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1、目立ちすぎました

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「私(わたくし)ライアン・レオリオ・グリューエンは
グランツ辺境伯御息女である
ソフィア・エマ・グランツ嬢に誓う。
ソフィア・エマ・グランツ嬢を
ライアン・レオリオ・グリューエンの
祐逸無二の妻とし、いついかなる時も 
思いやりの気持ちを忘れません。
ふたりで力を合わせ、笑顔あふれる
明るい家庭を築きます。そして
どんなときも、日々の会話を大切にします。
支えてくださる皆様への感謝の気持ちを
忘れないように気をつけます。
お互いを想いやり愛妻家で子煩悩である
グランツ辺境伯のような仲睦まじい
家族を築きあげます。これらの誓いを胸に
夫婦として歩んでいくことを誓います。
ご列席の皆様を証人とし、これから先 
幸せなときも困難なときも私は
ソフィア・エマ・グランツ嬢だけを愛し
助け合いながら幸せな家庭を築くことを
ここに誓います。」
「……。」
「ソフィア・エマ・グランツ嬢、
初めてお会いしたときからあなただけを
愛してます。」
「……。」
ゾクっ。
……お、重いしセリフ長いよ。

      ***

約1年前、王都近くと辺境伯の領地に
スタンピートが起きた。
アイザックお父様率いる精鋭部隊半数ずつに
別れ2か所同時のスタンピートを
おさめた事により、国王から勲章と
褒美を授かってしまったのだった。
功労者が、悪人顔・強面のアイザックお父様と
なぜか悪役令嬢風の顔立ち(アイザックお父様似)
の私の名前まで入ってしまった。
領民の中でも"領主様譲りの強い魔法を使い
イバラのツルで魔物を絞め殺した。"
"イバラのツルで、魔物を滅多打ち"
イバラのツルのムチを使い高笑いしながら
魔物を屠(ほふ)っていたとかまで言われ
アイザックお父様に似てるだけの
悪役令嬢風の顔立ちである私は
この国の見知らぬ王子様のもとに
嫁がなくてはいけなくなっちゃったりした。
"なっちゃった"と口調だけでも
可愛くしたが、なんだか文面が変である。
アイザックお父様からしたら
お父様に似た私は可愛いらしいけれど
極悪人に見えた(国王様談)くらい
アイザックお父様は大反対し、学友だった
国王様に抗議したが、無駄だったそうだ。
第三王子がなぜかこの私を見初めた
らしいのだった。いつ、そしてなぜ?
お姉様たちの誰かと勘違いしてませんか?
5番目の娘ソフィアは私ですが、
やはり間違いはないみたいでした、はい。
第三王子?えっ?どちらでしょうか、やはり
私、第三王子様どころか王族の方々と
お会いした事ございませんわよ?
と、口調だけでも悪役貴族令嬢風の顔立ちである
私がこの国のイケメンらしい王子様と
どこでお会いしたのかしら?
思い出そうとしたけれど、この辺境から
出た事がない私は、王子様と出逢った
記憶がまったくといってなかった。
「ソフィア・エマ・グランツ嬢、
初めてお会いしたときからあなただけを
愛してます。」
結婚式で言われた言葉に、嬉しさより
ゾクっとしてしまった。
冒頭でも述べたように王家からの
婚約ではなく"婚姻"の申し出に、いくら強面で
悪役っぽい顔立ちのアイザックお父様は
国王と学友だったとしても断る事は
不可能だったらしい。
一応、婚約期間異例の3ヶ月は
建前上あったらしい。辺境伯の領地に
ずっといたから知らなかった。
そして婚姻の儀式の前日、アイザックお父様は
「3年我慢しなさい。3年間だ。
3年もだが……ううっぅぅぅ。」
両肩をアイザックお父様に捕まれた私たちは
逃げる事は叶わず、アイザックお父様に
似ている私の顔は引きつっていたかもしれない。
「私の可愛いソフィアよ、あの…あやつの
息子に身体を許すなとはいわないが
なるべく、いや…絶対に"夜の夫婦生活"は
断りなさい。必ずだ、いいな!!」

白い結婚?3年間子どもが出来なかったり
夜の?夫婦生活をしなかった場合
離縁する事が出来る、と教えてもらった私は
"3年くらい頑張れるわ!!"
離縁した後、領地でまたみんなの為
魔物狩り頑張るわ!!と意気込んでいた。

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「私の…私の可愛いソフィアが
ソフィアがぁぁぁ…あいつに
取られてしまったぁぁ。」
「もう、アイザックったら。3年経ったら
離縁の手続きするんでしょ。」
「もう、書類は準備してるが3年、3年も
毎日見てた可愛い娘の顔が見れないなんて
耐えられるわけない……。」
「……寂しいですわね。」
「私の美しいオリビアとの愛の結晶が
遠くに嫁いでしまった。」
アイザックは強面を更に凶悪にしながら
オリビアに抱きつき泣いていた。

「ソフィア、大丈夫かしら?」
「私がちゃんと夜の夫婦生活を避けるように
言ったし、第3王子のウワサもあり
毎夜夜会に出席してると聞くから、
夜は顔すら合わせないだろう。」
「いえ…そういう事ではなく、ソフィア
あなたの様になりたいと言って
淑女としての教育は一通りしましたが
夜の夫婦生活は後回しになっていんです。」
「私たちを見ているから、夜にしている事位
可愛いソフィアもわかるだろう。」
「そうだといいんですが……。」

オリビアの不安は的中する事になってしまった。
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