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1、総合病院のはず

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貫徹3日目。なんだかふらふらする。
さすがにキツイなぁ。
点滴でもして、休憩して…あとなんだろう。
かなり眠いが、買い置きの食事、
栄養ドリンク味のゼリー飲料食べて……。
あっ、ヤバイと思った時にはすでに、
目の前が真っ暗になっていた。

ここは曽祖父母?いや、もっと前らしいが
小さな診療所から始めた地で、
曽祖母は産婆さんだった。
今ではベッド数900床を超える総合病院。
夜間休日対応もしている病院で働いている。
仮眠室が俺の部屋状態になっている。
一応、病院の裏手に一軒家が曽祖父母の
持ち家で今は、曽祖父母も祖父母も
ほぼ海外暮らし。
俺は我が家には週1回は帰っている。
目的は洗濯物だ。
乾燥付きの全自動洗濯機で洗い、たまに
そのまま忘れるが、よく出来た弟が
きっちり畳んで病院に持ってきてくれる生活。
「入院した兄に着替えを持ってくる弟の気分。」
と笑えない冗談を言いながら、
差し入れまでしてくれるよく出来た弟だ。

そんな俺は医師の人数が足りないとの事で、
産婦人科に配属された。
出産の為のLabor(陣痛)Delivery(分娩)
Recovery(回復)を略しLDRの部屋は5室、
あとは、年に数回しか使わない水中出産、
和室などフリースタイルの産室があり、
産婦人科や不妊治療にかなり力を入れた、
野上総合病院だった。
立地条件はあまり良くないのに、産婦人科
目当てで全国から出産予約でいっぱいだった。
部屋も完全個室制で、家族も泊まれる
特別室もあり、ホテル並の対応だった。
出産は命がけ、一人一人の物語があり
そのスタートをお姫様のような場所で産もう。
って言うのが曽祖父母の理念だった。

大学医学部に18歳で現役合格し、
6年間学んだ後に医師免許を取得。 
そこから2年の前期研修を経て
他の病院で色々経験し、戻ってきたら
産婦人科に配属。
ここは戦場かと思うくらいの場所。
助産師はそこそこいるし、医師も俺を含め
3人いたから余裕だと思ったのが、
勤務に就き2週間ほど。
完全予約にも関わらず、絶妙なタイミングで
産室は満杯、ホテル並の病室もほぼ満杯。
外来の合間に、出産や緊急帝王切開、
他の医療機関からの緊急搬送など
この野上総合病院は地元では、
産婦人科と言われているほどだった。

29歳の野上麗夜(のがみ れいや)は起きた。
特別室なのか?木造の部屋?
こんな病室いつのまに作ったんだろう?
素朴な木の椅子とテーブル。簡易コンロ?
ベッド脇のミニテーブルに手紙があった。

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              麗夜へ
ヤッホー。そろそろ起きたくらいかな?
仕事漬けの毎日を送った罰として、
ちょっとしたプレゼントをやろう。
ちょうど依頼も来ていたし……。
ボチボチでいいから、のんびりして
ついでに仕事しながら、本当に
したい事やあたたかいもんを
見つけてこい。
見つけるまで、こちらには帰れないように
しようと思ったが、お母さんたちに
ドヤされるから、盆と年末年始は
帰れる様に設定した。
そちらもそれなりに大変だろうが、
身体には気をつけて、まあ…色々がんばれ!!
ちなみにお母さんと出会ったのそちらの……。
……やはり、まだ秘密だ。
地図も添付しとこう。
まっ、必要なくなると思うがな、念のため。
仕事内容の条件は1日8時間以内の勤務。
1時間でも大丈夫。
最低でも、完全週休2日制。
休みはとれ。週1勤務、1時間でもいいくらいだ。

それを破るとペナルティーが自動的に
課されるので絶対に気を付けろ。
ペナルティーはお父さんが設定したわけじゃないぞ。
色々、折り合いがあるらしい。
それも詳しく話せないが、すまん。
ペナルティー、あれは、きつかったが……。
よかったような、やばかったような……クセになる。
アドバイスは、仕事終わりの10分前や
5分前にでもアラーム設定したほうがいい。
あのペナルティーはある意味、キツい。
私も、過労死気味だったから、
麗夜の曽祖父に派遣されペナルティーに
やられてしまった。
あまり詳しく話せないが、がんばれ。
盆と正月は帰れるし、必要なものや困りごとは
引き出しの中の携帯型のメールで
やりとりしよう。
1日1回しか使えないから、気を付けろ。
では、色々気を付けろよ。

          バ~イ麗夜の父

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意味が分からない。
2枚目には子どもの落書きのような地図があった。
これ、地図じゃないし道、書き忘れたのか?
気を取り直して、部屋を見回ると建物の
2階にいるようだったので、下に降りたら
驚きで動きが止まってしまった。
「な、なんだ?ここは?」
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