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閑話 ~ある女の話 ー???sideー
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私の目の前に狂気の笑みを浮かべた男がいる。…コイツは確か、…面白半分で痴漢の冤罪を掛けて破滅させてやった奴じゃなかったかしら? …目の前が霞み、お腹の辺りが無駄に熱い中でぼんやりと思い出した。…熱くて痛い、…自分がこの男に刺されたと認識したのはその手。赤く染まったナイフを持っている、…私の血で染まったナイフを。
意識が遠退いていく中で、目の前の男のものであろう声が……、
「…お前、色んな場所でやらかしていたみたいだなぁ。知れば知る程にお前はクズであると声高らかに言えるぜ? 金の力で全てを自分のいいようにしやがってよぉ…、クソがぁっ!! …同じ穴の狢であるお前の家族も、その友人も、それに連なる関係者全ても! 皆…ぶっ殺してやるからな! お前に、その家族に、その友人に! …破滅させられた仲間はかなりいるからなぁっ! 今頃…滅多刺しになってるんじゃねぇか? …ざまぁねぇっ!! …マスゴミも何人か死んでるぜぇっ! …ふひゃひゃひゃひゃっ!!」
狂気を孕んだ大声でそう喚いている。……有象無象のゴミ虫がっ! …全てに秀でた選ばれし人間である私に、…家族に、…友人に!! 許せないという気持ちが込み上げるけど、……私にはもう。……だから私は、
「…じ、…地獄へ落ちろ。……薄汚いゴミクズが…!!」
血と共にそう吐き捨てた。そして……、
「……テメェが先に落ちやがれっ!!」
その言葉と共に衝撃が。何度も何度も何度も何度も、私の身体にナニカが突き刺さっていく。……私は、…私の意識は闇の中へと溶けていき…………。
────────────────────
………闇の中で声を聞いた。
『…汝、…生を望むかや?』
魂が凍りつくような冷たい声、常時であれば恐怖で声も出せずに震えていただろう。だけど今の私は……、
「…生きたい、……私はまだ欲望を満たしていない。」
反射的にそう答えていた。私はたぶん…ゴミクズに殺された、私は既に死んでいる。…だからどんなに恐ろしい存在が相手であっても、生を望むかと問われればそう答えるのが普通だろう。
暫くの静寂の後に……、
『…汝が望みを叶えよう。…汝が魂の片隅にある一つの記憶、『エレメンタルナイツ』なる世界と酷似せし世界へ汝が魂を送る。……現世にて夢に等しき幻想世界、……然れど現実となる故に忘れることなかれ。』
再びあの声が聞こえてきた。…『エレメンタルナイツ』ってあのゲームの? …それなら知っているわ、気まぐれに…暇潰しになればと話題のゲームに手を出した。そう思ってやってみれば意外に面白く、…ハマってしまい何度もプレイしたあの『エレメンタルナイツ』でいいのよね?
……新たな生を貰えるなら貰いたい、…どのような存在となるかは分からないけれど。…それによっては生き方が変わる、出来るなら私をヒロインに………。
……死ぬ前のように好き放題生きたい、………好きなように生きて欲望を満たしたい。
…………そう願いながら、私の意識は闇へと溶けていき………………。
────────────────────
誰かに呼ばれた気がして目を開けてみると、こちらの様子を窺う男女がいた。なかなかに整った顔をしてはいるが田舎臭い、服装も貧乏臭い、何よりも小汚い。…何なのよ、……もう!!
「モニカ! ソーニャが目を開けたぞ!」
「ええそうねブライ。私達の赤ちゃん、…本当に可愛いわ。」
……………この二人、……私の親なの? ………マジで? ……こんな貧乏臭いのが親? ……………お先真っ暗じゃない!? 何で貴族の子として生まれなかったのよ! 私は何不自由なく生活すべき選ばれた存在なのよ! 生まれ変わったことが何よりの証拠、…そんな私がこんな貧乏人の家に生まれるなんて!!
貧乏人の家に生まれた私は自分の境遇に絶望した。何もかもが貧乏臭くて小汚い、毎日の生活の為に働きまくるこの人生に。恵まれた生活を夢見る暇もない、子供ですら働かなくては生きていけないなんて!
…貧乏人の家に生まれて三年、…この私までもが働かせられている。きらびやかな生活を送ってきた私が、こんな…畑の手入れをしなくてはいけないなんて! …私は不満顔で畑の草を抜き続ける、…不満ではあるけれど動いてしまうこの身体。何てことなのかしら…、貧乏が身体に染み付いちゃっているわ!
心は嫌がっても身体は勝手に動く、…生きる為の執念ってものは凄いのね。…更に年月が過ぎて五歳となった私、今日も死んだ目で畑仕事をしていることだろう。毎日毎日生きる為に泥臭い仕事ばかりをしている、逃げようにも私は五歳の子供。…逃げれば死は確実、だってここは…都会から遠く離れた超田舎なのだから。狼や熊、運が悪ければ魔物に出くわして終わり。ぶっちゃけ私は死にたくないからね、…我慢しなくちゃいけないのよ。
貧乏生活で苦労している私の耳にある情報が。…本来であれば五歳となった子供には、素質調べというモノを教会で行うことが普通であるらしいと。しかしこの村には教会がない、…なくなったというのが正しいが。…高齢の神父が死んじゃって教会が閉じたんだって、…かなり昔に。…この村にあるのは廃教会、…田舎過ぎて代わりの神父が来ない。だからこの村の住人は自身の素質を知らないってわけ、…何という田舎っぷり! ダメダメじゃない!!
………素質調べのことを聞いてから数日、モヤモヤしていた私は唐突に思い出した。…超田舎の村出身、そして名前はソーニャ。…私ってば『エレメンタルナイツⅡ』のヒロインじゃない!? …とね、…本当にビックリよ。
必死になって思い出してみたんだけど、ソーニャってヒロインは一〇歳で貴族の養子に入って学園に入る子。貴族世界を知らない田舎っぺな所が彼女の魅力であり、そのヒロインにヒーロー達が絡んでいって恋が芽生えるってヤツ。Ⅰのヒロインとは違っていきなり貴族になって学園へ、超成り上がりストーリーなヒロイン。
………五年も忘れていたから記憶が曖昧だけど、…大体の流れはそんな感じだった筈。…一〇歳で貴族になるわけだけど、…何故に一〇歳なのだろうか? と考えてみれば、素質調べをする筈の教会が閉じているからだ。先程聞いたことじゃない、…というか五年もこの貧乏暮らしをしなくちゃならないの!?
そもそも一〇歳で貴族になるって、…どのような経緯を辿ってなるのかしら? ………思い出せないわ。…物凄く嫌な予感がするんだけど、…前世の死がうっすらと見え隠れしている。……胸糞悪いけど今は我慢の時、…貴族になる未来が待っているんだから歯を食いしばらないと!
…………だけど後五年か、………辛いわね。……楽する為に下僕を作らなくちゃいけないわ、…幸いにも私は可愛い。田舎のガキなんざチョチョイのチョイよ、…下僕にして使いまくってやるわ。…頑張らないとね、…きらびやかな生活を送る為に。
……絶対にこの生活から抜け出してやる、…どんなことをしてでも!!
意識が遠退いていく中で、目の前の男のものであろう声が……、
「…お前、色んな場所でやらかしていたみたいだなぁ。知れば知る程にお前はクズであると声高らかに言えるぜ? 金の力で全てを自分のいいようにしやがってよぉ…、クソがぁっ!! …同じ穴の狢であるお前の家族も、その友人も、それに連なる関係者全ても! 皆…ぶっ殺してやるからな! お前に、その家族に、その友人に! …破滅させられた仲間はかなりいるからなぁっ! 今頃…滅多刺しになってるんじゃねぇか? …ざまぁねぇっ!! …マスゴミも何人か死んでるぜぇっ! …ふひゃひゃひゃひゃっ!!」
狂気を孕んだ大声でそう喚いている。……有象無象のゴミ虫がっ! …全てに秀でた選ばれし人間である私に、…家族に、…友人に!! 許せないという気持ちが込み上げるけど、……私にはもう。……だから私は、
「…じ、…地獄へ落ちろ。……薄汚いゴミクズが…!!」
血と共にそう吐き捨てた。そして……、
「……テメェが先に落ちやがれっ!!」
その言葉と共に衝撃が。何度も何度も何度も何度も、私の身体にナニカが突き刺さっていく。……私は、…私の意識は闇の中へと溶けていき…………。
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………闇の中で声を聞いた。
『…汝、…生を望むかや?』
魂が凍りつくような冷たい声、常時であれば恐怖で声も出せずに震えていただろう。だけど今の私は……、
「…生きたい、……私はまだ欲望を満たしていない。」
反射的にそう答えていた。私はたぶん…ゴミクズに殺された、私は既に死んでいる。…だからどんなに恐ろしい存在が相手であっても、生を望むかと問われればそう答えるのが普通だろう。
暫くの静寂の後に……、
『…汝が望みを叶えよう。…汝が魂の片隅にある一つの記憶、『エレメンタルナイツ』なる世界と酷似せし世界へ汝が魂を送る。……現世にて夢に等しき幻想世界、……然れど現実となる故に忘れることなかれ。』
再びあの声が聞こえてきた。…『エレメンタルナイツ』ってあのゲームの? …それなら知っているわ、気まぐれに…暇潰しになればと話題のゲームに手を出した。そう思ってやってみれば意外に面白く、…ハマってしまい何度もプレイしたあの『エレメンタルナイツ』でいいのよね?
……新たな生を貰えるなら貰いたい、…どのような存在となるかは分からないけれど。…それによっては生き方が変わる、出来るなら私をヒロインに………。
……死ぬ前のように好き放題生きたい、………好きなように生きて欲望を満たしたい。
…………そう願いながら、私の意識は闇へと溶けていき………………。
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誰かに呼ばれた気がして目を開けてみると、こちらの様子を窺う男女がいた。なかなかに整った顔をしてはいるが田舎臭い、服装も貧乏臭い、何よりも小汚い。…何なのよ、……もう!!
「モニカ! ソーニャが目を開けたぞ!」
「ええそうねブライ。私達の赤ちゃん、…本当に可愛いわ。」
……………この二人、……私の親なの? ………マジで? ……こんな貧乏臭いのが親? ……………お先真っ暗じゃない!? 何で貴族の子として生まれなかったのよ! 私は何不自由なく生活すべき選ばれた存在なのよ! 生まれ変わったことが何よりの証拠、…そんな私がこんな貧乏人の家に生まれるなんて!!
貧乏人の家に生まれた私は自分の境遇に絶望した。何もかもが貧乏臭くて小汚い、毎日の生活の為に働きまくるこの人生に。恵まれた生活を夢見る暇もない、子供ですら働かなくては生きていけないなんて!
…貧乏人の家に生まれて三年、…この私までもが働かせられている。きらびやかな生活を送ってきた私が、こんな…畑の手入れをしなくてはいけないなんて! …私は不満顔で畑の草を抜き続ける、…不満ではあるけれど動いてしまうこの身体。何てことなのかしら…、貧乏が身体に染み付いちゃっているわ!
心は嫌がっても身体は勝手に動く、…生きる為の執念ってものは凄いのね。…更に年月が過ぎて五歳となった私、今日も死んだ目で畑仕事をしていることだろう。毎日毎日生きる為に泥臭い仕事ばかりをしている、逃げようにも私は五歳の子供。…逃げれば死は確実、だってここは…都会から遠く離れた超田舎なのだから。狼や熊、運が悪ければ魔物に出くわして終わり。ぶっちゃけ私は死にたくないからね、…我慢しなくちゃいけないのよ。
貧乏生活で苦労している私の耳にある情報が。…本来であれば五歳となった子供には、素質調べというモノを教会で行うことが普通であるらしいと。しかしこの村には教会がない、…なくなったというのが正しいが。…高齢の神父が死んじゃって教会が閉じたんだって、…かなり昔に。…この村にあるのは廃教会、…田舎過ぎて代わりの神父が来ない。だからこの村の住人は自身の素質を知らないってわけ、…何という田舎っぷり! ダメダメじゃない!!
………素質調べのことを聞いてから数日、モヤモヤしていた私は唐突に思い出した。…超田舎の村出身、そして名前はソーニャ。…私ってば『エレメンタルナイツⅡ』のヒロインじゃない!? …とね、…本当にビックリよ。
必死になって思い出してみたんだけど、ソーニャってヒロインは一〇歳で貴族の養子に入って学園に入る子。貴族世界を知らない田舎っぺな所が彼女の魅力であり、そのヒロインにヒーロー達が絡んでいって恋が芽生えるってヤツ。Ⅰのヒロインとは違っていきなり貴族になって学園へ、超成り上がりストーリーなヒロイン。
………五年も忘れていたから記憶が曖昧だけど、…大体の流れはそんな感じだった筈。…一〇歳で貴族になるわけだけど、…何故に一〇歳なのだろうか? と考えてみれば、素質調べをする筈の教会が閉じているからだ。先程聞いたことじゃない、…というか五年もこの貧乏暮らしをしなくちゃならないの!?
そもそも一〇歳で貴族になるって、…どのような経緯を辿ってなるのかしら? ………思い出せないわ。…物凄く嫌な予感がするんだけど、…前世の死がうっすらと見え隠れしている。……胸糞悪いけど今は我慢の時、…貴族になる未来が待っているんだから歯を食いしばらないと!
…………だけど後五年か、………辛いわね。……楽する為に下僕を作らなくちゃいけないわ、…幸いにも私は可愛い。田舎のガキなんざチョチョイのチョイよ、…下僕にして使いまくってやるわ。…頑張らないとね、…きらびやかな生活を送る為に。
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