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桃の木の記憶
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静かに目を開いた太郎は桃の木に目を向けました。太く立派な幹は雄大ではありましたが、どこか悲しげな、寂しげな雰囲気をまとっていました。太郎はその木をしばらく見つめた後、右手で幹にそっと触れました。
すると、太郎の頭に悲鳴や怒号などの声や逃げ惑う人達の姿が入り込んできました。太郎は短い悲鳴を上げて後ろに飛び、尻もちをつきました。
「なんや、どうしたんや?」驚いたおじいさんは地面に座る太郎に声をかけました。
太郎はしばらく荒く呼吸をして黙っていましたが、少し落ち着いてくると絞り出すように声を発しました。「村が・・・村が襲われとった・・・」
「村?何を言うとるんや」そう言うと、おじいさんは神主の顔を見ました。
「わかりまへん。でも、もしかしたらさっき言うた話の事かもしれまへん。150年前に殺された女の記憶が、その桃の木に流れてるんかもしれまへん」
神主の言葉を聞いたおじいさんは桃の木の元へ行き手を当ててみました。しかし、おじいさんは何も感じませんでした。「あかん。何もあらへん」
太郎は立ち上がり桃の木の傍まで来ると、恐る恐るもう1度手を当てました。すると太郎の頭の中に再び映像が流れてきました。今度は離れまいと、太郎はグッと全身に力を込めて立ちました。
叫び声をあげて走る人達。燃えて赤く染まる家々。そんな中、景色は後ろに流れていき、荒い息づかいが聞こえる。この記憶の人物は走っているようだ。少し走ると、木の近くに仰向けに倒れている男性を見つけ、そちらに走り寄って行きました。
「お前さん!」女の声がそう言うと、倒れている男の横に膝をつきました。男はなんとか呼吸をしていましたが、全身に血が付いていてかなり衰弱しています。
「は、早く逃げろ・・・」男はかすれた声で言います。
「嫌や・・・。お前さん置いて逃げられへん」涙声で女は返しました。
「あほう・・・。その子を守らんか」男は血で染まった手で女のお腹に触れ、女は両手でその手を包み込みました。「その子と埋めた刀を頼むぞ、まつ・・・」
「あかん!死んだらあかん!」まつは叫びました。
「ワシの最後のひと振りを・・・」男の手は地面に落ちました。
少しの間まつは何も言わずその場に居ましたが、地面に落ちている手を取り、両手を男のお腹の上に合わせて置こうとした時、まつは男の懐に何かが入っている事に気付き取り出しました。出てきた物はゴツゴツとした硬い物で、まつはそれを自分の懐に入れると立ち上がり、そして走りました。何度も転びそうになりながらも走り、神社までやってきました。まつは立ち止まり辺りを見回しました。そこには何人もの人が逃げ込んでいて、座り込んだり震えていたりしました。社の前の階段に少し座れそうな場所があり、息が切れているまつがそこに向けて歩き出そうとした瞬間、大きな影がまつを覆いました。驚いたまつが振り返ると、そこにはこの世の者とは思えない巨体な生物が立っていました。体長は2mを超え、頭にはツノ、口には大きな牙もある赤い体の化け物でした。
そこで太郎は気を失い倒れました。おじいさんが駆け寄り太郎の顔を覗き込むと、太郎は寝息を立てて眠っていました。
「眠っとるだけですわ」ホッとしたおじいさんは、神主に向けて言いました。
「ワシが背負いますんで、家まで戻りましょか」神主は太郎を背中に乗せると、おじいさんと一緒に家に向かって歩き出しました。
すると、太郎の頭に悲鳴や怒号などの声や逃げ惑う人達の姿が入り込んできました。太郎は短い悲鳴を上げて後ろに飛び、尻もちをつきました。
「なんや、どうしたんや?」驚いたおじいさんは地面に座る太郎に声をかけました。
太郎はしばらく荒く呼吸をして黙っていましたが、少し落ち着いてくると絞り出すように声を発しました。「村が・・・村が襲われとった・・・」
「村?何を言うとるんや」そう言うと、おじいさんは神主の顔を見ました。
「わかりまへん。でも、もしかしたらさっき言うた話の事かもしれまへん。150年前に殺された女の記憶が、その桃の木に流れてるんかもしれまへん」
神主の言葉を聞いたおじいさんは桃の木の元へ行き手を当ててみました。しかし、おじいさんは何も感じませんでした。「あかん。何もあらへん」
太郎は立ち上がり桃の木の傍まで来ると、恐る恐るもう1度手を当てました。すると太郎の頭の中に再び映像が流れてきました。今度は離れまいと、太郎はグッと全身に力を込めて立ちました。
叫び声をあげて走る人達。燃えて赤く染まる家々。そんな中、景色は後ろに流れていき、荒い息づかいが聞こえる。この記憶の人物は走っているようだ。少し走ると、木の近くに仰向けに倒れている男性を見つけ、そちらに走り寄って行きました。
「お前さん!」女の声がそう言うと、倒れている男の横に膝をつきました。男はなんとか呼吸をしていましたが、全身に血が付いていてかなり衰弱しています。
「は、早く逃げろ・・・」男はかすれた声で言います。
「嫌や・・・。お前さん置いて逃げられへん」涙声で女は返しました。
「あほう・・・。その子を守らんか」男は血で染まった手で女のお腹に触れ、女は両手でその手を包み込みました。「その子と埋めた刀を頼むぞ、まつ・・・」
「あかん!死んだらあかん!」まつは叫びました。
「ワシの最後のひと振りを・・・」男の手は地面に落ちました。
少しの間まつは何も言わずその場に居ましたが、地面に落ちている手を取り、両手を男のお腹の上に合わせて置こうとした時、まつは男の懐に何かが入っている事に気付き取り出しました。出てきた物はゴツゴツとした硬い物で、まつはそれを自分の懐に入れると立ち上がり、そして走りました。何度も転びそうになりながらも走り、神社までやってきました。まつは立ち止まり辺りを見回しました。そこには何人もの人が逃げ込んでいて、座り込んだり震えていたりしました。社の前の階段に少し座れそうな場所があり、息が切れているまつがそこに向けて歩き出そうとした瞬間、大きな影がまつを覆いました。驚いたまつが振り返ると、そこにはこの世の者とは思えない巨体な生物が立っていました。体長は2mを超え、頭にはツノ、口には大きな牙もある赤い体の化け物でした。
そこで太郎は気を失い倒れました。おじいさんが駆け寄り太郎の顔を覗き込むと、太郎は寝息を立てて眠っていました。
「眠っとるだけですわ」ホッとしたおじいさんは、神主に向けて言いました。
「ワシが背負いますんで、家まで戻りましょか」神主は太郎を背中に乗せると、おじいさんと一緒に家に向かって歩き出しました。
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