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第4話 ~素質は偽るのが吉。
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神殿長以下神官の皆さんに、精霊の申し子? 認定された男爵家長男のミュゼです。十二属性を宿すことは歴史上初めてのことであり、その名を刻むことが可能だとか。歴史に名を刻むとかって俺は嫌ですよ、恥ずか死んでしまうのと同時に厄介事の気配が。目立ちたくもないし、…というか奇人で通っているみたいだからこれ以上は無理です。
俺の表情で察してくれた神殿長が、
「ご安心下さいミュゼ様、このことは神殿と精霊の盟約により口外致しませんよ。望まぬことを強いるのは、私達の本懐ではありません。」
と力強く、そして優しく言ってくれた。…神殿長、貴方とても良い人。続けて…、
「多くの属性を宿す身として、慎ましくあろうとするミュゼ様はとても好ましく思います。ミュゼ様以外の方々、貴族や庶民問わずに驕る今世において、精霊の申し子がミュゼ様で良かったと私達一堂、心より安堵致しました。」
…神殿長の言葉を聞く限り、殆んどの人は自慢したがるの?
詳しく話を聞いてみれば、貴族だけではなく庶民までもが腐っている模様。無属性…世間的に無能である者は、貴族であれば嘲笑の対象となってしまう。男子であれば出世は絶望的であり、家の当主となることはほぼ不可能。女子であれば婚約することは出来ず、家の中では存在しない者とされる。…最悪、家から追放されて庶民となる場合があるとか。そして庶民はというと、多属性であれば貴族の養子として迎え入れられ、無能であれば捨てられるか殺されるかが普通らしい。
属性があれば良し、多属性であればなおのこと良し、無能は存在する価値も無し。それが今世の風潮であると教えられた時、俺は開いた口が塞がらなかった。何ということを…! 自慢云々の問題ではない、属性の有る無しで人の人生が変わる今世。歪んでいる、…普通にそう思う。無能…無属性にだってきっと価値がある筈なのに、それを無価値として否定するなんて…。傲慢を通り越して何様だと言いたい、神にでもなったつもりなのか!
憤る俺を宥めつつ、神殿長は…、
「いつの時代からか記録にありませんが、そのような世に移り変わったことで精霊達は顕現し難くなりました。常に一種、多くて二、三種、稀に無属性の世となりまして、なおのこと差別が世の常となってしまったのです。」
悲しそうにそう言う。一呼吸置いて、
「精霊の人離れが進む世でミュゼ様が現れました、それはとても喜ばしいことであると思います。それと同時にこれ程精霊に愛されたお方が現れた、それに意味があるのなら私達神殿に所属する者達一堂、是が非でもミュゼ様のお力にならねばなりません。」
そう締め括った。俺という存在の意味か、…前世があるにしても現状では未知。神殿長達にも分からないことみたいだが、万が一を考えて力を貸してくれるらしい。何だかよく分からないが、ありがたいことです。
話を聞く限りだと、神殿にいる人達はみんな良い人達のようだ。精霊との盟約もあるようだが常に精霊のことを考えており、力を貸してくれる精霊達に感謝を捧げているとか。いつの世からか…人々は精霊への感謝を忘れ、共にあろうと考えるのではなくいて当然、人の為に存在するモノであると考えるようになったらしい。その傲慢さに精霊達は少なからず嫌気を感じ、神殿との盟約がある以上…最低限の力しか貸していないのが現状とのこと。
故に今世で人々が使っている魔法は最低限のモノであり、その威力は全盛期と比べて天と地の差があるらしい。因みに神殿に所属する者達は、全盛期と比べればかなりの差があるものの、今世の人々と比べれば十分に強力な魔法が使える。言うなれば、精霊騎士団よりも強力な武力を持っているのが神殿らしい。武力を維持する理由は古くからの盟約の為、その内容は永き刻の中で失われたものとのことだが、最愛の隣人である精霊の為に今世まで守り続けてきたらしい。
しかしその武力が背景にある為か、精霊騎士団を有する国が…いや、傲慢なる一部の貴族達による神殿への強要があるとのこと。愚かにも、その武力を我らに捧げろと言ってきているらしい。そんなことが出来る筈もなく、軽く受け流しているようだが。…その愚かな強要を最低限の数に抑えているのがこの国の王と、その王に忠実なる数少ない貴族達らしい。全ての貴族が腐っているわけではないらしい、それに王もまともなお方のようで安心した。因みに我が父上と母上は良い方の貴族とのこと、故に俺の素質調べは神殿長がしてくれたのかな?
今回のことで神殿のことと精霊のこと、貴族と庶民について知らなかったことを知った。神殿長的には話半分でいいらしいが、わりと重要なこともあったような? 現状では、頭の片隅にそれとなく覚えておけばいいのかね? 素質調べを終えた今、追々と知るだろうとのことだが…不安である。
そしてここから重要なのだが、俺が十二属性を宿すことは伏せた方がいいらしい。確実に精霊騎士団と一部の貴族が突っ掛かってくるとさ、まぁ…そうなれば俺の父上と母上が黙っていないとは思うけど。しかしながらそんなことで父上と母上のお手を煩わせるのはなぁ、息子としては避けたいわけで。考えるまでもなく伏せて、偽りの素質で通すことにした。
父上からは火属性、母上からは風属性、二人の共通からは闇属性、三属性持ちであるとした。下手に一属性とするよりも、両親より素質を受け継いだとした方が説明しやすいとのことで。俺…養子だけど大丈夫かな? 血の繋がりはあるけれど。…まぁそれでも多属性故に絡まれると思うが、必要な経験ということで割りきることにした。…因みに相談役で神殿長が力を貸してくれるらしい、俺からも頼みたいと思っていたからありがたい。心強い味方が出来たな、うん。
そういうことで、俺の素質調べは十二属性という規格外な内容で終えた。自分の規格外な素質に不安を覚えつつ、これまでと同じように精霊と共にあるよう心懸けようと決意した。…俺の奇人的修行が精霊と共にあることと同義っていうのに驚いたけど、とりあえず色々と知れて勉強になったと思う。
自領へ帰る途中の旅路で、オススメのお菓子屋へと寄れなかったことを嘆いたのは語らなくてもいいことだろう。
俺の表情で察してくれた神殿長が、
「ご安心下さいミュゼ様、このことは神殿と精霊の盟約により口外致しませんよ。望まぬことを強いるのは、私達の本懐ではありません。」
と力強く、そして優しく言ってくれた。…神殿長、貴方とても良い人。続けて…、
「多くの属性を宿す身として、慎ましくあろうとするミュゼ様はとても好ましく思います。ミュゼ様以外の方々、貴族や庶民問わずに驕る今世において、精霊の申し子がミュゼ様で良かったと私達一堂、心より安堵致しました。」
…神殿長の言葉を聞く限り、殆んどの人は自慢したがるの?
詳しく話を聞いてみれば、貴族だけではなく庶民までもが腐っている模様。無属性…世間的に無能である者は、貴族であれば嘲笑の対象となってしまう。男子であれば出世は絶望的であり、家の当主となることはほぼ不可能。女子であれば婚約することは出来ず、家の中では存在しない者とされる。…最悪、家から追放されて庶民となる場合があるとか。そして庶民はというと、多属性であれば貴族の養子として迎え入れられ、無能であれば捨てられるか殺されるかが普通らしい。
属性があれば良し、多属性であればなおのこと良し、無能は存在する価値も無し。それが今世の風潮であると教えられた時、俺は開いた口が塞がらなかった。何ということを…! 自慢云々の問題ではない、属性の有る無しで人の人生が変わる今世。歪んでいる、…普通にそう思う。無能…無属性にだってきっと価値がある筈なのに、それを無価値として否定するなんて…。傲慢を通り越して何様だと言いたい、神にでもなったつもりなのか!
憤る俺を宥めつつ、神殿長は…、
「いつの時代からか記録にありませんが、そのような世に移り変わったことで精霊達は顕現し難くなりました。常に一種、多くて二、三種、稀に無属性の世となりまして、なおのこと差別が世の常となってしまったのです。」
悲しそうにそう言う。一呼吸置いて、
「精霊の人離れが進む世でミュゼ様が現れました、それはとても喜ばしいことであると思います。それと同時にこれ程精霊に愛されたお方が現れた、それに意味があるのなら私達神殿に所属する者達一堂、是が非でもミュゼ様のお力にならねばなりません。」
そう締め括った。俺という存在の意味か、…前世があるにしても現状では未知。神殿長達にも分からないことみたいだが、万が一を考えて力を貸してくれるらしい。何だかよく分からないが、ありがたいことです。
話を聞く限りだと、神殿にいる人達はみんな良い人達のようだ。精霊との盟約もあるようだが常に精霊のことを考えており、力を貸してくれる精霊達に感謝を捧げているとか。いつの世からか…人々は精霊への感謝を忘れ、共にあろうと考えるのではなくいて当然、人の為に存在するモノであると考えるようになったらしい。その傲慢さに精霊達は少なからず嫌気を感じ、神殿との盟約がある以上…最低限の力しか貸していないのが現状とのこと。
故に今世で人々が使っている魔法は最低限のモノであり、その威力は全盛期と比べて天と地の差があるらしい。因みに神殿に所属する者達は、全盛期と比べればかなりの差があるものの、今世の人々と比べれば十分に強力な魔法が使える。言うなれば、精霊騎士団よりも強力な武力を持っているのが神殿らしい。武力を維持する理由は古くからの盟約の為、その内容は永き刻の中で失われたものとのことだが、最愛の隣人である精霊の為に今世まで守り続けてきたらしい。
しかしその武力が背景にある為か、精霊騎士団を有する国が…いや、傲慢なる一部の貴族達による神殿への強要があるとのこと。愚かにも、その武力を我らに捧げろと言ってきているらしい。そんなことが出来る筈もなく、軽く受け流しているようだが。…その愚かな強要を最低限の数に抑えているのがこの国の王と、その王に忠実なる数少ない貴族達らしい。全ての貴族が腐っているわけではないらしい、それに王もまともなお方のようで安心した。因みに我が父上と母上は良い方の貴族とのこと、故に俺の素質調べは神殿長がしてくれたのかな?
今回のことで神殿のことと精霊のこと、貴族と庶民について知らなかったことを知った。神殿長的には話半分でいいらしいが、わりと重要なこともあったような? 現状では、頭の片隅にそれとなく覚えておけばいいのかね? 素質調べを終えた今、追々と知るだろうとのことだが…不安である。
そしてここから重要なのだが、俺が十二属性を宿すことは伏せた方がいいらしい。確実に精霊騎士団と一部の貴族が突っ掛かってくるとさ、まぁ…そうなれば俺の父上と母上が黙っていないとは思うけど。しかしながらそんなことで父上と母上のお手を煩わせるのはなぁ、息子としては避けたいわけで。考えるまでもなく伏せて、偽りの素質で通すことにした。
父上からは火属性、母上からは風属性、二人の共通からは闇属性、三属性持ちであるとした。下手に一属性とするよりも、両親より素質を受け継いだとした方が説明しやすいとのことで。俺…養子だけど大丈夫かな? 血の繋がりはあるけれど。…まぁそれでも多属性故に絡まれると思うが、必要な経験ということで割りきることにした。…因みに相談役で神殿長が力を貸してくれるらしい、俺からも頼みたいと思っていたからありがたい。心強い味方が出来たな、うん。
そういうことで、俺の素質調べは十二属性という規格外な内容で終えた。自分の規格外な素質に不安を覚えつつ、これまでと同じように精霊と共にあるよう心懸けようと決意した。…俺の奇人的修行が精霊と共にあることと同義っていうのに驚いたけど、とりあえず色々と知れて勉強になったと思う。
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