アフロ神の休日

なおちか

文字の大きさ
7 / 27

雨宿りする2人

しおりを挟む

カッパが走り、その後ろを宇宙人がついて来ている。
カッパが近道だからと選んだ道は、道ではなく草が生い茂ったルートだった。
獣が通った形跡すらなく、宇宙人は本当にカッパを信じていいのか迷い、少し心配になっていた。その時―

「ここだよ!」カッパは速度を緩めて前方を指さした。

そこには小屋があった。もう何年も誰も住んでいないような雰囲気で、ところどころに修復したような跡がある。
カッパが扉に手をかけてスライドさせると、ギギギッと軋むような嫌な音がした。カッパが中に入っていく。それを確認すると宇宙人も中に入った。
宇宙人が小屋の中を見渡す。くもった窓から外の光は入っては来るが薄暗い。

少しすると、小屋の屋根にポツポツと雨音が聞こえてきた。

「お、降ってきたな」天井を見上げながらカッパは言う。

「セーフ!危なかったー」

「僕はこれくらいの雨が丁度気持ちいいんだけどね」と言いながらカッパは、入ってきた扉を少しだけ隙間を残して閉めた。

宇宙人は奥の方に木の椅子を2脚見つけたので、窓際の少し明るい所へ持ってきた。

「ありがとう」それを見たカッパはそう言って座り、宇宙人も腰かけた。

少しの間黙って雨音を聞いていた2人だったが、宇宙人が話しかけた。

「カッパって、基本的に水の中にいると思ってたけど、違うんだな」

「うん。バランスかな」

「バランス」宇宙人はどういう意味かわからない顔で繰り返す。

「そう。その時の気分とかそういうの。ずっと陸とか、ずっと水の中とか、そういう事は無いんだよ」

「へぇ。じゃあ、もう一つ質問。食べるのはキュウリばっかりなの?」

「いや、これもバランスかな。個性もあるし。僕はどっちかというとトマトの方が好きだし」

「トマト好きのカッパなんて始めて聞いた・・・。あ、質問もう1つ」

「まだあるの。多いな」

「ラストだから。やっぱりカッパって、皿が乾くと死ぬの?」

「ううん。死なないよ」

「え、死なないの?」

「うん」

「そうなんだ。何もなし?」

「いや、おかっぱになる」

宇宙人は何も言わずに窓の外に視線を移した。心なしか、雨が少し強くなった気がした。

宇宙人は、立ち上がって部屋の中を少し歩いた。部屋の真ん中の少し奥に木のテーブルが置かれている。その上にはいくつかの木材が置かれているだけだった。棚もいくつかあるが、中にある物はどれもほこりをかぶっていた。
壁には農作業用のクワや、大きなノコギリなどが立てかけられているが、どれも錆びている。

「そういや、なんか変なニオイがするな。この建物」宇宙人が言う。

「カビかな?暑さとか寒さをしのぎたい時によく来るんだけど、もう何年も人は見てないから」

「地球人って、住まないのに家を建てるんだな」

「住んでた人が亡くなったとか、都会に引っ越したとか、そういう事だとは思うけどね」

「勿体ないなぁ。うちの星にこんな大きな家があったら喜んで住むけどなぁ」

「誰も来ないような場所にある家は買わないし住まないんだよ。地球人は」

「あ、仙人ってやつかも」宇宙人はカッパの方を見る。

「仙人?」カッパも視線を合わせる。

「そう。地球大百科で見たよ。山にこもって修行している老人が仙人だって」

「そんなのいるんだ。でも、この辺りで老人なんて見た事ないけど」

「そっかー。1人でいる事を望むらしいから丁度いいと思ったんだけど」

2人が話をしていると、突然コンコンコンコンと、扉を叩く音がした。

「すみませーん」

外から人の声がした。2人は慌てて部屋の奥の棚の陰に隠れた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

【完結短編】ある公爵令嬢の結婚前日

のま
ファンタジー
クラリスはもうすぐ結婚式を控えた公爵令嬢。 ある日から人生が変わっていったことを思い出しながら自宅での最後のお茶会を楽しむ。

処理中です...