったような…。
 さすがにエルフはすぐに対応が出来ないので後日に回した。
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