この世界が乙女ゲームの舞台だとは知らない俺の物語

ユキさん

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第16話 ~精霊のこと。

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悪魔に関して考えるのは止めよう、…ってことになった。謎が多すぎる為に考えるだけ無駄、遭遇した時に対処する。最強と言われる悪魔相手にそれでいいのかと使用人達が言ってきたのだが、…それ以外にやりようがないのは事実。ボッチ・ヤーバンの物語にも詳しくは書かれていないし、彼自身もわりと行き当たりばったりで討伐していたし。



それに新しく入手したスキルである《侵食》《補食》《吸収》《破邪》の四つ、特に《破邪》があるから何とかなると思う。色々と検証してみないことには何とも言えないが、まぁ何とかなるだろう。楽観的ではあるけど、…俺の中の精霊達が『任せろ!』って言っているような気がするんよ。だから何も分からないのが現状なら、精霊を信じるってーのが一番だと思う。



そういうわけで精霊だ。魔眼のスキルである《聖魔の瞳》により精霊が見えるようになった、しかも精霊の姿が個々で違う。…これ如何に? ってなことで、精霊の姿を父上達に教えてみれば大喜び。特に父上と母上が喜んでいたよ、まぁ…竜と妖精だからね。どちらも伝説級…幻の存在に等しいもんだからな、そりゃあ誰だって喜ぶよ。













…で精霊の姿を木の板に描いとります。口で説明するだけでは俺的に説明しきれない、故にその姿を絵にしているのだ。スキルはないけど絵を描くのは得意だからね、こんなのは余裕ですよ余裕。ぶっちゃけ美術系のスキルをもう少しで入手出来るんじゃないかな?



それぞれの精霊を描いてプレゼントをすれば喜色満面、…悪魔の件で不安定だった皆の心が安定してよかった。むしろ上向きじゃね? 良い仕事をしたじゃないか俺。自己満足していると父上が、



「相変わらず良い腕をしているなミュゼよ。…にしてもだ、何故に俺の精霊は竜の姿なのだろうか? まぁ…嬉しいことなのだが。」



そんなことを言ってきた。竜という雄々しい精霊にご満悦ではあるが、その姿に疑問を持ったらしい。言われてみれば…ってことで、皆も自身に力を貸してくれている精霊の姿を不思議そうに見ている。



確かにそうかもしれない、今のところ精霊の姿は千差万別。残念なのは俺の精霊が姿を見せないこと、父上達の精霊はこの場にいるのにだ。俺の精霊はどのような姿をしているのか? それを見れば少しは姿が違う謎が分かるかもしれないのに。何せ俺に力を貸してくれているのだからな、何かしら繋がっていると思うんだよね。故に分かると思うのだ、…だから姿を見せてはくれまいか?



……………と言っても姿を見せてはくれない。俺の内から聞こえてくる声? 気持ち? どちらでもいいが、『姿を見せたら畏怖されてしまう』とのこと。姿を見せたら畏怖? …この場合、父上達は魔眼のスキルを持っていないから見えない。見ることが出来るのは俺だけ、いや…精霊達も同種だから見ることが出来る。…ということは精霊に向けての言葉? ……そこから考えるに俺の精霊は凄い? 少なくとも畏怖されるぐらいだからな。…悪魔を討伐する程だもんな、光と闇は別格としても他の属性もこの中では断トツってことになるのか? …この件もその内に分かるだろう。













…で精霊の姿のことなんだが、何でも契約者によるとか。…契約者? 初めて聞く言葉が出てきたぞ? 父上達に聞いてもそのようなことは聞いたことがないとのこと。だけど精霊達がそう言ってるからなぁ~…、なんてことを小さく呟けば母上が目敏く聞きつけ、



「ミュゼちゃん? …さっきの呟きは本当なの? 精霊の声が聞こえるの?」



と聞いてきたので、



「え~と…、言っているというか心に響いてくると言うんでしょうか? …とにかく声のようなモノが聞こえるんです。」



と言えば、聞いてきた母上は勿論のこと父上達も驚いて目を剥いていた。



精霊が言うには、人が母体から生まれた時から精霊が傍にいるらしい。精霊といっても卵の状態で人の成長に合わせて育ち、それぞれの属性に分かれるとのこと。最初は無属性であり、成長して属性を持つという。…ということはだ、無能と呼ばれる人達もやはり属性持ち。しかも成長しても属性に染まらない稀有な存在、…精霊曰く万能属性らしい。自らの魔力で属性魔法が使えない代わりに、何かしらの媒介…魔導具を使わせたら全属性使用可能だとか。…それを聞いた俺は驚きのあまり固まった、父上達にも教えたらやはり固まった。…ヤバいじゃん無属性、いやさ…万能属性。



無能の真実に驚愕しつつ話を進める。人と共に成長することで属性を宿す精霊、その過程で精霊の姿が変わるらしい。最初はただの無色透明な光る球体、そこから属性を宿してそれぞれの色へ。そして…素質調べを経て精霊達は姿を変える、…しかしここで条件がある。精霊が姿を変える条件、それは人と精霊の契約である。



契約と言ってもこちらからどうこう出来るわけではなく、共に成長する段階でどれ程精霊に気に入られるか否かで決まる。気に入られているのであれば、素質調べにて契約が成立して精霊は姿を変える。人と精霊が契約をすることで結び付きが強化され、契約者の行動や性格が精霊の姿に少なからず影響するらしいよ。



素質調べで気に入られなかった場合、盟約に従いただ単純に力を貸してくれるだけ。契約も何もなく精霊も姿を変えない、それ即ち精霊は幼体のままで成体にならないらしい。…素質調べん時に浮いていた色とりどりの球体は幼体、契約して姿を変えることで成体となる。…初耳ですな、勿論父上達にとっても初耳とのこと。



それ故に、今世で存在している精霊は弱き存在が多いらしい。…まぁ気に入らないだろうね、今世の驕り高ぶる人々なんかをさ。その弊害で精霊達の多くは弱き存在、精霊達も被害を受けているみたい。そんな中でこのロゼッタ領は凄い、俺達を含めての領民殆んどが成体なんだって。…ウチの領民達は人が好い、そしてロゼッタ領は自然溢れる良い土地。精霊達にとっては天国のような場所、それがロゼッタ領…とのこと。



何ていうか色々と考えさせられるようなことが多いな、…殆んどの精霊が幼体とかってマジかよ。しかも無能ではなく万能、そして…人と精霊の契約こそが本来あるべき姿。…盟約に胡座をかいてそれを忘れ驕り高ぶった今世の人々、…弱まる精霊達に悪魔の存在。これから先、この世界はどうなるのだろうか?













精霊からの話? から色々と知ることが出来た。ぶっちゃけ半端ない情報だと思うし、俺自身も精霊から情報をここまで得られるとは思わなかった。世間に隠すべき能力が増えた、…本当に俺という存在がヤバいッス。ロゼッタ家に関係する者達にも苦労を掛ける、…規格外ですまん。



驚愕すべきことが多くて忘れかけてしまったが、精霊の姿が違う理由だったな。大体のことは分かったけど、細かい所…だな。父上の精霊が黒炎纏う赤竜に成長した理由は、精霊に対しての尊敬と畏怖…、そして単純に強さから。最初は蜥蜴だったみたいだけど、父上が成長すると共に精霊自身も育った。最終的に、竜へ対する憧れが精霊の姿に影響を与えたようだ。他の精霊が下位とランク付けするならば、父上の精霊は中位精霊みたいだね。



母上の精霊も父上と同じ理由、蝶から妖精に成長した中位精霊。ネムやダリア、その他の使用人達は下位精霊。成体の精霊は更に成長するってことも知った、その成長に契約者である人も重要であることも。…言えることは、日々の鍛練を忘れちゃいけないってことだな! ……たぶん。



因みにだけど、俺の精霊は上位精霊らしいよ? 素質調べにて下位をすっ飛ばして中位、光と闇の精霊に限っては今回の件で上位となったらしい。幼体から一気に中位、下位にはならなかった。てっきり最初は下位で、修行によって中位に至ったんだと思ったよ。…十属性が中位精霊で二属性が上位精霊、俺自身もあれだけど精霊も規格外ですなー……。
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