アフロ神の休日

なおちか

文字の大きさ
8 / 27

茜とカッパと宇宙人の遭遇

しおりを挟む
カッパと宇宙人が、棚の陰に隠れ息をひそめている。

「誰かいますかー?」という声と同時に扉をノックする音。少し間があった後、「すみませーん。ちょっと雨宿りさせてください。失礼しまーす」と声が聞こえ、ギギギと音が鳴り扉が少し開いた。

ゆっくりと部屋の中を伺いながら入ってきたのは茜だった。

「もう、誰も住んでないのかな」かび臭くホコリっぽい部屋を見て茜は言う。

「人来たじゃん!来ないんじゃんかったの?」宇宙人が小声で言う。

「おかしいな・・・。あ、仙人じゃない?」

「いやいやいや。声も見た目も老人ではないでしょ。良く見な」

2人は部屋を歩く茜に注目していた。茜は部屋を少しだけ見た後。窓際の椅子を見つけそこに向かって歩いた。その時、外の光が茜の顔を明るく照らした。

「かわいい・・・」2人同時に呟くと、互いに顔を見合わせた。

「お前、かわいいって、何言ってんの?さっきの俺の話聞いてた?」宇宙人が少し語気を強める。

「いや、だって僕ももうカッパとして1人ぼっちだし、お嫁さんが欲しいのは僕も同じなんだよ」カッパも負けない。

「いやいや、お前カッパだよ?緑だよ?女の子には絶対『気持ち悪ーい』って言われるんだよ?」

「そんなのわかんないじゃん!目に優しい色の人が好きな子かもしれないじゃん!」

「無いね!てか、こんな禿げた緑野郎がモテるわけないから!」

ヒートアップしている2人は、声のボリュームも知らないうちに少し上がっていた。雨音で何を言ってるかは聞こえないが、うっすら声が聞こえている茜は、その声がする方へゆっくりと近付いて行った。
薄暗いが、棚の横に人がいるのを発見した。

「あのー・・・」1メートル程の距離まで来た茜は声をかけた。

「え?」2人は茜の方を見る。

「雨宿りですか?」

「え、うーんと、そう。昆虫採集に来てて。な?」手前にいた宇宙人が棚の陰から出てきながらカッパに同意を求める。

「あ、そう。昆虫採集」カッパも出てきながら言った。

明らかに人間ではない生き物が言葉を喋りながら現れたのを見て茜は驚き、声を上げた。

「きゃあ!何この禿げた緑の生き物!?」

「ナイスリアクション!」宇宙人はガッツポーズ。

「うぉい!なんでこの短時間で2回も禿げた緑って言われなきゃいけないんだよ!」グイグイくるカッパ。

「気持ち悪い・・・!」そんなカッパを見て茜は少し恐怖を感じたが、頭の皿やクチバシなどを見て、目の前の生き物をなんとなく理解した。「もしかして、カッパ・・・ですか?」

「そうです。私がカッパです!」両手を広げてカッパはポーズを決めた。

「ねぇ、君さ、こんなカッパ放っておいて、俺とお話ししようよ」カッパと茜の間に入り宇宙人は良い声で言った。

「おい、待てよ宇宙人!」カッパは後ろから宇宙人の肩を掴んだ。

「え、宇宙人!?」茜はさらに驚く。

「まぁ、地球人では・・・ないです・・・」少し俯き加減で宇宙人は言った。

「本物じゃない・・・ですよね?」茜は2人を交互に見ながら聞いた。

「どういうこと?」と宇宙人。

「その、中身は人間ですよね?」

「人間・・・それは地球人てこと?」宇宙人は質問を返す。

茜は素早く2回頷いた。

「いや、地球人じゃないよ。彼は本物のカッパだし」

「でも、カッパって想像上の生き物なんじゃ・・・」

「もし、僕達が偽物で変装しているのなら、こんな誰も来ないような所じゃなくて、もっと目立つところに行くはずでしょ?」カッパは宇宙人の横に並んだ。

「それはそうですけど・・・」

「たまに人に見つかる事があって、その時は変装してますとか、撮影ですとか色々誤魔化してるけど、君には・・・なんか嘘つきたくないんだよね・・・」カッパは何もない空間を見つめながら言った。


しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

【完結短編】ある公爵令嬢の結婚前日

のま
ファンタジー
クラリスはもうすぐ結婚式を控えた公爵令嬢。 ある日から人生が変わっていったことを思い出しながら自宅での最後のお茶会を楽しむ。

処理中です...